石州和紙写真提供:島根県

石州和紙 セキシュウワシ

楮・三椏・雁皮などの天然繊維を生かした、強靱さとしなやかさが特徴の石州和紙。なかでも楮紙は折ったり揉んだりしても破れにくく、滑らかな紙肌とやさしい光沢を備えています。1989年(平成元年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

石州和紙とは?

石州和紙(せきしゅうわし)は、島根県浜田市、江津市を中心に、石見地方で作られている和紙です。1989年(平成元年)4月11日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

主な原料には、楮、三椏、雁皮を用います。国指定の伝統的技法では、「流し漉き」または「溜め漉き」によって紙を漉き、竹またはカヤで作った簀を使用します。また、紙料の繊維を水中に均一に分散させる「ねり」には、トロロアオイを用います。

なかでも楮を用いた石州の紙は、長い靱皮繊維が互いに絡み合うことで、丈夫で腰のある紙に仕上がります。石州では、楮の黒皮をそぞる際に、白皮と黒皮の間にある「あま皮」を適度に残す伝統的な原料処理が行われ、この技法も石州半紙の強靱な紙質につながっています。

三椏を用いた紙はきめが細かく滑らかで、雁皮を用いた紙は緻密で光沢があり、それぞれ原料の性質を生かした紙が作られています。

漉き上げた紙は、板に貼って乾燥させる「板干し」、または加熱した鉄板を用いる「鉄板乾燥」によって仕上げます。

石州和紙は、障子紙、書画用紙、便箋、封筒、はがき、名刺など幅広い用途に用いられています。また、石州和紙のうち、伝統的な製法によって作られる「石州半紙」の制作技術は、1969年(昭和44年)4月15日に国の重要無形文化財に指定されています。

石州半紙は2009年にユネスコ無形文化遺産に記載され、2014年には本美濃紙、細川紙とともに「和紙:日本の手漉和紙技術」の構成要素として改めて登録されました。

History / 歴史

石見地方の紙づくりには古い歴史があります。

905年(延喜5年)に編纂が始まった「延喜式」には、石見国における紙に関する記録が見られることから、10世紀初頭にはこの地域で製紙が行われていたと考えられています。

一方、江戸時代にまとめられた「紙漉重宝記」には、奈良時代に歌人・柿本人麻呂が石見の人々に紙漉きを教えたという伝承が記されています。ただし、これは石州和紙の起源を伝える伝承であり、歴史的事実として確認されたものではありません。

江戸時代には、浜田藩と津和野藩が紙の生産を奨励し、専売制を敷くなどして製紙業を保護しました。その結果、石見地方で漉かれる半紙は「石州半紙」として広く知られるようになりました。

丈夫で保存性に優れた石州半紙は、大坂の商人たちの帳簿などにも用いられました。火事の際には帳簿を井戸へ投げ入れて焼失を防ぎ、後で引き上げて再び使用したという逸話も伝えられており、石州半紙の強さを象徴する話として知られています。

寛政年間には、石見の紙漉き職人・国東治兵衛が「紙漉重宝記」を著し、原料処理から紙漉きまでの技術を体系的に記録しました。同書は、当時の石州半紙の製法を知るうえで重要な資料となっています。

