土佐和紙写真提供:高知県

土佐和紙 トサワシ

薄く繊細でありながら丈夫で、しなやかな風合いを持つ土佐和紙。楮・三椏・雁皮などの植物繊維と清流の恵みを生かし、土佐典具帖紙をはじめ約300種類もの多彩な和紙が作られています。1976年(昭和51年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

土佐和紙とは?

土佐和紙(とさわし)は、高知県土佐市やいの町を中心に作られている和紙です。楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などを原料とし、仁淀川をはじめとする豊かな水に恵まれた環境の中で、多彩な紙づくりの技術が受け継がれてきました。1976年(昭和51年)12月15日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

土佐和紙の特徴は、用途に応じてさまざまな種類の紙が作られていることです。薄くて丈夫な紙から、書道用紙、障子紙、襖紙、包装紙、美術用紙まで幅広く生産されており、なかでも「土佐典具帖紙」は、極めて薄く漉き上げられる和紙として知られています。

土佐典具帖紙などの薄い和紙は、楮の長く強い繊維を均一に分散させ、高度な紙漉きの技術によって仕上げられます。その薄さと強さを生かし、現在では美術品や文化財、書籍などの修復・保存にも用いられ、国内だけでなく海外でも使用されています。

かつては財布や薬入れ、提灯など生活に身近な製品にも使われてきました。現在では書道、美術、版画、包装、インテリア、日用品など用途が広がり、伝統的な手漉き和紙から機械抄きの紙まで、多様な土佐和紙が作られています。

History / 歴史

土佐和紙の歴史は千年以上に及びます。927年(延長5年)に完成した「延喜式」には、紙を朝廷へ納める主要な産地の一つとして土佐国の名が記されており、平安時代にはすでにこの地域で紙づくりが行われていたことが分かります。

930年(延長8年)には、歌人として知られる紀貫之が土佐国司として赴任し、紙づくりを奨励したと伝えられています。こうしたことから、土佐では古くから豊富な水や楮などの原料を生かした製紙が発展してきたと考えられています。

16世紀末には、現在のいの町成山で、草木を使ってさまざまな色に染めた「土佐七色紙」が作られるようになりました。1601年(慶長6年)には、土佐藩主・山内一豊が土佐七色紙を幕府へ献上し、成山は御用紙の産地として保護されました。江戸時代を通じて、土佐和紙は藩の重要な特産品として発展していきました。

幕末の1860年(万延元年)には、伊野の吉井源太が大型の簀桁(すけた)を考案し、紙の生産性向上に貢献しました。さらに明治時代には技術改良が進み、1880年(明治13年)頃には吉井源太の指導のもと、極めて薄い「土佐典具帖紙」が作られるようになりました。明治中期には高知県の和紙生産は全国有数の規模へと発展しました。

その後も用途や技術の多様化が進み、土佐和紙は書道用紙や障子紙だけでなく、美術用紙、版画用紙、文化財修復用紙などにも用いられるようになりました。

1976年(昭和51年)12月15日には、土佐和紙が国の伝統的工芸品に指定されました。現在も土佐市やいの町を中心に、長い歴史の中で培われてきた紙漉きの技術が受け継がれています。

Production Process / 制作工程

土佐和紙 - 制作工程

  1. 1. 煮る 土佐和紙の原料には、主に楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物繊維が用いられます。紙の種類や用途によって原料や処理方法は異なりますが、楮の場合は樹皮の黒い外皮などを取り除き、白い繊維部分を水にさらしてから煮る工程へ進みます。

    原料は、ソーダ灰や消石灰などのアルカリ性の薬剤を加えた水で煮ます。これによって、繊維同士を結びつけている成分や不純物を取り除き、繊維をほぐしやすい状態にします。煮上がった原料は十分に冷まし、次の水洗いの工程へ進めます。
  2. 2. 水洗い・さらし 煮た原料を清らかな水で丁寧に洗い、煮る工程で残った不純物やアルカリ分などを取り除きます。原料を水中に薄く広げながら洗うことで、繊維を傷めないように汚れを落としていきます。

