岩槻人形

岩槻人形 イワツキニンギョウ

愛らしくも華やかで美しい姿
自然豊かな城下町で生まれた人形作りの文化

Description / 特徴・産地

岩槻人形とは?

岩槻人形(いわつきにんぎょう)は、埼玉県さいたま市岩槻区で作られている日本人形です。
岩槻人形の特徴は、頭と目がやや大きく、丸顔で愛らしい作りであること、華やかな彩色が使われていることです。また、人形の肌はなめらかで美しく、髪も人毛のような美しい仕上がりとなっています。
なめらかで美しい人形の肌は、膠と胡粉から作られ、髪に使われているのは生糸です。人毛によく似た柔らかなものを用い、髪付師によって丁寧に仕上げられます。
岩槻区の周辺では、もともとタンスや下駄など、桐を使った製品が多く作られていました。また、自然豊かな城下町であった岩槻区は、良質な水にも恵まれており、人形作りに適した環境であったと言えるでしょう。次第に人形の街として栄えていった岩槻区では、現在でもひな人形や五月人形、浮世人形など、様々な日本人形が作られています。

History / 歴史

岩槻人形の歴史は、江戸時代から始まりました。1634年(寛永11年)より始められた日光東照宮の造営に合わせ、多くの工匠たちが岩槻を訪れ、いつしか定住する者も出始めます。定住した中に人形作りを得意とする工匠がおり、また、岩槻が人形作りの環境に恵まれていたことから人形の町として栄えるようになりました。
現在でも行われている桐粉を使った「桐塑頭(とうそがしら)」という技法が生まれたのも、人形作りの環境に恵まれたおかげです。
岩槻が人形の町として栄えた背景には、京都より江戸に入ってきた雛遊(ひいなあそび)が関係しています。1626年(寛永3年)には、入内する徳川和子が土産物として京都へ持っていくほど、雛遊は江戸で栄えていました。雛市や雛売も増え、江戸名所図絵にもその賑わいが描かれるほどです。そして、次第に上巳の祓いと結びつけられるようになり、現在の雛祭りとなりました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.頭作り(かしらづくり) 人形の頭は、桐塑(とうそ)という粘土を型に詰め、乾燥させてベースを作ります。桐塑は、桐粉(きりこ)に正麩糊(しょうふのり)を混ぜたものです。木目込人形(きめこみにんぎょう)の胴体作りでも使われます。
    乾燥したら、次の工程です。衣装人形を作る場合は、まず「目入れ(めいれ)」を行います。衣装人形の場合、目は描かかないで、専用のパーツをはめ込みます。
    目入れが終わったら、顔を作っていく工程です。胡粉と膠(にかわ)を使って地塗りを行った後、「置上げ(おきあげ)」で鼻や唇を作っていきます。小刀で鼻と唇の形を整えたら、中塗り・上塗りを行い、ツヤを出すために磨きます。磨き終わったら、表情作りです。面相筆で眉毛やまつ毛、頬紅、口紅、舌、歯などを描き、表情を作っていきます。最後に植毛をし、結い上げたら人形の頭は完成です。
    なお、人形の種類によっては目のパーツを使わずに、表情を作る工程で目を描くものもあります。
  2. 2.手足作り 頭と同様、手足のベースは桐塑を使った型抜きです。胡粉と膠で地塗りをし、小刀で細かい形を作っていきます。最後に磨いてツヤをだしたら、完了です。人形によっては、爪に色をつけることもあります。
  3. 3.胴作り 胴作りの工程は、人形の種類によっても異なります。衣装人形の場合は、わら束に和紙をまいて作る、藁胴(わらどう)がベースです。安定するよう土台で固定してから、「襟巻(えりまき)」を行い、襟もとの形を整えます。続いて腕や手足などをつける作業です。腕や脚の部分は、ポーズを作る必要があるため、ベースとして針金を、肉付けのために藁を使います。終わったら衣装を着つけ、「腕折り(かいなおり)」をしてポーズを作り、完成です。人形に着つけるための衣装は、全て人間のものと同様に作られています。使われる生地も、西陣織などの豪華な素材です。素材に和紙を裏張りすることでハリを出し、着つけた後の衣装が崩れないようにされています。
    木目込人形の場合は、藁は使いません。頭作りで使った桐塑を使い、型抜きで胴のベースを作る「かま詰め(かまづめ)」を行います。はみ出した部分を竹べらで取り除き、しっかり乾燥したら生地ごしらえです。生地ごしらえでは、乾燥によって生じたヒビなどを竹べらやヤスリで修正します。表面が平らになったら、胡粉塗りの工程です。膠が生地の崩れやすさを防ぎ、胡粉が布の発色を良くします。乾いたら、木目込むための準備です。筋彫りで、寒梅粉を入れるための溝を掘ります。筋彫りは、布のふくらみや流動勘を出すための重要な工程です。寒梅粉を水で練り上げて溝に入れ、ヘラを使って布の端を溝に押し込んでいく木目込を行います。木目込が終われば、木目込人形の胴作りは完成です。かま詰めの段階でポーズが出来ているので、「腕折り」でポーズを作る必要はありません。
  4. 4.小道具作り 檜扇(ひおうぎ)や笏(しゃく)、冠、太刀など、様々な小道具を専門の小道具師が作ります。
  5. 5.組み立て 胴体に、頭や小道具などを取り付けたら完成です。衣装や髪に乱れがあれば整えます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社 東玉 カブシキガイシャ トウギョク

株式会社 小木 カブシキガイシャ コボク

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

株式会社東玉 岩槻総本店

  • 住所
  • 電話
    048-756-1111
  • 定休日
    月・火曜日(5/6~9/30)、月曜日(10/1~10/31)、無休(11/1~5/5)※臨時休業日5/8~10
  • 営業時間
    10:00~17:00(5/6~10/31)、10:00~18:00(11/1~5/5)
  • アクセス
    【車】岩槻I.C.から1.5km約5分。専用駐車場あり(東玉総本店1F) 【電車】東武アーバンパークライン岩槻駅(JR大宮駅より12分)
  • HP

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