奈良筆 写真提供:奈良県

奈良筆 ナラフデ

日本の筆作りの礎と匠の技
十数種類の獣毛が織りなす絶妙なしなやかさ

Description / 特徴・産地

奈良筆とは?

奈良筆(ならふで)は、奈良県奈良市・大和郡山市周辺で作られている筆です。奈良は筆作りの発祥の地と言われています。現存する日本最古の筆は、聖武天皇の御物(ごもつ)である17点の「天平筆(てんぴょうひつ)で、正倉院に保管されています。
奈良筆の特徴は、十数種類の動物の毛を原料とし、弾力や長さなど異なる毛質を巧みに組み合わせる「練り混ぜ法(ねりまぜほう)」という伝統的な技法で作り上げていることです。
原料に使用される動物の毛は、リス、ムササビ、イタチ、タヌキ、ヒツジ、ウマ、シカ、ウサギなどです。獣毛は種類だけでなく、一頭一頭の毛質の個体差、使用する部位や採取の時期などによっても、仕上がりの筆の質に影響を与えます。筆匠(ひっしょう)たちは、毛の特質を読んで修整を繰り返しながら、千差万別の毛質によって偏りが出ないように何度も練り混ぜて一本の筆に仕上げていきます。
「練り混ぜ法」は原料となる獣毛を別々に水に浸して固め、原料の特長によって配分や寸法を決めて練り混ぜる技法で、絶妙な穂先に仕上がります。

History / 歴史

筆の歴史は古く、約2300年前の中国で、将軍が秦の始皇帝に獣毛の筆を献上したのが始まりと言われています。中国から日本に筆が伝わったのは飛鳥時代初期で、中国の文化とともに中国製の筆が多く輸入されるようになりました。
奈良で筆作りが始まったのは今から1200年ほど前に遡ります。806年(大同元年)に空海(後の弘法大使)が遣唐使として唐から帰国した際に、中国の筆の製造技術を持ち帰り、大和の坂名井清川という人に伝授したのが始まりと言われています。
当時の奈良では多くの学僧が仏教を学んでおり、高僧や学僧を中心に奈良で作られた筆が広まっていきました。やがて、かな文字が使われるようになると、丸い線を自在に描けるより繊細な筆が求められるようになります。
そこで、筆匠(ひっしょう)たちにより、限られた種類の獣毛の長所を引き出して巧みに組み合わせることで、現在の奈良筆の礎(いしづえ)が確立されました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1. 毛組(けぐみ)/選別(せんべつ) 原料となる毛を、筆の太さ、長さ、柔らかさなどの用途別に分類し、さらに、命毛(いのちげ)、のど毛、腹毛、腰毛に選別します。筆は先端の部分から、「命毛」・「のど」・「腹」・「腰」と読んでおり、腰に近い部分ほど、 弾力のある毛を使用します。筆の原毛は、柔らかさと硬さが程よいバランスで、墨の含みがよいものを10種類ほど選びます。
  2. 2. 抜き上げ(ぬきあげ) 原毛に櫛を入れて、根元の綿毛を取り除き、板の上で広げてよく混ぜ合わせます。
  3. 3. 毛もみ(けもみ)/つめ抜き(つめぬき) 原毛に籾殻(もみがら)を焼いてできた灰をかけ、炭火などで温めてよく揉んで油分をとって鹿の皮で巻きます。さらに、毛の癖を直し、指で少しずつ余分な毛を抜き取って毛先を揃える「つめ抜き」を行います。
  4. 4. 先揃え(さきそろえ)/逆毛取り(さかげとり) 手金という道具の上に毛をまとめて置き、毛の先端を手板で叩いて、振動を利用して毛先をそろえる「先揃え(さきそろえ)」の後に、はんさし(刃のない小刀のような道具)を使って、根元と毛先が逆になった毛を抜いていく「逆毛取り(さかげとり)」を行います。
  5. 5. 平目(ひらめ) 「先揃え」が終わった毛を水に浸して平らに整えます。
  6. 6. 形づけ(かたちづけ) 命毛、のど毛、腹毛、腰毛をそれぞれ必要な長さ切り、長短の毛を段になるように組み合わせて、筆の形を整えます。
  7. 7. 練り混ぜ(ねりまぜ) 「形づけ」した毛のムラでできないように、先の悪い毛を取り除きながら何度も入念に練り混ぜていきます。
  8. 8. 芯立て(しんたて) 練り混ぜた毛に布海苔(ふのり)という糊を加えて芯毛(しんげ)を作ります。次に、コマという小さな筒に通して太さを決めて自然乾燥させます。
  9. 9. 上毛着せ(うわげきせ) 「化粧毛(けしょうげ)」というきれいな毛を薄く延ばし、芯毛の上に巻きつけてさらに乾燥させて穂を作ります。
  10. 10. 苧締め(おじめ) 乾燥した穂首(ほくび)を麻糸で縛り、穂尻(ほじり)を焼きゴテで焼き固めて穂を完成させます。
  11. 11. 繰込み(くりこみ) 筆軸(ふでじく)を小刀で削って穂首の太さに調整し、接着剤で穂首をしっかりと接着します。
  12. 12. 仕上げ(しあげ) 筆軸に取り付けた穂を布海苔(ふのり)に浸して内部まで浸透させます。その後、麻糸を巻いて余分な布海苔を絞り出し、形を整えて乾燥させます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

奈良筆 田中 ナラフデ タナカ

ひとつひとつ手作りの伝統工芸品 奈良筆を製作し、自店でのみ販売しています。多くの方に筆文字楽しんで頂きますように。

株式会社あかしや アカシヤ

あかしやは、古くより大和の国において南都七大寺の筆司として筆造りに従事して参りましが江戸中期に初代の当主が筆問屋として、あかしやの看板をあげ現在まで約380年の伝統を誇り、筆の持つ文化を継承する筆専門メーカーです。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

奈良県商工観光館 - 展示即売場(きてみてならSHOP)

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