江戸節句人形 写真提供: (公財)東京観光財団

江戸節句人形 エドセックニンギョウ

ひとつひとつに職人の技量や個性が表現される
子供の健康を願う精巧な人形

Description / 特徴・産地

江戸節句人形とは?

江戸節句人形(えどせっくにんぎょう)は、東京都のうち12区と埼玉県のうち4市で作られている、雛祭りや端午の節句に飾られる市松人形、御所人形、風俗人形といった衣装人形と飾り甲冑(かっちゅう)などです。江戸時代後期には、江戸の一大風物詩にも数えられるほどの雛市や甲人形市が日本橋十軒店で開かれ、子供の健やかな健康と将来の繁栄を祈り、豪華で盛大な初節句を祝えるほどに江戸の庶民たちにも余裕が生まれていました。
江戸節句人形の特徴は、もともと戸外に飾られていたものを屋内に飾るようになったために小さく、江戸前の自然な風合いで写実的かつ精巧な造りです。天然素材の皮革や絹糸、木材や紙と鉄、銅などの厳選された素材の使用と製作工程で、当時の武士の誇りである無骨ながらも気品ある甲冑を現代に甦らせた、より写実的で精巧に表現されている本物と見まがわぬ甲冑もあります。

History / 歴史

京都の人形作りに影響を受けて始まった江戸の人形制作は、江戸時代初期には始まっていました。
しかし江戸独自の形が確立されたのは約250年前の宝暦年代の頃で、1761年(宝暦2年)に「次郎左衛門雛(じろうざえもんびな)」の製作者である京都の人形師が、徳川10代将軍家治の頃に江戸へ下り、人形店を立ち上げたことから江戸に広く広まるようになりました。
1716~36年(享保元年~21年)頃に主流であった「享保雛」は比較的大型で爛漫豪華なつくりだったため、幕府からも「贅沢品」と敬遠されていましたが、次郎左衛門雛は庶民的な面持ちと作りから江戸の文化に浸透し、受け入れられていました。
現在、江戸節句人形として愛され続けられている人形は、この宝暦年代の次郎左衛門のスタイルが色濃く反映されています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.頭造り 桐の木くずと生麩糊(しょうふのり)を練り上げた桐塑(とうそ)と呼ばれる技法を使って「生地押し」、雛人形のお顔やそのほかの肌の部分を作るのに使われてきた粘土の一種である白雲土(はくうんど)で、「素焼き」あるいは「木彫り」をおこないます。
    あらかじめ顔の部分と後頭部の部分に分けてかたどってある窯に油を塗り込み、きめの細かい桐塑を詰め、中心部分を空洞にしておきます。十分に乾燥させた後、やすりで丁寧に形を整えます。
  2. 2.胡粉塗り 「桐塑頭」または「木彫頭」は、下塗り工程である「地塗り」を施して乾燥させ、貝殻から作られた白色の顔料の「胡粉」で頭塗りをおこない「置き上げ」により口と鼻を盛り上げます。その後、小刀で切り出しをおこない形を整えます。
    次に「中塗り」をおこない、下地の地塗りよりも濃く胡粉を塗り、形を整えて乾燥させ、胡粉のむらをなくすように水で湿らせた布で丁寧に拭きあげます。その後表情を彫り上げ、上塗り胡粉を刷毛(はけ)で10回程度丁寧にむらなく塗っていきます。
  3. 3.面相書き 義眼を使う場合には、小刀で切り込みを入れて開眼させ、眉毛と髪の生え際を細筆か面相筆で墨書きで書き上げ、口紅入れをします。
  4. 4.毛拭き まず、髪の毛を植え込む予定の場所に小刀で切り込みを入れて溝をつくります。そこに絹糸を黒く染色したものを毛先をそろえるようにして、はみ出ている毛先を切りそろえ糊付けをします。
    その後先ほど切り込みでつくった溝に目打ちで髪の毛を植え込みます。
  5. 5.胴造り 頭造りで使った桐塑に正麩糊(しょうふのり)を混ぜあわせ、胴体を前後に分けた窯に詰め、前後に分けた窯を重ねます。窯をおさえて前部分を半分外した状態のまま、後ろ部分を外す前に窯からはみ出た部分を取り除きます。その後、後ろ部分の窯をゆっくりと取り外します。
  6. 6.胡粉塗り・胴体部分 胡粉に、「にかわ」と呼ばれる動物の皮や骨などからつくられた有機タンパク質で溶かし、胴体に塗り込みます。この工程を行うことで、胴体の生地の引き締めや型崩れの予防にもつながるためむらなくきれいに塗り上げます。
    しっかりと乾燥させた後は、着物を木目込むために小刀で「筋彫り」を行います。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社松崎人形 マツザキニンギョウ

幸一光は伝統的工芸品「江戸木目込人形」、「江戸節句人形」(衣裳着人形)の両方を作る工房です。又、雛人形、五月人形の製造を手がける数少ない人形工房です。

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