土佐打刃物 写真写真:高知県

土佐打刃物 トサウチハモノ

熟練の鍛冶師による「自由鍛造」
冴えわたる切れ味と高い耐久性

Description / 特徴・産地

土佐打刃物とは?

土佐打刃物(とさうちはもの)は、高知県の香美市・南国市・土佐市・いの町・須崎市といった高知県東部から中部にかけての一帯で作られている金工品です。
高知県は旧土佐国であったことから「土佐打刃物」と呼ばれてきました。ただし、定められた工程で作られた刃物しか「土佐打刃物」を名乗ることはできません。
土佐打刃物の特徴は、高温に熱した金属材料をたんねんに叩いて延ばし広げることによって自由自在に形を作る「自由鍛造」です。鍛冶師は、原寸と形を書いた注文書だけで注文品を造ることができます。したがって、用途に応じた少量多品種聖堂が可能です。その代わり、決まった型がないため、鍛冶師には熟練が求められます。また、土佐打刃物は、山林用・農業用の実用的な道具に端を発しているため、切れ味だけでなく、耐久性や手入れのしやすさも特徴の一つです。主な製品には、包丁、鎌、鉈(なた)、斧(おの)、鍬(くわ)などがあります。

History / 歴史

土佐の国・高知県は良質の木材に恵まれ、古くから木の伐採に必要な打刃物が造られました。また、刀鍛冶の技術は、農具・山林用の打刃物の技術にも影響を与え、多くの鍛冶屋が土佐国内に存在していました。
鎌倉時代後期の1306年(徳治元年)、大和国(奈良県)から土佐に移り住んだ刀鍛冶・五郎左衛門吉光派が1580年(天正8年)まで活躍し、戦乱が続く時代に武具刀剣類を供給していました。1590年(天正18年)の記録によると、土佐国には399軒の鍛冶屋がいたことが記載されています。
土佐打刃物の本格的な発展は、江戸時代初期、1621年(元和7年)の土佐藩による元和改革に始まります。財政が逼迫した土佐藩は新田開発や森林資源活用に乗り出した結果、農業・林業用打刃物の需要が増え、打刃物の生産量と品質が飛躍的に向上しました。このときの鍛冶師の研鑚が「土佐打刃物」を生み出しました。
江戸時代から続く土佐打刃物の技術と伝統は、進化を遂げながら現代まで受け継がれています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.炭切り(すみきり) 炭をちょうどよい大きさに割ります。鞴(ふいご)で火床(ほくぼ)(鋼や鉄を熱する高温の釜)に風を送り、自由自在に火を操るためには、一定の大きさに炭を切ることが重要です。「炭切り三年」と言われるほど熟練を要する作業になります。
  2. 2.鋼(はがね)・鉄づくり 素材となる鋼と鉄を作ります。土佐打刃物の特徴は、鉄に鋼を割こませる工法にあります。まず、刃先になる鋼づくりをします。その後、鉄に割り込みを入れ、鋼を間にはさみ軽く打ちこみます。接着剤としてホウ酸をかけて火に入れます。
  3. 3.鍛接(たんせつ) 鋼と鉄を一体化させる作業です。鋼と鉄を火床で熱し、叩いて接合します。硬い鋼をしなやかな鉄ではさむことによって、鋼が折れることを防ぎます。最近は鋼と鉄があらかじめ一緒になっている力材(りきざい)を使う産地もあります。
  4. 4.鍛造(たんぞう)・整形 鍛接した刃物を火床で熱します。熱くなり全体が赤くなった刃物を火床から取り出し、金床(かなどこ)の上に置き、ベルトハンマーで叩きながら刃物の形を作っていきます。金床は材料を叩く際の台座、ベルトハンマーとはベルト式の高速回転する機械ハンマーのことです。昭和初期に開発されたベルトハンマーのおかげで、生産量は大幅に増加しました。細かいところは昔ながらの槌(つち)で形を整えます。材料を熱しハンマーで自由自在に形を作っていく鍛造方法を「自由鍛造」と言います。かなりの熟練を要します。
  5. 5.荒研ぎ(あらとぎ) 鍛造した刃物をグラインダーなどで削り、均整のとれた形に整えます。グラインダーは高速回転によって刃物を研いだり磨いたりする機械です。「荒研ぎ」は「生研ぎ(なまとぎ)」とも呼ばれます。
  6. 6.泥塗り(どろぬり) 「焼入れ」をよくするため、刃物に泥を均一に塗ります。
  7. 7.焼入れ(やきいれ)・焼戻し 刃物の硬度を決める重要な作業が「焼入れ」です。刃物を焼入れ釜で770℃~800℃で熱したのち、急速に水で冷すことによって硬くなります。
    硬度だけでは刃物に力が加わるときに折れてしまうため、ねばりも必要です。ねばりをつける作業が「焼戻し」です。「焼戻し」には約170℃の低温で焼入れます。熱くした重油系の油を使った焼戻し釜でじっくり熱します。「焼戻し」のあとはゆっくりと自然に冷まします。
  8. 8.歪取り(ひずみとり) 「焼入れ・焼戻し」によって生じる全体のひずみを、ハンマーで叩いて取ります。刃物の表と裏をたんねんに叩きます。
  9. 9.刃付け・仕上げ 最後の仕上げが刃付けです。あげ刃、中研ぎ(なかとぎ)、小刃(こば)付けとていねいに研いでいきます。
    他の産地では分業が進むなか、一貫した工程で行う土佐打刃物への評価が高まっています。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

有限会社 トヨクニ トヨクニ

西山商会 ニシヤマショウカイ

弊社は、400年以上の伝統を持つ土佐打刃物を製造し全国に販売致しております。職人が我が子を育てるように、一本一本真心込めて鍛造した温かみのある逸品でございます。

迫田刃物 サコダハモノ

迫田刃物は昔ながらの鉄と鋼をくっつける(又は合わせる)鍛造技法にこだわりをもっています。 独自に高めてきた鍛造技法は、鋼の質を損なわずより高い品質の刃物を造るため、火造り(原型作成)、焼入れ、焼き戻し等の温度管理を徹底、常により良い製品造りを目指しています。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

高知ぢばさんセンター常設展示場

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