    その後、必要に応じて流水や日光などを利用して「さらし」を行い、原料の色を整えます。紙の種類や仕上がりに応じて処理方法は異なり、原料本来の色合いを生かす場合もあります。
  3. 3.ちり取り 水洗いとさらしを終えた原料には、表皮の一部や節、細かな異物などが残っていることがあります。「ちり取り」では、これらを職人が目で確かめながら、一つひとつ手作業で丁寧に取り除きます。

    細かな不純物まで取り除くことで、紙面を均一に整え、用途に適した美しい和紙に仕上げるための準備を行います。
  4. 4.たたく ちり取りで余分なものを取り除いたら、今度は繊維を叩く作業です。繊維は広げて叩くのではなく、団子状に丸めて、棒を使って叩いていきます。最近では、機械を使って打解作業を行うことも多くなってきました。打解を行うのは、紙漉き(かみすき)の際に、繊維を分解しやすくするためです。しっかりと叩いた繊維は、水に入れるだけでもふわっと広がります。
  5. 5.こぶり 十分に打解した紙料を「こぶり篭」に入れて水中に沈め、かき混ぜながら繊維を均一に分散させます。
  6. 6.紙漉き(かみすき) 繊維の状態を整えたら、いよいよ紙漉きの工程に入ります。まず、漉き槽(すきぶね)に水と紙料を入れ、トロロアオイやノリウツギなどから採った粘液「ねり」を加えます。「ねり」には、繊維を水中に均一に分散させるとともに、水の抜け方を調整する働きがあります。

    紙の種類や気温、水温などによって「ねり」の効き方は変わるため、職人はその日の状態を見ながら量を調整します。こうして紙料を均一に分散させた後、簀桁(すけた)を使って紙を漉いていきます。

    手漉き和紙の代表的な方法の一つが「流し漉き」です。簀桁で紙料を汲み込み、前後左右に揺り動かしながら繊維を均一に絡ませ、余分な水を流し落として紙層を形成します。この作業を繰り返すことで、薄くても強度のある均一な紙に仕上げていきます。

    一方、「溜め漉き」では、簀桁に紙料を一度汲み込み、水を簀から落としながら紙層を形成します。紙料の濃度や汲み込む量を見極めながら、均一な厚さに仕上げることが重要です。
  7. 7.脱水 そして、漉いた原料はしっかり水を抜きます。漉いた紙の上に重石をのせ一晩置いてから、圧搾機(あっさくき)で脱水するのが一般的です。一昔前までは、テコが使用されていました。
  8. 8.乾燥 脱水が終わったら、しっかりと乾燥させて和紙へと仕上げていきます。現在乾燥の方法として用いられるのは、天日乾燥と火力乾燥の2通りです。よく行われている天日乾燥は、干板(ほしいた)に1枚ずつ丁寧に張り付けていき、日光により乾燥させる方法になります。
  9. 9.断裁・荷造り 乾燥を終えた和紙は、一枚ずつ状態を確認し、用途や製品の規格に合わせて必要な大きさに切り揃えます。紙の端を整え、厚みや汚れ、傷などを確認しながら仕上げていきます。

    断裁後は、一定枚数ごとに紙をまとめて包装し、出荷の準備を行います。和紙の取引では「帖(じょう)」「束(そく)」「締(しめ)」「丸(まる)」などの単位が用いられることがありますが、まとめる枚数や荷姿は紙の種類や用途、製造者によって異なります。

    最後に、製品ごとの規格に合わせて包装・荷造りを行い、出荷します。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

株式会社モリサ カブシキガイシャ モリサ

株式会社 尾﨑製紙所 カブシキガイシャ オサキセイシショ

土佐和紙工房 パピエ

土佐和紙 井上手漉き工房 トサワシ イノウエテスキコウボウ

土佐和紙 井上手漉き工房

Facility Information / 関連施設情報

いの町紙の博物館 - 土佐和紙伝統産業会館

Other Traditional Japanese paper / 和紙一覧

Other Crafts Made in Kochi / 高知県の工芸品