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弓浜絣 ユミハマガスリ
鳥取の由緒ある伝統工芸品
庶民の生活に寄り添った蒼の織物
Description / 特徴・産地
弓浜絣とは?
弓浜絣(ゆみはまがすり)は鳥取県境港市周辺で作られている織物です。「弓浜」の由来は、「弓ヶ浜」という鳥取県米子市から境港市にかけて20kmにも及ぶ弓状に湾曲した沿岸の名称からきています。
「絣」はあらかじめ染め上げた糸「絣糸」を織って作る織物で、藍色の糸で紡いだものを生地の土台にして、その上に白色の糸でさまざまな模様を編んでいきます。少し藍の色がにじんだ白色の糸に風情があり、古くから地元の人々に親しまれていました。
弓浜絣の特徴は、ざっくりとした布の風合いと素朴な柄です。当時は農民の自給用衣服のニーズが高く、動きやすくて洗いやすい服が好まれており、弓浜絣が農業を生業とする人々の暮らしに合っていました。
最近では、巾着袋やコースター、テーブルセンターやコインケースなどの小物も作られ、広く人々の生活に取り入れられやすくなりました。
History / 歴史
弓浜絣の歴史は江戸時代中期の1751年(宝暦元年)頃まで遡ります。当時から鳥取県と島根県を含む山陰地方は、広瀬絣・弓浜絣・倉吉絣などが絣を織る技術が発達しており、絣の名産地として名を馳せていました。
中でも、農民などの一般市民の生活に取り入れられてきた弓浜絣は最も親しみやすく重宝された絣です。当時の弓浜絣の先駆者は地元に住む農家の主婦たちで、自分たちが着る仕事着、晴れ着、布団などの生活雑貨を、本業である木綿織りの傍らで弓浜絣を制作していたことが発端でした。
江戸時代から大正時代にかけて全盛期を迎え、鳥取は全国で3位の絣織物生産地として栄えました。1975年(昭和50年)に無形文化財に指定されてからは、絣を保存する会や絣を制作する工房が各地で設立され、弓浜絣の保存や周知に一役買っています。
Production Process / 制作工程
- 1.よこ糸整経 絣作りの基本の作業です。よこ糸を必要なだけ種糸に合わせて張っていきます。綿をほぐして糸車にかけ、1本1本丁寧に紡いだものを使います。紡ぎ方でどんな糸になるか変わってくるため、職人技ともいえる細かな調整が必要です。
- 2.原図作成 絣のデザインを決める重要な工程です。絣模様は和紙に原寸大に描くため、精密さが求められます。デザインは、家族の無病息災や五穀豊穣等を願うためのモチーフになるものが施されることが多いです。
- 3. 種紙(たねがみ) 一度にたくさんの絣を織るときは、原紙を作っておくのが一般的です。しぶ紙にデザインを彫って抜いておきます。
- 4.原糸作り 絣作りで重要な土台となる糸を作ります。糸が伸びると絣の模様や出来上がりが崩れてしまうため、しっかりと小枠に固定させることがポイントです。
- 5.絵台の糸かけ 絵をつける台に糸をかけます。柄にしたい絵の幅に合わせて同じ密度で糸をかけなくてはならないため、長年の経験から培った感覚が非常に重要です。
- 6.墨付け
絣で織る模様の型紙を合わせて、工程5でかけた糸に墨で目印になる色を付けていきます。
- 7.よこ糸括り(よこいとくくり) 墨を付けた種糸で、墨の部分を目印にしてよこ糸を括っていきます。
- 8.染色 弓浜絣の特徴である「藍色」に染め上げます。染物において一般的には「化学藍」という藍が使われますが、弓浜絣ではさらなるこだわりがあります。発酵建ての希少な藍と化学藍を混ぜて藍を建てる技法や、灰汁発酵建て(はいじるはっこうだて)と呼ばれる石灰に藍を混ぜて作る技法を用いて、昔ながらの藍のたて方で弓浜絣の独特の風合いを表現します。
- 9. 絣括り解き(かすりくくりとき) 染めあがったら絣の括りを解きます。括りを解いた後はあく出しをして、生地を洗って乾かします。
- 10.絣よこ糸割り(かすりよこいとわり) 括りを解いた絣の種糸を取って、枠に巻き取ります。
- 11.よこ糸管巻き(よこいとくだまき) 絣を機織する際に必要な糸の長さになるように、糸を丁寧に巻き取っていきます。ようやく織るための準備が整い、縦糸と合わせて機織に入ります。
Representative Manufacturers / 代表的な製造元
工房ゆみはま ユミハマ
古くから伯州棉で名高い弓ヶ浜地方では、農家の娘や主婦たちが心を込めて、木綿の絣を織っていました。当工房では、古来からの手絞りにて正藍で染め、高機(はた)で織る伝統の仕事を継承しています。
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定休日日・祭日
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営業時間10:00~17:00
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住所
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HP
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電話0859-45-7610
南家織物 ナンカオリモノ
弓浜絣の伝統を守るとともに、地場産業としても守り育てていきたいと思っています。後継者の育成や、浜綿をつかった地域活性化のための事業など、伝統工芸士として地域のために貢献できればと考えています。
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創業1976年 (昭和51年)
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定休日不定休
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代表南家 均
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営業時間10:00~17:00
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住所
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HP
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電話0859-42-3233
Facility Information / 関連施設情報
弓浜がすり伝承館
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住所
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電話0859-45-0926
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定休日土曜日、日曜日、祝日、年末年始
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営業時間8:30 ~ 17:15
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アクセスJR境線「中浜駅」より徒歩10分
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