房州うちわ

房州うちわ ボウシュウウチワ

房州産の女竹を細かく割いて作る「丸柄」と、骨を糸で編んで生まれる半円形の美しい「窓」が特徴。しなやかな竹骨と繊細な格子模様が、軽やかで涼しげな美しさを生み出します。2002年(平成14年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

房州うちわとは?

房州うちわ(ぼうしゅううちわ)は、千葉県館山市、南房総市を中心とする南房総地域で作られているうちわです。2003年(平成15年)3月17日に、千葉県で初めて国の伝統的工芸品に指定されました。

京都の「京うちわ」、香川県の「丸亀うちわ」とともに「日本三大うちわ」の一つと呼ばれています。

房州うちわの大きな特徴は、一本の女竹(めだけ)から柄と骨を一体で作る「丸柄」です。女竹の先端側を細く割き、48~64本ほどの骨に分け、糸を交互に掛けながら扇形に広げます。

骨を支える「弓」を取り付け、糸を引き締めて形を整えることで、柄の上部には「窓」と呼ばれる美しい半円形の部分が生まれます。細く割った竹と糸によって作られる格子状の模様は、房州うちわを特徴づける意匠です。

骨と柄には房州産の女竹、弓には真竹が用いられます。うちわ面には和紙のほか、絹織物や綿織物などが使われることもあります。

形には丸形、卵形、柄の長いものなどがあり、伝統的な図柄のほか、染織布や現代的な意匠を取り入れた製品も作られています。実用品としてだけでなく、装飾品としても制作されています。

History / 歴史

房州うちわ - 歴史 ©南房総市

房州うちわの産地である房総半島南部は、古くから良質な女竹の産地として知られ、江戸のうちわ生産地へ竹材を供給していました。

房州でうちわ骨の生産が始まった時期については複数の記録があります。1911年(明治44年)に千葉県が発行した「地方資料小鑑」では、1877年(明治10年)に那古町、現在の館山市那古でうちわ生産が始まったとされています。

一方、1918年(大正7年)刊行の「房総町村と人物」では、1884年(明治17年)に那古町の岩城惣五郎が東京から職人を招き、うちわ骨の生産を始めたとされています。

また、館山市では別の地域史料に基づき、1890年(明治23年)頃に那古の忍足信太郎が割き竹の加工を始め、1897年(明治30年)頃には岩城庄吉が本格的に割き竹を生産したと紹介しています。このように、房州でのうちわ生産の始まりについては資料によって年代や人物に違いがあります。

明治から大正時代初期にかけては、房州で主にうちわ骨を作り、それを東京へ送り、東京の職人が完成品に仕上げていました。

1921年(大正10年)には、東京・日本橋のうちわ問屋であった横山寅吉が船形に移り、竹の加工から完成品までを行う一貫生産を始めたと館山市では伝えています。

さらに、1923年(大正12年)の関東大震災によって東京のうちわ問屋や工場が大きな被害を受けると、竹の産地に近い館山・南房総地域へ生産拠点が移り、房州でのうちわ生産が本格的に発展しました。

那古、船形、富浦などの漁村では、漁に出る人々を支える家族の手仕事としてもうちわ作りが広がり、地域の重要な産業となっていきました。

2003年(平成15年)3月17日には、「房州うちわ」が千葉県で初めて国の伝統的工芸品に指定されました。現在も館山市、南房総市を中心に、一本の竹を割いて柄と骨を一体で作る伝統技法が受け継がれています。

