越前和紙

越前和紙 エチゼンワシ

楮・三椏・雁皮などの植物繊維を用い、流し漉きや溜め漉きによって仕上げる越前和紙。生成りの優雅な色合いと、しなやかさ、強靱さを兼ね備え、奉書紙から美術用紙まで幅広く受け継がれています。1976年(昭和51年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

越前和紙とは?

越前和紙(えちぜんわし)は、福井県越前市の五箇地区を中心に作られている和紙です。和紙には、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物の靭皮繊維が主な原料として用いられます。
自然な生成り色と温かみのある肌合い、丈夫さ、用途に応じた多彩な紙質が特徴です。
楮(こうぞ)は、太くて長い繊維を持ち、強い和紙ができ、書道用紙や人形、工芸品をつくる和紙の原料になり、三椏(みつまた)は、表面が滑らかになり光沢をもつ和紙ができるので、襖紙や印刷用紙の原料となっています。雁皮(がんぴ)は栽培が難しく自生しているものを使用するため、昔から使われており、虫害にかかりにくいため保存される和紙の原料に使用されています。
楮(こうぞ)紙はちりめん状のシボがつくられる和紙で、免状用紙や茶席の用紙に最適です。その他の越前和紙の種類としては、公家、武家、神社の公用紙として使用される奉書紙(ほうしょがみ)で、のし紙や免状用紙にもなります。

History / 歴史

越前和紙 - 歴史

越前和紙には約1,500年の歴史があるとされ、5世紀末頃に紙祖神「川上御前」が紙漉きの技を伝えたという伝説が残っています。史料上では、奈良時代には越前国で紙が生産されていたことが確認できます。正倉院文書には奈良時代の「越経紙」など越前の紙に関する記録が残り、730年(天平2年)の「越前国正税帳」には越前国で作られた紙が現存しています。
越前市五箇地区では、紙祖神「川上御前」を祀る岡太神社・大瀧神社の春例祭「神と紙のまつり」が毎年行われています。
当初、写経用紙として生産された越前和紙は、公家や武家の間で紙の需要が高まると幕府や領主の保護を受けて発展します。越前奉書などの品質の高い和紙の産地として、紙漉き技術や生産量が向上しました。江戸時代には福井藩の藩札用紙も漉かれるなど、越前和紙は紙幣用紙とも深く関わるようになりました。
明治時代には、太政官札など新政府の紙幣用紙にも越前の製紙技術が活用され、近代の紙幣用紙製造にも大きな影響を与えました。
越前和紙は、古くから公文書や書画、紙幣用紙など、日本の社会や文化を支えるさまざまな用途に用いられてきました。現代では、小さな名刺、ハガキなどの日常使いのものから、越前奉書紙など伝統と格式の高い紙まで幅広く作られています。
さらに、伝統的な紙種では「越前奉書」が2000年(平成12年)、「越前鳥の子紙」が2017年(平成29年)に国の重要無形文化財に指定されています。

Production Process / 制作工程

越前和紙 - 制作工程

  1. 1.煮沸(しゃふつ) 楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)などの原料の皮を計り、煮窯の1回分を約10時間ほど水に浸します。原料を水に浸して柔らかくすることで、煮やすくするためです。釜に苛性ソーダ・ソーダ灰を入れて混ぜ、煮沸します。原料の種類や配合、完成する紙の用途などに応じて、ソーダ灰の量や煮沸の時間の調整が必要です。煮沸によって、皮に含有する脂肪やタンニンなどの不純物を溶かします。
  2. 2.塵除(ちりより)・精洗 皮を水に入れて洗い、煮沸によって溶けた不純物や原料に混じっていたゴミを洗い流します。適切な水洗いや塵を除くことが、できあがる紙の品質につながるのです。原料になる木が剪定された時についた傷なども、手で丁寧に取り除きます。
  3. 3.叩解(こうかい) 叩解(こうかい)は結束しているセルロースの集合体を叩きほぐし、繊維を細かく柔軟にする工程です。よく叩解された繊維は接着がよいため、破れや引っ張りに強くなります。古来は皮を叩き盤の上で棒で打ち叩く紙叩きがされていましたが、現在はほとんどビーターによる叩解です。原料のもつ特性を知ったうえで、最も適した叩解の技法を選ぶ必要があります。
  4. 4.漂白(ひょうはく) そのまま自然色を活かす場合もありますが、完成する紙にあわせて漂白や染色を行います。
  5. 5.漉槽(すきぶね) ノリウツギ・トロロアオイなどの「練り(ねり)」を選んで漉槽に入れます。練りの種類を見て原料に適した練りを使ったり、混ぜて使用することが大切です。
  6. 6.抄造(しょうぞう) 漉舟(すきぶね)をつかって、水中に紙料を散らして簀桁(すげた)ですくう、「漉(す)く」作業を行います。主な技法は、「流し漉き(ながしずき)」や「溜め漉き(ためずき)」、「墨流し」などです。出来上がる紙や原料によって漉き方が異なります。紙の厚さを均一に仕上げるには、熟練した職人の技術が必要です。漉いた紙は、糸を挟みながら同じ方向に重ねていきます。
  7. 7.圧搾(あっさく) 漉いた紙は、形を損なわないよう緩やかに圧力をかけて圧搾(あっさく)し、水分をとります。現在主に使われているのは、上下に圧力がかけられる圧搾機です。
  8. 8.ヘぎわけ 圧搾が終わったら、挟んでいた糸を取り、一枚ずつ丁寧に紙を剥がしていきます。古来は天日干しでしたが、現在は室(ムロ)を使った乾燥です。湿紙を1枚ずつ板に刷毛で張り付けて、干して乾かします。干し板は紙肌の良し悪しを決めるため、丁寧な取り扱いが必要です。美術工芸紙など鉄板に張り、局紙は枠張りにして蒸気でプレス乾燥する場合が多くなっています。
  9. 9.艶出(つやだし) 乾燥が終わった紙は裏表を調べ、塵がついたり傷ついたものがないかを選別します。艶出しには、ロール掛けが必要です。ロール掛けは、ドーサ引きという、にじみ止め処理を施した後に行います。艶出しができたら、規格寸法に従って断裁機を使って断裁して仕上げです。古来より手裁ちによって断裁していました。最後に越前和紙にふさわしい仕立て種類ごとに包装します。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

株式会社 杉原商店 カブシキガイシャ スギワラショウテン

瀧 株式会社 タキ カブシキガイシャ

日本古来の和紙の里で、紙漉きから印刷まで一貫生産で紙づくりにはげんでおります。紙漉きから加工まで、独自な紙製品の受注生産や、ネットショップの運営をしています。

Facility Information / 関連施設情報

越前和紙の里

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