伊勢形紙

伊勢形紙 イセカタガミ

長い歴史のなかで育まれた独特の風合い
それぞれに味わいがある4種類の彫刻技法

Description / 特徴・産地

伊勢形紙とは?

伊勢形紙(いせかたがみ)は、三重県鈴鹿市着物周辺で作られている型染めに用いられる型紙です。古くから伊勢の地・白子(現在の鈴鹿市あたり)で作られたことから、「伊勢形紙」または「伊勢型」「白子型」などの名で呼ばれていました。現在も鈴鹿市を中心に生産されており、「伊勢<形>紙」と「伊勢<型>紙」の両方の字が併用されています。
伊勢形紙は、柿渋(かきしぶ)で張り合わせて補強した美濃和紙を台紙にし、職人が彫刻刀による手彫りで図柄を彫り抜いて作られます。彫刻技法には「縞彫り」「突彫り」「道具彫り」「錐(きり)彫り」の4種類があります。
伊勢形紙の特徴は、卓越した職人がさまざまな彫刻刀と技法を駆使して丹念に作り上げる独特の風合いです。この型紙は主に、友禅や小紋、浴衣など着物の模様や柄を染めるために用いられます。
現在は着物の染色用のみならず、襖・障子などの室内装飾やLED照明にも応用され、新しい取り組みにも注目が集まっています。

History / 歴史

伊勢形紙 - 歴史

伊勢形紙の歴史は古く千年以上前に遡るとも言われており、発祥については諸説があります。一説では、室町時代に描かれた「職人尽絵(しょくにんづくしえ)」に型紙を使う染職人の姿があることから、室町時代末期には型紙が存在したと考えられています。
江戸時代になると、紀州藩による手厚い保護を受け、伊勢形紙は白子と寺家を中心に盛んになっていきます。また、伊勢湾に面したこの地は交易の拠点だったことも大きく影響したと言われています。職人たちの協同による発展に加えて、型売り業者が各地に型紙を売り歩き、伊勢型紙は全国に広がっていきました。
明治時代には近代化の波を受けて衣服文化が変化し、さらに太平洋戦争による打撃から型紙業者がほぼいなくなる状況に陥ります。しかし、終戦から復興が進むにつれて再び着物の需要が増え、昭和40年代に最も盛んになりました。
現代は、着物の需要の減少と新しい染色技術の普及によって型紙業者も減る傾向にあり、伝統技術を後世に伝えるために技術保存会が立ち上がっています。芸術性のある図柄は美術工芸品としても評価され、個人の趣味として楽しむ人も多くなっています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.法造り(ほづくり) 染型紙には、伸縮しない強い性質の紙が必要です。これを「型地紙(かたじがみ)」と呼び、伊勢形紙の工程は型地紙づくりから始まります。
    まず、美濃和紙を200枚~500枚重ね、規格の寸法に合わせて裁断します。
  2. 2.紙つけ 和紙は、横方向に強く縦方向に弱いという性質を持っているため、3枚の和紙を交互に貼り合わせると強靭な紙になります。「紙つけ」とは、3枚の和紙を柿渋(かきしぶ)を用いて縦、横、縦とベニヤ状に貼り合わせる工程です。柿渋(かきしぶ)を使うことで、和紙は水にも強い性質になります。
  3. 3.乾燥 「紙つけ」が終わった紙は、1~2日寝かせることで柿渋(かきしぶ)の粘着力が増します。その後、紙を桧の張板に貼り、天日に干して乾燥させます。
  4. 4.室干し(むろがらし) つづいては、乾燥させた紙を室内温度約40度の燻煙室へ入れる「室干し(むろがらし)」の工程です。杉のおがくずで1週間程いぶし続けることによって和紙の繊維の間の柿渋が固まり、伸縮しにくく強い性質の紙に変化します。
  5. 5.型地紙(かたじがみ)の完成 さらに再び柿渋に浸し、天日干しで乾燥させます。もう一度「室干し(むろがらし)」を行い、表面を点検します。室干し(むろがらし)の工程を終えると、紙は焦げ茶色の「型地紙」になります。この工程には約45日かかり、実際に型彫りに使用するまでには約1~2年寝かせておく必要があります。
  6. 6.彫刻 型紙は、染屋からの依頼を受けて図案師が描いた図案をもとに彫られます。彫刻の技法には、「縞彫り」「突彫り」「道具彫り」「錐(きり)彫り」の4種類があります。
    「縞彫り」は、鋼の定規を当てて彫刻刃で均等の縞柄を彫る技法です。1本の縞を彫るのに、小刃で同じ場所を三度続けてなぞります。最高で1cm幅に11本の縞を彫ることもあるため、正確な技術が必要とされる工程です。
    「突彫り」は、「穴板」と呼ばれる台に5~8枚の型地紙を置き、刃先1mm~2mmの小刃で、垂直に突くように前方向へ掘り進める技法です。現在は、直線や大きな柄を彫る場合には小刃を手前に引くようにして彫っていきます。彫りの線が微妙に揺れるため、温かみのある味が出るのが特徴です。
    「道具彫り」は、花・扇・菱などの形に造られた彫刻刀を用いて、さまざまな文様を彫り抜く技法です。江戸小紋では俗に「ごっとり」とも呼ばれています。「道具彫り」は、均整のとれた柄や多様な形の表現ができることが特徴です。この技法は道具を造ることから始まり、道具の出来が作品の仕上がりに大きく影響します。「道具彫り」の職人は非常に数多くの彫刻刀を持っており、多い人では3000本ともいわれています。
    「錐(きり)彫り」は、刃先が半円形の彫刻刀を垂直に立て、錐を回転させながら小さな孔を彫る技法です。丸の連続で細かい文様を作り、江戸小紋の形紙となります。なかには1平方センチに100個ほどもの穴が彫られるものもあり、高度な技と根気が必要です。
  7. 7. 紗張り(しゃばり)、糸入れ(いといれ) 彫り上がった型紙は染色するために、彫り方によって補強する場合があります。「紗張り(しゃばり)」とは、細かい絹糸の紗を漆で貼り付けて補強する方法です。
    「糸入れ(いといれ)」は、細かい縞模様がちぎれないように2枚の紙の間に絹糸を入れて補強する方法です。現在「糸入れ」は「縞彫り」の形紙だけで行われています。少しのズレも許されないため、高い集中力が必要とされる作業です。
    このようにして出来た型紙は染屋に送られ、着物を染めるために使用されます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社大杉型紙工業 オオスギ

伝統工芸伊勢型紙の技を生かしたインテリア・ご贈答用の品々を製造・販売しています。 地紙(じがみ)作りからデザイン・彫刻・彩色等の一貫管理により、お客様のご要望にお答え致します。

株式会社 オコシ型紙商店 オコシカタガミ

今なお新しい文様を創造し、「きもの」だけではなく、現代のライフスタイルに合ったインテリア、建築、雑貨などに伊勢型紙の文様を反映させ、お客様の日常に彩りを添え、日々を楽しく過ごすための努力を繋いでいます。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

伊勢型紙資料館