阿波和紙

阿波和紙 アワワシ

千三百年の伝承と進化
優しい肌触りと素朴な風合いの手漉き紙

Description / 特徴・産地

阿波和紙とは?

阿波和紙(あわわし)は、徳島県吉野川市、那賀郡那賀町、三好市池田町で作られている和紙です。和紙の伝統的な手法である「流し漉き」や「溜め漉き」という技法で作られています。
阿波和紙の特徴は、手漉き(てすき)ならではの肌触りと、生成(きなり)の風合い。そして、薄くても水に強くて破れにくい丈夫な紙質です。
伝統的な和紙の原料は、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)の靭皮繊維(じんぴせんい)ですが、これ以外に麻や竹、桑なども用いられます。徳島の伝統産業である藍染などの草木染を施したものや、透かしの技法、麻や木材を混ぜて漉いたものなども多く、幅広い用途に使われています。
伝統的な和紙の持つ風合いに現代の技術を融合し、インクジェット用の和紙、針金を通したインテリア用の和紙、耐水性のある和紙など、新しい試みを取り入れた和紙の開発も盛んに行われています。

History / 歴史

阿波和紙 - 歴史

阿波和紙がいつ頃始まったのかは定かではありませんが、大同年間(806~810年)の「延喜式(えんぎしき)」のために「紙麻七十斤、斐紙麻百斤を貢納した」という記録が残されています。また、阿波忌部氏(あわいんべし)が麻や楮(こうぞ)を栽培し、紙の製造を行っていたという記録があることからも、奈良時代にはすでに和紙の製造が始まっていたのではないかと考えられています。
また、1585年(天正13年)に入国し、初代徳島藩主となった蜂須賀家政(はちすか いえまさ)が楮(こうぞ)の保護を奨励したことに始まり、1636年(寛永13年)には2代藩主の至鎮(よししげ)が、農家の副業として紙づくりを奨励するなど、藩の政策として力を入れ始めます。また、享保年間(1716~1736年)には、専売制も導入されるなど、製紙業はより盛んになり、全国に名を知られるようになりました。
明治に入ると西洋化の流れとともに、徐々に阿波和紙は衰退し始めますが、1社の紙漉き業者が阿波和紙の伝統を守り続け、1976年(昭和51年)に伝統工芸品に指定されました。

General Production Process / 制作工程

阿波和紙 - 制作工程

  1. 1.煮熟(しゃじゅく) 原料の楮(こうぞ)は11~12月に収穫されます。靭皮(じんぴ)は外側から、黒皮・青皮・白皮の3層構造になっているので、皮を削ぎ、黒皮と白皮にした状態で乾燥します。
    乾燥保管した楮(こうぞ)は一昼夜流水に浸した後、繊維に残った黒皮やゴミを洗い流します。次に、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で繊維を煮ます。炊きムラができないように上下をひっくり返しながら、繊維が指でちぎれるようになるまで2時間ほど煮熟します。
  2. 2.塵取り(ちりとり) 煮熟が終わったら、その状態のまま一昼夜放置して蒸らした後、流水に浸して灰汁(あく)を抜き、アルカリ液に溶けた繊維以外のものを取り除きます。次に、水中に入れたかごの中で繊維の塵(ちり)をていねいに取り、さらに、焚きムラ、変色した部分なども除去します。
  3. 3.打解(だかい) 「塵取り」が終わって束になっている繊維を1本ずつバラバラにする工程が「打解(だかい)」です。石板か堅木(かしき)の板の上で、丁寧に叩きます。現在では、手作業ではなく、動力臼を使用することがほとんどです。
  4. 4. 紙漉き(かみすき) 繊維の準備が整ったら、次は「紙漉き(かみすき)」の工程に入ります。
    伝統的な和紙の手法である「流し漉き(ながしすき)」は、「掛け流し(かけながし)」・「調子(ちょうし)」「捨て水(捨て水)」の3つの工程からなっています。
    「掛け流し」は、簀桁(すけた)全体に繊維を広げる作業です。簀桁(すけた)の全面に薄く均等に広がるように、簀桁(すけた)を浅く入れ、手早く原料の繊維を汲み込みます。
    「調子」は繊維を絡み合わせて和紙の層を作る作業です。「掛け流し」の時よりもやや深く原料を汲み込み、簀桁(すけた)を動かして絡み合わせ、必要な厚さになるまで「調子」の工程を繰り返します。必要な厚さになったら、簀(すけた)に残った不要な水や原料をふるい捨てる「捨て水」を行います。
    漉き上がると、 簀(す)を桁からはずし、空気を入れないように注意して、紙床板(しといた)の上に重ねていきます。漉いて湿ったままの紙を1枚ずつ重ねた束を「紙床(しと)」と言います。
  5. 5.圧搾(あっさく) 「紙床(しと)」はそのまま一晩放置して自然に水分を取り除いた後、板で挟んで圧搾機にかけて脱水します。
  6. 6.乾燥(かんそう) 圧搾を終えると、紙を1枚づつ干し板に張り付け、干し板のまま天日や蒸気を用いた乾燥機で乾燥させます。
    乾燥が終わると、用途によって「ドーサ」・「こんにゃく」・「柿渋」などを塗り、さまざまな加工を行う工程です。「ドーサ」はミョウバンと膠(ニカワ)で作る滲み(にじみ)止め、「こんにゃく」は防水や紙の強化、「柿渋」は防腐・防虫・消臭などの目的で使用されます。また、藍などの染料で染めたり、ちりめんのような紙を作る場合も、この段階で加工を行います。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

富士製紙企業組合 フジセイシキギョウクミアイ

和紙の伝統文化を守り継承するだけではなく、"新しい素材の作り手"として、むしろ和紙を「伝統」という世界から解き放し、さまざまな技法の開発・素材の研究活動を行っています。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

阿波和紙伝統産業会館

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