石州和紙 写真提供:島根県

石州和紙 セキシュウワシ

強靭さと柔軟さを兼ね備えた繊細な和紙
ユネスコの無形文化遺産に登録された貴重な技術

Description / 特徴・産地

石州和紙とは?

石州和紙(せきしゅうわし)は、島根県の西部(石見地方)で作られている和紙です。約1300年もの長い歴史をもつ伝統工芸品です。古くは平安時代の書物にも石州の名前が記されており、奈良時代に柿本人麻呂が民に「紙漉き(かみすき)を教えた」という内容が、江戸時代の書物にも登場しています。
石州和紙の特徴は、靱皮(じんぴ)繊維が平均して10ミリほどの長さがあり、絡みやすい楮(こうぞ)の性質を生かしている点です。完成品の楮紙は折ったり揉んだりしても強く、洋紙と比較しても丈夫な構造をしています。紙肌が滑らかで柔軟なため、やさしい光沢があり、特に書道用紙に適しています。石州雁皮(がんぴ)紙は、靱皮繊維の長さが平均3ミリほどで粘着性がある雁皮を使用した和紙で、最も繊細で虫害に強く、湿った状況においても丈夫です。完成した雁皮紙は光沢があり半透明に仕上がり、書画用紙や賞状用紙、染め紙、便せんなどまで多種多様に製品化されています。
なお、石州和紙の指定要件は下記になります。
●技術・技法
1、抄紙は、次の技術又は技法によること。
①「流し漉き」又は「溜め漉き」によること、②簀は、竹製またはかや製のものを用いること、③「ねり」は、トロロアオイを用いること
2、乾燥は、「板干し」又は「鉄板乾燥」によること
●原材料
主原料は、コウゾ、ミツマタ又はガンピとすること
以上の指定要件を満たし、かつ製造産地の協同組合の検査に合格してはじめて経済産業大臣指定伝統的工芸品「石州和紙」を表示することができます。
●製品
技術・技法と原料を用いた紙もしくは、紙製品が対象になります。

単なる石州和紙は、上記の技術・技法と原料にとらわれない石見地方(石州)で、製造された紙もしくは、紙製品のことです。

History / 歴史

1798年(寛政10年)発刊の「紙漉重宝記」によると、704年~715年(慶雲元年~和銅8年)に石見の国の守護であった柿本人麻呂が民に紙漉き(かみすき)を教えたという記述があります。島根県西部の石見地方では、それから約1300年の間石州和紙が漉き続けられてきました。
江戸時代に大阪の商人は石州和紙を帳簿として使用しており、商品にとって何より大切な顧客台帳を記す和紙として利用していました。火事が起こった場合でも、顧客台帳を井戸になげこんで焼失をまぬがれ、井戸から引き揚げても紙が破れたり溶けることがなく商売が再開できたと言われています。
1969年(昭和44年)には、石州半紙技術者会が製造する「石州半紙」が国の重要無形文化財指定を受けます。
2009年(平成21年)には、ユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約に基づいて、人類の無形文化遺産として「石州半紙」が登録されました。重要無形文化財「石州半紙」を含む伝統的工芸品「石州和紙」は現在も文化財修復用の特殊和紙として用いられ、1300年続く文化として若手職人に受け継がれています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.原料蒸し(げんりょうむし) 強靭な和紙である石州和紙の原料は、地元で栽培された楮(こうぞ)と三椏(みつまた)、そして地元で自生している野生の雁皮(がんぴ)を使用します。斜めに鎌で刈り取られた原木は、1メートル位に押し切りして切り揃えます。切り揃えたら、木芯と表皮がはがれやすくなるようにせいろ蒸しを行います。
    原木と表皮をそれぞれの手にもって足ではさみ、筒状になるような方法で剥ぎ取ります。剥いだ黒皮は結束し、風にあてて充分に自然乾燥した後、貯蔵します。
  2. 2.黒皮そぞり(くろかわそぞり) 黒皮を水につけて半日ほど置き、柔らかくした後「そぞり台」の上に乗せ、1本1本丁寧に包丁で表皮を削る作業です。楮(こうぞ)は強靭さを出すために、表皮と白皮の間にある「あま皮」と言われる部分を残します。
  3. 3.煮熟(しゃじゅく) 清水の中でそぞった白皮を丁寧にふるって、不純物を洗い流す作業です。水を入れた煮釜に、水量に対してソーダ灰12%を投入し沸騰させた後、原料をほぐしながら入れていきます。約30分ごとに、ムラができないよう上下をひっくり返しながら2時間程度煮て蒸らします。煮終わった原料は、清水で塵などを丁寧に取り除いていく工程です。楮(こうぞ)は灰汁抜き(あくぬき)をしながら、1本1本塵取り作業を行います。
  4. 4.叩解(だかい) 固い木盤に原料を乗せて、入念に樫の木棒で叩いて繊維を砕きます。石州和紙では、左右六往復と上下六回返しをしながら砕いていきます。
  5. 5.数子(かずし) 水・紙料・トロロアオイの粘液を漉き船(すきぶね)に入れて、混ぜ棒で分散させて均等にします。石州和紙における紙漉き(かみすき)は、数子(かずし)、調子(ちょうし)、捨水(すてみず)の3つの基本工程で行います。数子(かずし)は、漉舟の紙料を素早くすくいあげて、簀全体を使って和紙の表面を形成する工程です。
  6. 6.調子(ちょうし) 調子(ちょうし)は紙料を深めにすくい前後に振りながら、繊維を絡み合わせるようにして和紙層をつくります。
  7. 7.捨水(すてみず) 調子の回数によって和紙の厚さが決まり、目的の厚さになったら簀の上の水や紙料など余分なものを一気にふるって捨てる工程が捨水(すてみず)です。繊維と繊維をつなぎとめる作用を抄造(しょうぞう)と言い、粘着力をもたないため乾燥後は一枚ずつ剥がすことができます。
  8. 8.紙床移し(かみとこうつし) 漉いた後は簀(さく)の上にある和紙の水をよく切り、紙床台へ1枚ずつ重ねていき、移動させ一晩放置しておきます。圧縮機によって徐々に圧力をかけながら、漉上げた紙床を絞ります。
  9. 9.乾燥(かんそう) 圧搾して絞られた紙床を一枚ずつ剥がしていき、刷毛を使って銀杏の干し板に貼り付けていく作業です。湿紙を貼り付けた干し板を天日で乾燥することで、張りがあり腰のある美しい石州和紙へ仕上がっていきます。
  10. 10.選別(せんべつ) 乾燥が終わった和紙は一枚ずつ選別し、むら・厚さ・塵がはいっているものなどを丁寧に選り分け除きます。選別された良品の和紙は、使用用途に合わせて裁断し製品に仕上げます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

工房かわひら コウボウカワヒラ

西田和紙工房 ニシダワシコウボウ

西田製紙所 ニシダセイシジョ

石州和紙久保田 セキシュウワシクボタ

石見の風土を生かした特徴ある和紙を追い求め、先人たちが残してくれた石州半紙の技術・技法を守り続け現在の生活様式にマッチできる和紙を漉き続けたいと思っております。 そして、今後の石州の伝承者育成に人生を捧げます。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

島根県物産観光館

島根県物産観光館 写真提供:島根県

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