越前箪笥 写真提供:越前市

越前箪笥 エチゼンタンス

指物師の技が随所に光る重厚な漆塗りの箪笥
ユニークな魔よけの金具が魅力

Description / 特徴・産地

越前箪笥とは?

越前箪笥(えちぜんたんす)は、福井県越前市や鯖江市周辺で作られる、ケヤキやキリなどの材木を鉄製金具や漆塗りで装飾している箪笥です。耐久性に優れ、硬くて木目が美しいケヤキと、湿気を通さず、割れや狂いが少ないために高級箪笥の材料として重宝されてきたキリを主に使用します。
ケヤキやキリを自然乾燥させ、釘などを使わず木材を組み合わせて、強度を高める指物技法(さしものぎほう)で枠組み箪笥や板組箪笥を作ります。箪笥には天然の漆を使い、素朴な味わいのある拭き漆(ふきうるし)、天然の木目を活かす透明の漆を塗る春慶塗(しゅんけいぬり)、濡れたように深い黒色の漆を塗る呂色塗り(ろいろぬり)の3つの漆の塗り方があります。
越前箪笥の特徴は使い込むほどに味わい深い風合いとどっしりとした重厚感があることです。箪笥の角を保護するために付けられた金具は、魔除けとして猪目(いのめ)と呼ばれるハート型の金具になっており、金具のユニークさも越前箪笥の魅力となっています。

History / 歴史

越前箪笥 - 歴史 写真提供:越前市

現在の福井県から山形県の一部にまたがる地域に、7世紀頃に「越国(こしのくに)」と呼ばれる地域がありました。その頃の越国は漆で有名な石川県の能登や加賀も含まれ、現在の越前市のあたりは国府(こくふ:その地域の政治的中心地)であったため、さまざまな文化や技術が集まりました。
室町・戦国時代には朝倉家の府中奉行所が置かれ、指物師と呼ばれる人たちが朝倉家の茶道具を作り、指物文化が花開いていきました。
江戸時代には藩主となった本田富正公が町の整備を進め様々な技術者を集めたため、指物・漆・金具が特徴である越前箪笥が栄える下地が出来たのです。明治中期頃には本格的な箪笥職人が活躍し、今も越前市にはタンス町通りがあり、建具商や家具屋が建ち並びます。

General Production Process / 制作工程

越前箪笥 - 制作工程 写真提供:越前市

  1. 1.原木製材、乾燥 原木の丸太の年輪などを考慮しながら木材を挽き出します。越後箪笥には天然の無垢材のケヤキやキリなどを使用します。仕入れたケヤキやキリの丸太から材料になる一枚板や角材などの木材を挽き、乾燥させます。製材したばかりの木材には水分が50~60%は含まれており、そのままでは使用できません。少なすぎると膨張するので、含水率を確認しながら材質よって天然乾燥させ3~5年ほど乾かします。
  2. 2.図面引き、木取り 紙に実際に作る箪笥の図面を書き、デザインに沿って作業を進めます。まず、乾燥して使えるようになった木材から、虫食いや傷があるものを避けながら、図面に沿った厚みや幅に挽き出していきます。
  3. 3.幅はぎ、墨かけ、寸法決め 天板などに使用する板を奥行き方向に継ぎ合わせていきます。必要な部材を取るために、木材の断面である木口(こぐち)に必要な印を墨でつけていきます。越前箪笥は板の厚さの定義が決まっており、枠かまちの正面から見える幅を見つけ(みつけ)、及び正面から見える部分の奥行きは見込み(みこみ)と言います。規定の厚みになるように、手押しかんな盤やブレーナーを用いて表と裏を均等に削っていきます。
  4. 4.組手加工、仕上げ削り、仮組 指物技術が発揮される「組手加工」にも定義があります。わくかまちの接合は、釘を使わず、接合で厚さの違う部材を組み合わせやすい、平ほぞ接ぎや鬼ほぞなどによる接合と決まりがあります。引き出し部材の接合は、ほぞの先端が広がって引っ張り強度が優れている蟻組(ありぐみ)などです。
    組み手加工はまず、長手と妻手のペアを木材から選び印を付けます。木材に削り加工が行き過ぎないように、鉛筆などで仕上がり線を引き、それに合わせて叩いて「止め」を作っていきます。鋸を使い仕上がり線に沿って1mmほど余裕を持たせ切り落としていき、残した部分はのみなどを使用し誤差が生じないように丁寧に「仕上げ削り」を行っていきます。削り終えた木材を仮組し、全体象を確認し誤差があれば修正を行います。
  5. 5.本仕上げ削り、下塗り 仮組により全体像を確認したら次は「本仕上げ削り」を行います。木材の表面を再度かんなを用いて削り直します。厚みが均一になるように再度削ることによって、塗装を施した際の仕上がりが、より一層美しくなります。漆を塗る工程には「下塗り」と「上塗り」に分かれます。「下塗り」が品質を左右するため、塗りと砥ぎを何度も繰り返します。
  6. 6.本組 実際に加工を施した部材を組み合せ、最終確認を行います。
  7. 7.木地調整、下地塗り、中塗り、上塗り 「木地調整」とは塗装前に研磨をすることで、凹凸を無くし塗料の塗りむらが出ないようにします。下地が調整されたものに中塗りをすることで、きれいな上塗りになります。越前箪笥には、3つの漆塗りの技法があります。
    「ふき漆塗」は、精製していない生漆の塗付と拭き取る工程を繰り返して透塗で仕上げます。「春慶塗」は、砥または酸化鉄の弁柄(ベンガラ)で塗装前の木地の目をふさぎ表面を滑らかにする「目止め」をします。そこに水で練った砥粉(とのこ)に生漆を混ぜたさび漆をして「下塗り」をした後に、表面を削り滑らかにし、上質の生漆をゆっくり加熱して透明度を高くした透漆を塗ります。「呂塗り」は、さび漆で「下塗り」をし、黒色の漆の呂色漆で「上塗り」をして、「上塗研ぎ」、「銅摺り(どうずり)」して磨きます。
  8. 8.金具取り付け 金属製のハンマーで打ち延ばす「鍛造(たんぞう)」という技法で鉄を打ち延ばします。火床で打ち伸ばした鉄板に型紙を貼り付けて鏨(たがね)で切断し、やすりで面を整えます。切断もやすりも手作業ですることが越前箪笥の条件です。つまみなどに鋲をうち、華やかさを添える菊や蓮花の模様を刻んだ座金(ざかね)はをとりつけます。越前箪笥特有の猪目(ハート形)の金具も必須です。金具に熱を加え、生糸で焼き付けをします。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

てづくり工房まつ井 テヅクリコウボウマツイ

伝統的工芸品 越前箪笥、福井県指定郷土工芸品 武生桐箪笥をはじめ、てづくり家具の製造販売をしております。 すべての工程を一人の職人が担当しつくりあげています。どんな細かいところにも手をかけ完璧につくりあげる桐箪笥です。

有限会社 三崎タンス店 ミサキタンス

江戸時代から続く当店では、越前箪笥をはじめ、総桐たんす・一枚板テーブル・手作り家具を製造販売しています。 その他、ベッドやリビングの家具調度品、木製雑貨・木製おもちゃなども、店頭小売しています。

越前箪笥「匠」工房 小柳箪笥 エチゼンタンスタクミコウボウ オヤナギタンス

心地よい和の暮らし"をコンセプトに、日本の伝統工芸『越前箪笥』を純粋に継承しながらも、自社で培い続けてきた技術を加えることで、新しい伝統工芸品も提供しております。

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