福山琴 写真提供:広島県

福山琴 フクヤマゴト

楽器唯一の伝統工芸品
華麗な装飾と優れた音色をもつ琴

Description / 特徴・産地

福山琴とは?

福山琴(ふくやまごと)は広島県福山市で作られている楽器の琴です。琴の名曲である「春の海」の舞台となった場所にほど近い福山では、国内の多くの琴が製造されています。
福山琴の特徴は、優れた音色をもつだけでなく、見た目の装飾の華麗さや木目の美しさでも日本随一であることです。桐(きり)の最高級の乾燥材料を使用し、熟練の琴職人によって丹念に作り上げられます。伝統工芸品の指定を受けているものの中でも、楽器類で指定を受けているのは福山琴のみです。
福山琴は甲の裏面に、精巧な装飾模様の彫りを施しています。代表的な彫りの技法は、高級品である「麻型彫り」などです。琴の装飾として重要な役割を果たすのが、蒔絵(まきえ)です。福山琴(ふくやまごと)では竜舌や磯の部分に蒔絵を使い、琴を華麗で繊細な美しさに仕上げます。

History / 歴史

福山琴(ふくやまごと)の歴史は、徳川家康の従妹にあたる水野勝成が、福山に城を築いた時代に遡ります。備後十万石の城下町であった福山では、歴代藩主の水野、松平、安倍家の奨励も後押しをして歌謡や音曲が盛んな土地でした。
江戸時代末期には、琴の名手である葛原勾当氏が備後、備中で活躍し、京都で伝授された箏曲がもたらされます。音色の良さと工芸品としての価値が認められ福山琴の需要が高まり、高級琴の代表としても知られるようになりました。
明治時代の初期には、本格的な製造が始められます。その後も琴の作業工程を改善するなどの工夫を重ね、全国トップの琴の産地としての地位を築きました。
1970年(昭和45年)頃には最盛期を迎え、約3万面の琴を生産していましたが、現在は約3千面の生産にとどまっています。生産数は減少したものの、全国シェアはトップクラスです。
産地では、完成度や品質を損なわずに扱いやすい軽量な琴を生産し、全国小中学校箏曲コンクールを主催するなど、琴の普及に取り組んできました。
6月6日の邦楽の日には、長年演奏会や練習で使用され琴の供養を福山市の鞆の浦で開催しています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.製材工程 福山琴の製作工程は、まず原木選び・原木の吟味という作業から始まります。主に選定されるのは、国産や北米産の桐の原木で、末口(すえくち)の直径が径400~600mmものです。湾曲気味の形が良いとされ、桐の丸太を曲がり具合や年輪、強度に影響する節の有無などをよく吟味します。原木を選び、材料に最適な製材方法を決定する一連の作業が「墨付け」です。墨付け作業は熟練の目を持った職人によって行われ、墨付けを行ったら鋸で製材していきます。幅を決めるために、まず行うのは両側を鋸で切り落とす「大割り」という作業です。その後、琴の形を大体おおまかに挽いていく、「甲挽き」「板挽き」を行います。
  2. 2.乾燥工程 製材した材料を、屋外の乾燥場で天日乾燥する「野ざらし」を行います。乾燥する期間は1年~3年で、数回の梅雨を過ごすことが必要です。天日で十分に乾燥させることで、寸法を安定させ、完成品の木材の「そり」や「くるい」を防ぎます。また長い間屋外に放置しておくことで、桐材に含まれる「灰汁(あく)」を取るのです。乾燥は重要な工程で、自然乾燥を経て、さらに人工乾燥も行われます。
  3. 3.甲造工程 刳り(くり)・彫り・板付け・焼き・磨きの順で作業が行われます。刳りとは、倣(なら)い機能を持った鉋盤(かんなばん)での荒削りと、取り付け部品の加工作業です。刳りが大体終わると、彫りに移ります。琴の甲の内部に彫刻をする作業です。彫りは、琴の等級に応じて簾目(すだれめ)・綾杉(あやすぎ)などの模様が施されます。模様彫りは、ノミを使って丁寧に彫る細かい作業です。次作業の板付けは、琴の共鳴層である裏板の加工と取り付けを行います。板付けまでの作業で木地の加工が完了です。続く「焼き」では、灼熱に焼いたコテを当てて、木地の表面を焼いていきます。焼き作業によって、福山琴特有の色彩や風合いに繋がるのです。甲作り最後の作業である磨きで、焼きで生じた炭化物を取り除き、光沢を出していきます。
  4. 4.装飾工程 琴の飾り付け作業とも呼ばれる工程です。琴は装飾部品の数が多く、複雑で繊細な加工技術が必要なため、琴づくりの工程の中で一番時間がかかります。主な装飾部品は、四分六(しぶろく)・竜角(りゅうかく)・柏葉(かしわば)・竜舌(りゅうぜつ)などです。他にも丸型(まるがた)・前脚(まえあし)・後脚(あとあし)・柱(じ)があります。美しい琴に仕上げるには、象嵌(ぞうがん)・蒔絵(まきえ)・寄せ木等の伝統的な装飾が必要です。
    竜舌の部分に施す華麗な蒔絵は、高蒔絵(たかまきえ)・平蒔絵・研ぎ出し蒔絵などの技巧を使います。「玉渕巻き」と呼ばれる柏葉の装飾は、福山琴の特徴です。

  5. 5.仕上げ工程 金具を取り付けた後、琴のレベル調整を行って前脚を着脱して調整します。琴の楽器としての完成度を確かめながら、伝統品としての厳しい仕上がり検査も行われ、福山琴が仕上がるのです。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

有限会社藤井琴製作所 フジイ

素材選びから、制作まで、長年の経験と努力で培った職人の匠の業で全てが手作りで行われます。世界で一つだけの琴をお楽しみいただけます。

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