庄川挽物木地 写真提供:富山県

庄川挽物木地 ショウガワヒキモノキジ

天然の木材が魅せる杢目の豊かな表情
素朴ながらも美しい木の温かな質感

Description / 特徴・産地

庄川挽物木地とは?

庄川挽物木地(しょうがわひきものきじ)は、富山県高岡市や砺波市など富山県広域で作られている工芸用具・材料です。素朴ながらも美しい木を活かした伝統的な工芸品として、1978年(昭和53年)には国の伝統工芸品にも指定されました。
庄川挽物木地の特徴は木本来の表情が楽しめることです。庄川挽物木地には、主にケヤキが使われています。ケヤキは味のある杢目(もくめ)が美しい木です。庄川挽物木地では、横木にして加工していくため、杢目が横に走り、木の表情が顕著に表れます。この木の表情は、同じ形に加工しても、異なる木を使用しているため、ひとつひとつ表情が異なり、選ぶ楽しさがあるのです。また、庄川挽物木地のように木をベースにした素材は、使い込むほどに味が出てきて、年数や使い方次第でつやや色合いが変わってきます。
現在、庄川挽物木地の種類として白木地と漆塗装を行ったものがありますが、近年では自分で塗装を施す愛好家の声によって磨きをかけない白木地の需要も高まっています。

History / 歴史

16世紀も終わりのこと、現在の金沢市周辺を治めていた加賀藩が、富山湾に繋がる庄川を利用してヒノキやケヤキなどの運搬を行うようになりました。このできごとが、後の庄川挽物木地の発展につながったと言われています。やがて、運搬の際にもれてしまった流木は庄川町の貯木場に集められていきます。
詳しい時期は明確にされていませんが、江戸時代後半になるとこの集められた木材を何かに活かせないかということで、木地の生産が行われるようになりました。そして、明治時代に入ると、ろくろを使用して加工を行っていくようになります。このろくろを使用した木地づくりこそが、庄川挽物木地のはじまりです。
庄川挽物木地づくりにおいて、ろくろを一人前にあやつれるようになるには、10年かかると言われています。そのため、当時は小学校までだった義務教育を終えるとすぐに修行に入る職人が多かったと言います。
昭和に入ると、この庄川挽物木地は全国へ販路を伸ばしました。現在も、昔ながらの製法が守られ全国各地へと杢目の美しい庄川挽物木地が送り出されています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.原木(げんぼく) 庄川挽物木地で使われるのは主にケヤキ、そしてトチです。ケヤキは硬くてしっかりしているうえに、杢目が美しいことから、トチは漆と相性が良く変形が起きにくいことから使用されます。近年では、こうしたケヤキやトチに限らず、桑やエンジュなど他の木材が使われることも増えてきました。
  2. 2.製材(せいざい) 製材は、製作するものの厚さに合わせて板状に切断、つまり板びきしていくことです。製材については、工房では行わずに主に製材所に委託して行います。
  3. 3.板づみ 製材した木材は、積み上げて、風雨にさらして自然乾燥させます。期間は、半年から1年ほどです。自然乾燥させることによって、木材のアクが抜け、変形しにくい丈夫な木材になります。
  4. 4.木取り 木取りとは、木材をつくるものの大きさに合わせて切り出していく作業のことです。まず、木材の表面を確認して、割れ目や節にあたらないように型を写していきます。長年の経験や感覚がものをいう作業です。次に、とった型に合わせて、丸のこぎりでだいたいの大きさに切り出していきます。
  5. 5.荒挽き 木取りを行った木材は、丸のこぎりでだいたいの大きさに切り出しただけなので、全体的に角ばった状態です。荒挽きでは、ろくろとカンナを使って、全体的に削り出し、大方の形を整えていきます。
  6. 6.乾燥 荒挽きを行った木材は、乾燥室に間隔をあけて積み上げていきます。庄川挽物木地で使われるのは火力乾燥です。一旦、木材の水分量が8%程度になるまで乾燥させていきます。次に、行われるのは乾燥戻しという作業です。乾燥室から取り出し、水分量12%程度になるように外気に触れさせて2週間ほど乾燥させていきます。この乾燥戻しは、木地の狂いを修正するための重要な作業です。
  7. 7.仕上げ 仕上げ作業では、再度ろくろとカンナを使って削り出して形を整えていきます。庄川挽物木地では、外側から仕上げていくのが特徴です。また、仕上げ作業で使われる、様々な種類のカンナにも特徴があります。
    まず、厚みのあるカンナで粗く削りだし、形を整えてから、薄刃のカンナで表面を滑らかにしていきます。このとき自然な曲線を作り出すため、一気に削り出すのが庄川挽物木地の特徴です。カンナで削り出した後は、さらなる仕上げとしてサンドペーパーで表面をさらになめらかにしていきます。
  8. 8.拭漆塗(ふきうるしぬり) 白木地としての工程は、削り出しの工程で終わりですが、塗装を施す場合は、さらに拭漆塗という工程を踏みます。拭漆塗とはろくろなどを使用して、生漆(きうるし)を全体的に何度重ねて塗っていき、つやや光沢を出していく作業です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

わたなべ木工芸 ワタナベモッコウゲイ

漆器の木地専門家から漆工房も含めた「一工房一貫製作」の工房です。地元小売業とギャラリー・百貨店との取引が主体となり、木地作りから漆塗りまでの多品種少量生産を行っています。 

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

庄川特産館

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