宮城伝統こけし

宮城伝統こけし ミヤギデントウコケシ

可憐な形や絵付け
産地ごとに個性を感じる独特の技

Description / 特徴・産地

宮城伝統こけしとは?

宮城伝統こけし(みやぎでんとうこけし)は宮城県の仙台市や白石市の周辺で作られている人形です。1981年(昭和56年)に国の伝統的工芸品に指定された宮城伝統こけしは産地によって「鳴子(なるこ)系」や「遠刈田(とおがった)系」など5系統のこけしに分けることができます。
宮城伝統こけしの特徴は、頭と胴だけのシンプルな形と可憐な姿です。また、素朴で単純な形であっても、5系統のこけしにはそれぞれの産地に伝わる独特の形や模様があります。
系統によって独特のこけしが生まれたのは製作技術をはじめ、形態や模様は一族のみ、あるいは弟子のみに伝えるという師弟相伝で受け継がれたためです。さらに、系統の伝統を守るために、こけしの製作については系統ごとにさまざまな制約もあります。
一方で、宮城伝統こけしは原木の木取りから描彩、仕上げまでの工程を一人で行うことも有名です。そのため、伝統を守りながらも工人の個性を表現することができます。

History / 歴史

宮城伝統こけし - 歴史

約1300年前の奈良時代(710年~794年)、国家安泰を願う称徳天皇(718年~770年)の発願によって陀羅尼経(だらにきょう)を納める百万基の小塔「百万塔」が造られました。こけしの歴史を遡ると、最古のこけしと考えられるのがこの百万塔です。
その後、近江国において惟喬親王(844年~897年)がろくろ挽きの技術を伝え、指導を受けた木地師達が日本各地に移り住んだことにより、こけしが発展したと言われています。さらに、安土桃山時代(1573年~1603年)になると東北地方にも木地師が住むようになり、そこで作られるようになったこけしが宮城伝統こけしのルーツといわれています。
宮城伝統こけしの5系統のうち、発生年代が早いのは遠刈田温泉を中心に栄えた「遠刈田系こけし」と考えられています。当時、山村に暮らす木地師たちは椀や杓子、あるいは盆などの生活に必要な木器具を作り、温泉場を訪れた人のお土産品として販売していました。
その一方で、木地師は木器具だけでなく徐々に子どものおもちゃも作るようになり、自分の子や孫に与えていたそうです。このように、子どもに与えていたこけしはやがて湯治場で販売されるようになり、明治中期になると大人の鑑賞用としても親しまれ、宮城伝統こけしとして広まっていきました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.木取り・荒引き 宮城県内の5系統のこけしは系統ごとに製造に関する制約があり、製造工程は系統によって若干異なります。
    こけしの材料にはイタヤカエデなどを用いることもありますが、主に木地に使うのはミズキです。木は切り出したらすぐに樹皮を剥き、半年から一年ほど自然乾燥させてから使います。原木は、まず寸法に合わせて切る「玉切り」を行い、「木取り」では木の余分な部分を切り落とします。また、「荒引き」はろくろを回して頭と胴のそれぞれの部分のおおよその形にする工程です。
    遠刈田こけしや弥治郎こけし、作並こけしの荒引きは縦ろくろで行いますが、鳴子こけしは横ろくろを用います。
  2. 2.頭仕上げ・胴仕上げ 頭と胴は別々に仕上げますが、いずれも鉋(かんな)で直接削っていきます。下書きや線などの印は付けず、職人の指先の感触と目で曲線や太さを確認しながらろくろで削るには熟練の職人技が必要です。形を整えたら「とくさ」やサンドペーパーなどで磨き、胴には上部と下部にろくろ模様を付けます。
    また、頭の形は瓜実型のほかに、遠刈田こけしや弥治郎こけしでは下張型、作並こけしの場合は福助型や丸形など頭の形はさまざまです。さらに、胴の形も系統ごとの決まりがあり、鳴子系は胴部の中ほどがやや細い「内半胴」とし、遠刈田系はなで肩で「直胴」とすることが定められています。肘折系のこけしはなで肩の直胴のほかに「裾広がり直胴」など独特な形も可能です。
  3. 3.頭を胴にはめ込む 鳴子こけしは胴をろくろで回しながら摩擦を利用して頭をはめ込みます。一気にはめ込むため摩擦で煙が上がり、頭をはめ込んだときに「キュッキュッ」と鳴るのは「ガタコ」と言われ、鳴子こけし独特の首入れの技術によるものです。また、鳴子こけし以外の遠刈田こけしや弥治郎こけしなどのこけしは「さし込み」あるいは「はめ込み」によって頭と胴を組み付けます。
  4. 4.描彩 絵付けには墨、または染料を使います。描彩に用いる色は限られており、顔と髪には黒、ろくろ模様と着物柄には赤と青(緑)が主です。
    描彩については頭部と胴部のそれぞれについて細かく定められています。例えば、鳴子こけしの着物柄は菊をはじめ、牡丹やあやめ、なでしこなどの花、またはろくろ模様です。遠刈田こけしの着物柄は菊や梅、牡丹、桜などの花、あるいは衿や木目のほかにろくろ模様などを描彩します。また、弥治郎こけしの着物に描彩できる柄はろくろ模様のほか、菊や蝶、結びひもなどです。
    同じ系統のこけしでも描彩は工人ごとの個性や持ち味など特徴が表れやすい作業です。
  5. 5.ろう塗り ろう塗りに使用するのはモクロウやハクロウなどです。絵付けを終えたこけしにろうを塗り、仕上げは「ろうみがき仕上げ」とすることが決められています。
    ろう塗りによってミズキの木目を一層、美しく映え、こけしの製造に際しては欠かせない工程です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

松田工房 マツダコウボウ

松田工房では、三代にわたり伝統こけしを受け継いでまいりました。現在は伝統だけでなく、新しいことにも挑戦しております。 デザイナーとコラボレーションした商品を制作したり、似顔絵こけしなども作っております。

こけしの菅原屋

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

蔵王町伝統産業会館 - みやぎ蔵王こけし館

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