明治時代以降も製紙業は地域の重要産業として続きましたが、機械製紙の普及や生活様式の変化によって手漉和紙の生産者は次第に減少しました。

1969年(昭和44年)4月15日には、「石州半紙」の制作技術が国の重要無形文化財に指定され、石州半紙技術者会が保持団体として認定されました。

1989年(平成元年)4月11日には、「石州和紙」が国の伝統的工芸品に指定されました。

さらに、石州半紙は2009年にユネスコ無形文化遺産に記載され、2014年には本美濃紙、細川紙とともに「和紙:日本の手漉和紙技術」として登録されました。

現在も浜田市、江津市を中心に、楮、三椏、雁皮などの天然素材と伝統的な手漉き技術を生かした石州和紙が作られています。

Production Process / 制作工程

  1. 1.原料蒸し(げんりょうむし) 強靭な和紙である石州和紙の原料は、地元で栽培された楮(こうぞ)と三椏(みつまた)、そして地元で自生している野生の雁皮(がんぴ)を使用します。斜めに鎌で刈り取られた原木は、1メートル位に押し切りして切り揃えます。切り揃えたら、木芯と表皮がはがれやすくなるようにせいろ蒸しを行います。
    原木と表皮をそれぞれの手にもって足ではさみ、筒状になるような方法で剥ぎ取ります。剥いだ黒皮は結束し、風にあてて充分に自然乾燥した後、貯蔵します。
  2. 2.黒皮そぞり(くろかわそぞり) 黒皮を水につけて半日ほど置き、柔らかくした後「そぞり台」の上に乗せ、1本1本丁寧に包丁で表皮を削る作業です。楮(こうぞ)は強靭さを出すために、表皮と白皮の間にある「あま皮」と言われる部分を残します。
  3. 3.煮熟(しゃじゅく) 清水の中でそぞった白皮を丁寧にふるって、不純物を洗い流す作業です。水を入れた煮釜に、水量に対してソーダ灰12%を投入し沸騰させた後、原料をほぐしながら入れていきます。約30分ごとに、ムラができないよう上下をひっくり返しながら2時間程度煮て蒸らします。煮終わった原料は、清水で塵などを丁寧に取り除いていく工程です。楮(こうぞ)は灰汁抜き(あくぬき)をしながら、1本1本塵取り作業を行います。
  4. 4.叩解(だかい) 固い木盤に原料を乗せて、入念に樫の木棒で叩いて繊維を砕きます。石州和紙では、左右六往復と上下六回返しをしながら砕いていきます。
  5. 5.数子(かずし) 水・紙料・トロロアオイの粘液を漉き船(すきぶね)に入れて、混ぜ棒で分散させて均等にします。石州和紙における紙漉き(かみすき)は、数子(かずし)、調子(ちょうし)、捨水(すてみず)の3つの基本工程で行います。数子(かずし)は、漉舟の紙料を素早くすくいあげて、簀全体を使って和紙の表面を形成する工程です。
  6. 6.調子(ちょうし) 調子(ちょうし)は紙料を深めにすくい前後に振りながら、繊維を絡み合わせるようにして和紙層をつくります。
  7. 7.捨水(すてみず) 調子の回数によって和紙の厚さが決まり、目的の厚さになったら簀の上の水や紙料など余分なものを一気にふるって捨てる工程が捨水(すてみず)です。繊維と繊維をつなぎとめる作用を抄造(しょうぞう)と言い、粘着力をもたないため乾燥後は一枚ずつ剥がすことができます。
  8. 8.紙床移し(かみとこうつし) 漉いた後は簀(さく)の上にある和紙の水をよく切り、紙床台へ1枚ずつ重ねていき、移動させ一晩放置しておきます。圧縮機によって徐々に圧力をかけながら、漉上げた紙床を絞ります。
  9. 9.乾燥(かんそう) 圧搾して絞られた紙床を一枚ずつ剥がしていき、刷毛を使って銀杏の干し板に貼り付けていく作業です。湿紙を貼り付けた干し板を天日で乾燥することで、張りがあり腰のある美しい石州和紙へ仕上がっていきます。
  10. 10.選別(せんべつ) 乾燥が終わった和紙は一枚ずつ選別し、むら・厚さ・塵がはいっているものなどを丁寧に選り分け除きます。選別された良品の和紙は、使用用途に合わせて裁断し製品に仕上げます。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

工房かわひら コウボウカワヒラ

西田和紙工房 ニシダワシコウボウ

西田製紙所 ニシダセイシジョ

石州和紙久保田 セキシュウワシクボタ

Facility Information / 関連施設情報

島根県物産観光館

島根県物産観光館 写真提供:島根県

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