因州和紙

因州和紙 インシュウワシ

楮・三椏・雁皮などの天然繊維と、因幡の清らかな水が生み出す、しなやかで丈夫な紙質が特徴。特に書道や水墨画に適した画仙紙や半紙で知られ、筆運びの滑らかさと温かみのある風合いが魅力です。1975年(昭和50年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

因州和紙とは?

因州和紙(いんしゅうわし)は、鳥取県鳥取市の青谷町、佐治町を中心に作られている和紙です。1975年(昭和50年)5月10日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

主な原料には、楮、三椏、雁皮を用います。国指定の伝統的技法では、「流し漉き」によって紙を漉き、竹製または紗製の簀を使用します。また、紙料の繊維を水中に均一に分散させる「ねり」には、トロロアオイを用います。

因州和紙は、書道用紙や書画・水墨画用の画仙紙で知られています。なかでも佐治では三椏を用いた書道用紙の生産が発達し、滑らかな筆運びと墨の表現に適した紙が作られてきました。

産地には「因州筆切れず」という言葉が伝わっています。これは、因州和紙では筆が傷みにくく、墨がかすれにくいと評されてきたことを表す言葉です。

楮を用いた紙は、長い繊維が絡み合うことで丈夫でしなやかに仕上がります。三椏を用いた紙は、きめが細かく滑らかで、雁皮を用いた紙は緻密で自然な光沢を持つなど、原料によって異なる特徴があります。

紙漉きでは、漉き舟の紙料を簀桁ですくい、前後に揺り動かしながら繊維を絡ませ、紙層を重ねていく「流し漉き」を行います。漉き上げた紙は圧搾して水分を抜き、板干しまたは鉄板乾燥によって仕上げます。

現在では、書道用紙、画仙紙、工芸紙、染色紙のほか、便箋、はがき、名刺、インテリア用品など、伝統技法を生かしたさまざまな製品が作られています。

History / 歴史

因州和紙 - 歴史

因州和紙の正確な起源は分かっていませんが、因幡地方では古くから紙が作られていました。

奈良時代の正倉院文書には、因幡国で作られたと考えられる紙が残されています。また、927年(延長5年)に完成した「延喜式」には、因幡国が朝廷へ紙を納めた国の一つとして記録されています。

こうした史料から、因幡地方では少なくとも千年以上にわたって紙漉きが行われてきたことが分かります。

江戸時代になると、鳥取藩は紙の生産を奨励しました。楮や雁皮は重要な製紙原料として保護され、因州和紙は藩の御用紙としても生産されました。

青谷地域の日置では製紙が盛んになり、佐治では江戸時代中期以降、紙漉き技術が広く定着したとされています。

佐治では、享保年間に西尾半右衛門が播磨で紙漉きの技術を学び、地域へ伝えたという伝承があります。当初は楮紙が中心でしたが、天明年間には三椏が導入され、天保年間には製紙原料として本格的に栽培されるようになりました。

明治時代には、漂白技術や製造方法の改良が進み、特に佐治では三椏を用いた書道用紙や画仙紙の生産が発展しました。

一方、昭和時代になると機械製紙や洋紙の普及によって手漉和紙の需要は減少しました。その中で因州和紙の産地では、書道用紙、画仙紙、工芸紙、染色紙など、それぞれの用途に適した紙づくりを進めてきました。

1975年(昭和50年)5月10日には、「因州和紙」が国の伝統的工芸品に指定されました。

現在も青谷町と佐治町を中心に、楮、三椏、雁皮を原料とし、流し漉きをはじめとする伝統的な紙漉き技術が受け継がれています。

Production Process / 制作工程

因州和紙 - 制作工程

  1. 1.原料 因州和紙の主な材料は三椏(みつまた)、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)です。作りたい和紙によって原料を選び、柔らかくして煮やすくするために水につけておきます。砂やゴミなどの不要物を洗い落とし、外側にある表面の「黒皮」を包丁で撫でるように取り除きます。
  2. 2.煮る 原料の皮には和紙の原料となる繊維素(セルロース)が多く含まれますが、他の物質も含まれています。「煮る」は和紙に必要な繊維素だけを取り出すための工程です。原料を再び水につけて柔らかくしてから鉄製の釜に水を張り、竹・わら・麻などと、苛性ソーダやソーダ灰(炭酸ナトリウム)などの薬品と一緒に加えてアルカリ性にして煮ます。煮る時間は原料やアルカリの種類によって異なりますが、楮では2~3時間ほどです。作業場には甘そうな独特の匂いが漂います。
  3. 3.水洗い、晒し(さらし) 煮る工程により、皮の繊維をつなぐペクチンやリグニンといった物質が水に溶けやすくなります。原料を水洗いして不要な物質と薬品を取り除いて繊維素だけを残します。清流にさらして小さなゴミや汚れなどを洗い流し、和紙に不要なものを手作業で丁寧に取り除きます。
  4. 4.たたく 結束して固くなった原料の繊維を、棒で叩いて細かくほぐしていく工程です。しっかりとほぐすことで、紙を漉くときに原料の繊維同士が絡みやすくなり、和紙の強度が上がります。逆にたたきが十分でないと、粗くて強度の低い和紙になってしまいます。たたきの工程は手作業の他、「ビーター(打解機)」という機械を使うこともあります。色をつけるときはこの時に染料を加えて希望の色に染めておきます。
  5. 5.紙漉き(かみすき) 紙漉きは漉舟(すきぶね)と簀桁(すげた)を使う、因州和紙の中心的な作業工程です。たたいた後の原料である紙料(しりょう)から不純物などを取り除き、トロロアオイの根から取り出した粘液を加えて調整しておきます。
    漉舟に水をはり紙料を入れて簀桁で汲(く)みあげます。紙全体の厚さが均一になるよう、揺り動かしながら繊維をからめます。因州和紙ではこの動作を何回も繰り返して紙層を重ねる「流し漉き(ながしずき)」の方法が取り入れられており、希望の厚さの紙を作りあげます。
  6. 6.脱水 漉いた紙である湿紙(しっし)の水分を取る工程です。紙の形を損なわないように湿紙を数百枚積み重ね、緩やかに圧力を増して圧搾(あっさく)していき、充分に水分を取り除きます。
  7. 7.乾燥 圧搾を終えて脱水された湿紙を一枚ずつ丁寧にはがし、干し板にしわが出来ないように刷毛で丁寧に貼り付けて乾燥させます。天日で乾かすほか、乾燥室を使うこともあります。
  8. 8.裁断 乾燥した紙を一枚ずつ調べ、穴があいたり傷やついた不良な紙を選り分けます。その後、画仙紙や半紙など紙の種類に応じて裁断します。包丁と切り板と定規のセットで行う伝統的な「手裁ち」や、機械で裁断を行います。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

カミシマ カミシマ

Facility Information / 関連施設情報

あおや和紙工房

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