千葉工匠具

千葉工匠具 チバコウショウグ

鍛冶職人の腕が光る道具の数々
肥沃な土地を背景に生まれた伝統の品

Description / 特徴・産地

千葉工匠具とは?

房総半島全域において、伝統的な技法を用いて製造される刃物や手道具類を指し、鎌(かま)、鍬(くわ)、包丁、洋鋏(ようばさみ)などが主要製品として挙げられます。
昔から砂鉄が採れたため、房総半島には鍛冶職人が多く生まれました。作る道具も多岐にわたり、中でも職人の仕事道具である工匠具の産地として全国に知られています。
鋏(はさみ)は「刃合わせ」、鋏以外の製品は「叩き造形」または「型切り造形」という独自の技法を用いて作られます。特に「歪(ひずみ)取り」「研ぎ」および「仕上げ」の工程はすべて手作業で行われることが特徴。熟練した職人の手によって優れた製品が作り続けられています。

History / 歴史

砂鉄の産地である房総半島では、古代より製鉄や鍛冶が盛んでした。徳川家康によって江戸幕府が開かれて以降は利根川の河川工事、印旛沼の干拓といった大規模な土木工事が行われるようになり、これをきっかけに大工や農家の仕事道具(工匠具)を作る鍛冶職人が増加。江戸後期には工匠具の産地として成熟していったと考えられます。
また、房総半島は酪農発祥の地と言われており、牧場がそこかしこに存在したことも千葉工匠具の発展に寄与しました。明治維新を契機に牧畜業が活気を帯び、洋鋏や包丁、鎌といった道具類の製造も伸展していったのです。
断髪令が施行されてからは理髪需要が伸び、それに合わせて理美容鋏の製造も増えていきました。
現在でも伝統的な技術・技法を用いる職人が残り、作り続けられている工匠具。伝統がもたらす高い技術はもちろん、手作りだからこその味わいが魅力となっています。

General Production Process / 制作工程

千葉工匠具 - 制作工程

  1. 1.選別 鋏、鎌、包丁など製品の種類や用途に適した地鉄(じてつ)、鋼(はがね)を選別します。
    場合によっては金槌(かなづち)で叩き、硬さ、柔軟性を確かめます。
  2. 2.地鉄作り 選別した地鉄を、金箸で炉に入れ熱します。熱した地鉄を金床(かなどこ)に当て、鎚で打ち伸ばし、製造する品目に適した大きさ、厚みに仕上げます。
  3. 3.叩き造形 (鎌や鋏などに用いる工程)
    炉で熱した地鉄を金床に当て、鎚で打ち鎌などの形に整えます。
    鋏の場合は、細長く伸ばして鋏の軸や輪の部分の造形をします。
  4. 4.型切り造形 (洋包丁では最初の工程)
    鍛造(たんぞう=金属を叩いて成型する加工法)によって伸ばした地鉄や鋼材に型紙をあてて線を引き、押し切りという道具、または鎚と鏨(たがね)で所定の型に抜いていきます。
  5. 5.鋼作り・刃鍛接 選別した鋼を炉の中で熱し、手鎚または機械ハンマーで打って細長い平板に伸ばします。伸ばしたものを鏨で所定の長さに切断します。
    炉で赤く熱した地鉄に、ホウ酸や鉄粉を混ぜた鍛接剤をつけます。その上に鋼を載せ、さらに炉で熱し、手鎚または機械ハンマーで強く打ち付けて接着します。
  6. 6.焼き入れ 材料を約850度の炉で熱します。
    全体的に赤くなったら、製品ごとの仕上がり硬度に適した冷却法(水冷却、油冷却)で急冷、鋼部分を硬化させます。
  7. 7.焼き戻し 焼き入れで硬化させた材料を炉であぶり、200度前後まで熱します。
    充分に熱せられたら、水または油につけて冷却することで、鋼部分に柔軟性と粘りを持たせます。
  8. 8.歪取り・整形 焼き入れ、焼き戻しの工程で材料に生じたひずみを、鏨、鎚、矯正木を使って取り、整形していきます。
  9. 9.荒研ぎ・中研ぎ 「刃」となる部分を銑(せん)や砥石、または回転砥石で研いでいきます。
    摩擦熱で焼きが戻らぬよう、水につける動作と研ぎを繰り返します。研ぎが進むに応じて砥石または回転砥石の目を細かくしていきます。
  10. 10.刃合わせ (鋏などの二枚の刃を組み合わせる製品に必要な工程)
    剪定、洋裁、調髪などの用途に合わせ、刃や柄との接合部分を金槌や木槌で叩いて噛み合わせます。その後、ヤスリや砥石を用いて刃の角度を調整していきます。
  11. 11.仕上げ 製品に応じて、刃物の形状に合った柄をつけます。
    最後に仕上げ研ぎをし、製品として完成です。

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