因州和紙

因州和紙 インシュウワシ

因幡の清流が生んだ柔らかく、強い質感
千三百年の伝統を受け継ぐ手漉き和紙

Description / 特徴・産地

因州和紙とは?

因州和紙(いんしゅうわし)は旧因幡(いなば)の国に当たる鳥取県の東部で作られている手すき和紙です。特に書道や書画・水墨画に適した風合いのよい画仙用紙(がせんようし)が有名で、全国でトップクラスの生産量を誇ります。
和紙の原料は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(かんぴ)などですが、因幡の国ではこれらの原料と品質を高めるきれいな清流に恵まれ、紙漉き(かみすき)の技術が発達しました。
因州和紙の特徴は、天然の繊維が活かされた温かみのあるしなやかさです。酸化しにくく自然な強さを持つことから実用性にも優れ「他の和紙で一枚書くうち二枚書け、滑らかで早く筆がすすむから墨も減らない」と言われています。その高い品質から、「因州筆きれず」とも言われるほどです。
紙漉きの工程は手すきの流し漉きです。水に溶かした繊維を漉きあげるときの「ちゃっぽん」という音は伝統的な風物詩として評価され、環境庁の日本の音風景100選にも選ばれています。
現在は伝統的な技術を利用して立休形状のインテリア製品やパソコン用印刷紙など、時代の変化に対応した新製品を多く開発していることも特徴です。

History / 歴史

因州和紙 - 歴史

因州和紙の起源は古く、8世紀前半の奈良時代に正倉院文書の「正集」の中に因幡の国印の押されたものがあります。これは日本でも最古期のもので、正倉院に保存されています。
927年(延長5年)に完成した「延喜式(えんぎしき)」には、因幡の国から朝廷に紙が献上されたという記録が残っています。
江戸時代には、因州和紙の原材料である楮(こうぞ)と雁皮(がんぴ)が、亀井侯文書に「切ってはならない木」と記されており、鳥取藩に上納する藩の御用紙(ごようし)としても、庶民が使う紙としても盛んに作られていました。
明治時代には、紙の漂白技術や合理的な製造方法を取り入れたことで生産量が増え、その勢いは大正末期まで続きます。
昭和に入ると、木材パルプを使った洋紙の普及により和紙の需要は減少していきますが、因州和紙は書遺用紙・工芸紙・染色紙など、伝統的技術を基礎とした新しい製品の開発に力を入れ、画仙紙は日本一のシェアを獲得するなど、戦後に知名度を上げています。

General Production Process / 制作工程

因州和紙 - 制作工程

  1. 1.原料 因州和紙の主な材料は三椏(みつまた)、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)です。作りたい和紙によって原料を選び、柔らかくして煮やすくするために水につけておきます。砂やゴミなどの不要物を洗い落とし、外側にある表面の「黒皮」を包丁で撫でるように取り除きます。
  2. 2.煮る 原料の皮には和紙の原料となる繊維素(セルロース)が多く含まれますが、他の物質も含まれています。「煮る」は和紙に必要な繊維素だけを取り出すための工程です。原料を再び水につけて柔らかくしてから鉄製の釜に水を張り、竹・わら・麻などと、苛性ソーダやソーダ灰(炭酸ナトリウム)などの薬品と一緒に加えてアルカリ性にして煮ます。煮る時間は原料やアルカリの種類によって異なりますが、楮では2~3時間ほどです。作業場には甘そうな独特の匂いが漂います。
  3. 3.水洗い、晒し(さらし) 煮る工程により、皮の繊維をつなぐペクチンやリグニンといった物質が水に溶けやすくなります。原料を水洗いして不要な物質と薬品を取り除いて繊維素だけを残します。清流にさらして小さなゴミや汚れなどを洗い流し、和紙に不要なものを手作業で丁寧に取り除きます。
  4. 4.たたく 結束して固くなった原料の繊維を、棒で叩いて細かくほぐしていく工程です。しっかりとほぐすことで、紙を漉くときに原料の繊維同士が絡みやすくなり、和紙の強度が上がります。逆にたたきが十分でないと、粗くて強度の低い和紙になってしまいます。たたきの工程は手作業の他、「ビーター(打解機)」という機械を使うこともあります。色をつけるときはこの時に染料を加えて希望の色に染めておきます。
  5. 5.紙漉き(かみすき) 紙漉きは漉舟(すきぶね)と簀桁(すげた)を使う、因州和紙の中心的な作業工程です。たたいた後の原料である紙料(しりょう)から不純物などを取り除き、トロロアオイの根から取り出した粘液を加えて調整しておきます。
    漉舟に水をはり紙料を入れて簀桁で汲(く)みあげます。紙全体の厚さが均一になるよう、揺り動かしながら繊維をからめます。因州和紙ではこの動作を何回も繰り返して紙層を重ねる「流し漉き(ながしずき)」の方法が取り入れられており、希望の厚さの紙を作りあげます。
  6. 6.脱水 漉いた紙である湿紙(しっし)の水分を取る工程です。紙の形を損なわないように湿紙を数百枚積み重ね、緩やかに圧力を増して圧搾(あっさく)していき、充分に水分を取り除きます。
  7. 7.乾燥 圧搾を終えて脱水された湿紙を一枚ずつ丁寧にはがし、干し板にしわが出来ないように刷毛で丁寧に貼り付けて乾燥させます。天日で乾かすほか、乾燥室を使うこともあります。
  8. 8.裁断 乾燥した紙を一枚ずつ調べ、穴があいたり傷やついた不良な紙を選り分けます。その後、画仙紙や半紙など紙の種類に応じて裁断します。包丁と切り板と定規のセットで行う伝統的な「手裁ち」や、機械で裁断を行います。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社カミシマ カミシマ

和紙問屋としてのこだわりをモットーにお客様にご満足いただける本物の和紙をお届けいたします。

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あおや和紙工房

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