越前焼

越前焼 エチゼンヤキ

釉薬や絵付けを控え、土そのものの素朴な表情と、薪の灰が高温で溶けて生まれる自然釉を楽しむ越前焼。よく焼き締まった丈夫な器肌と、茶褐色を基調とした温かみのある風合いが魅力です。1986年(昭和61年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

越前焼とは?

越前焼(えちぜんやき)は、福井県越前町を中心に、福井市、越前市、あわら市、若狭町などで作られている陶器です。1986年(昭和61年)3月12日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

越前焼は、瀬戸焼、常滑焼、信楽焼、丹波焼、備前焼とともに「日本六古窯」の一つに数えられています。産地としての始まりは平安時代末期の12世紀後半にさかのぼり、現在まで長く焼き物づくりが受け継がれてきました。

伝統的な越前焼の特徴は、鉄分を含み、耐火性に優れた陶土を高温で焼き締めた、素朴で力強い風合いです。中世には釉薬を施さない焼締めが中心で、窯の中で薪の灰が器に降りかかり、高温で溶けることで自然釉が生じることもありました。

主に壺、甕、すり鉢などの生活雑器が作られ、水や酒、穀物の貯蔵、藍染めなど、暮らしのさまざまな場面で使われてきました。越前の土は粘りが強く、よく焼き締まるため、大型の壺や甕の制作にも適しています。

国指定の伝統的技法では、成形に「ねじ立て成形」、ろくろ成形、手ひねり成形、押型成形、たたら成形などが用いられます。なかでも、大型の壺や甕を作る際に用いられてきた「ねじ立て」は、越前焼を代表する成形技法の一つです。

素地には、櫛目、はり付け、へら描き、印花、突き刺し、化粧掛け、掻き落としなどの加飾を施すことがあります。また、現代の越前焼では釉薬を用いる作品も多く、藁釉、土灰釉、藁灰釉、伊羅保釉、なまこ釉、天目釉、あめ釉など、さまざまな釉調の作品が作られています。

現在では、伝統的な壺や甕に加え、食器、酒器、茶器、花器、インテリア用品など、多様な越前焼が制作されています。

History / 歴史

越前焼 - 歴史

越前地域では古くから須恵器が焼かれていましたが、10世紀初頭頃に須恵器窯はいったん途絶えました。

再び本格的な窯業が始まったのは、12世紀後半の平安時代末期です。東海地方の窯業技術を取り入れて越前窯が開かれ、現在の越前町小曽原周辺で陶器の生産が始まりました。

13世紀になると生産地域は周辺の丘陵地へ広がり、壺、甕、すり鉢などの日常雑器を中心に、水注、水瓶、経筒を納める容器なども作られました。

室町時代になると窯は次第に大型化し、生産量も増加しました。室町時代後期から戦国時代にかけては、日本海側を代表する大規模な窯業産地へ発展し、越前海岸から海上輸送によって日本海沿岸を中心とする広い地域へ製品が運ばれました。

中世の越前焼は、茶陶などの鑑賞用陶器よりも、壺、甕、すり鉢といった人々の生活に必要な器を中心に作り続けたことに特徴があります。

江戸時代に入ると、従来の焼締めに加えて、鉄分を含む赤土を表面に施したり、藁灰などを用いた釉薬で装飾したりする技法も使われるようになりました。また、江戸時代後期には連房式登り窯の技術も導入されました。

明治時代以降、水道の普及や磁器・金属製品など生活用品の変化によって、大型の甕や壺の需要が減少し、越前焼の生産は次第に衰退しました。

戦後になると、古窯跡の調査が進みました。陶磁器研究者の小山冨士夫や地元研究者の水野九右衛門らによる研究によって越前窯の歴史的価値が明らかになり、越前は瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前とともに「日本六古窯」の一つとして広く知られるようになりました。

1970年(昭和45年)から越前陶芸村の整備が進められ、産地の再興と新たな陶工の育成が図られました。

1986年(昭和61年)3月12日には、「越前焼」が国の伝統的工芸品に指定されました。さらに2017年(平成29年)には、日本六古窯が文化庁の日本遺産「きっと恋する六古窯―日本生まれ日本育ちのやきもの産地―」に認定されています。

現在も、伝統的な焼締めやねじ立ての技術を受け継ぎながら、新しい造形や釉薬表現を取り入れた越前焼が作られています。

Production Process / 制作工程

越前焼 - 制作工程

  1. 1.底作り 越前焼を製作するためには、まずは「採土(さいど)」が必要です。これは土をとることで、主に「赤べと」「青ねば」「太古土(たこど)」というこの地域特有の土を混ぜ合わせて陶器用の粘土を作ります。不純物を除去して、土を均一の粒子にするための「水簸(すいひ)」を行ないます。その後、土をしばらく寝かせて成形が可能になるように粘り気を出したあと、「菊練り」をします。
    土ができたら、いよいよ成形です。器の形によって、成形の方法は異なります。角形や複雑な形の器は、石膏で作った型の中に「泥漿(でいしょう)」を流し込む方法が使われます。泥漿とは、粘土と水を混ぜたものです。円形の器は、ろくろで製作します。木の台を置き、その上に器の底になる土をしっかりと固定して底土を作ります。
  2. 2.ねじ立て 5~10センチメートルの太さで、長さが40センチメートルほどの、ひも状の「より土」を右手で持ち、ねじりながら底土に巻きつけていきます。左手は、右手が「より土」を巻きつけていく力を支えると同時に、巻きつけられた「より土」の高さを一定にならします。2段目も、1段目と同じ動作を繰り返します。このように、ひも状の粘土をねじりながら何段も積み上げていく方法が「輪積み成形」です。
  3. 3.はがたな伸ばし 円筒状に粘土を積み上げたあと、「はがたな」という鏝(こて)で表面をならします。外側にできた継ぎ目を、「はがたな」で上から下にこすりながら粘土の周囲をまわるのです。そのあと、内側の側面を扇形に広げながら伸ばしていきます。
  4. 4.乾燥し2、3を繰り返す 器の下の部分ができたところで乾燥させて、上の部分の重みに耐えられる状態にします。その後、ふたたび「ねじ立て」と「はがたな伸ばし」を繰り返して、全体を完成させます。
  5. 5.口づくり 器の口をつくります。水で濡らした木綿の布をかぶせて、両手で押さえるようにしながら土を伸ばして、口の部分を仕上げます。指の使い方によって、さまざまな口の形を作ることが可能です。
    最後に、成形された器を窯(かま)に入れて高温で焼きます。焼き上げる温度は、1200~1300度です。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

たいら窯 タイラガマ

Facility Information / 関連施設情報

福井県陶芸館

  • 住所
  • 電話
    0778-32-2174
  • 定休日
    月曜日(休日を除く)、休日の翌日(土・日・休日を除く)、年末年始(12/28~1/4)
  • 営業時間
    9:00~17:00(入館は16:30まで)
  • アクセス
    ハピラインふくい武生駅よりバス福鉄バス(武生・越前海岸線)「かれい崎行」「陶芸村口」下車
  • HP

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