Production Process / 制作工程

房州うちわ - 制作工程 ©南房総市

  1. 1.竹の切り出し(うちわ屋) 原料となる女竹は毎年10月ごろから竹の選別が始まります。中身が締まっていて虫がついておらず、指の太さくらいの女竹を伐採し、必要な長さに切断します。うちわ作りには太さが一定の竹が必要なので、1本の竹から取れるのはわずか2~3本ほどしかありません。
  2. 2.皮むき(うちわ屋) 女竹の皮をはがし、節の周囲の芽などを削り取ります。
  3. 3.磨き(うちわ屋) 皮をはいだ竹を籾殻(もみがら)とともに磨き機に入れて水洗いした後、表面を磨きます。磨き終わったら籾殻を落として乾燥させます。
  4. 4.水付け(割き屋) 竹に切り目を8つ入れ、切り目を下にして一晩水につけて柔らかくします。
  5. 5.割竹(さきたけ)(割き屋) 節の少し上の部分に糸を巻きつけて固定し、糸の位置まで切り目に沿って竹を8つに割きます。その後、余分な身を削ぎ(そぎ)落としながら16分割、32分割、64分割にしていきます。
  6. 6.もみ(うちわ屋) 分割した竹を3~4本まとめて、波型のついた石やコンクリートブロックなどの上で強く転がします。こうすることで、分割した竹の部分の角がなめらかになります。
  7. 7.穴あけ(うちわ屋) 節の下の部分に、竹が割れないようにドリルで慎重に「弓」と呼ばれる編棒を通す穴をあけます。
  8. 8.編竹(あみだけ)(編み屋) 分割した部分より10cmくらい上のあたりに糸を結びつけ、分割した竹が一直線になるように骨と糸を交互に編んでいきます。1本ずつ編む方法と2本ずつ編む方法がありますが、1本編みの方が美しく仕上がり高価なうちわになります。
  9. 9.柄詰め(えづめ)(うちわ屋) 持ち手の長さに合わせて柄を切り、柄の中の空洞になっている部分に細い柳の枝を詰めていきます。
  10. 10. 弓削(すげ)(弓削屋) 真竹(まだけ)を細く割いて、両端を細く削いで形を整えて弓を作り、「網竹」をした竹に取り付けます。
  11. 11.下窓(したまど)(下窓屋) 竹の間隔が均等になるように扇型に広げ、「網竹」で編んだ糸を弓の端に仮結びをします。
  12. 12.窓作り(下窓屋) 糸を引っ張って穴に通した弓を曲げ、たるみがないように糸を引いて整えしっかりと結び直します。糸を固定した後、編んだ竹の形を再度整えて窓を作ります。
  13. 13.目拾い(めひろい)(うちわ屋) 糸の少し上の骨の間に細い竹を差し込み、逆側に広がった骨を平らにして形を整えます。
  14. 14.穂刈り(ほがり)(うちわ屋) 「押切(おしぎり)」という道具を使って、うちわの形になるように骨の余分な部分を切っていきます。
  15. 15.焼き(うちわ屋) 骨がまっすぐになるように中心部をコンロや熱した金属の台などで加熱して、形を定着させます。骨組みが安定したら竹ヒゴを外します。ここまででうちわ骨が完成します。
  16. 16.貼り(貼り屋) あらかじめうちわの形に切った紙や布を骨に貼る作業です。刷毛(はけ)で骨全体に糊を塗って、表の面をはり、骨の間隔が均一になるように竹ヘラで形を整えます。その後、裏面を貼り付けます。
  17. 17.断裁(だんさい)(うちわ屋) 押切か断裁機を使用して、うちわの形に合わせて骨の端を切りそろえます。
  18. 18.へり付け(縁屋) 断裁した部分が壊れたり裂けたりしないように、うちわのへりに細長く切った和紙を弓と骨の間に貼り付けます。
  19. 19.下塗り(したぬり)(うちわ屋) 柄尻(えじり)の隙間に、膠(にかわ)と「胡粉(ごふん)」という貝の粉を溶いた液を塗り、柄尻の先を丸く盛り上げます。
  20. 20.上塗り(うちわ屋) 下塗りが乾いたら、その上に漆(うるし)や顔料で柄尻に色を付けます。
  21. 21.仕上げ(うちわ屋) うちわの紙を貼った部分をローラーに通して、紙や布に骨の筋が浮き出るように調整して仕上げます。
  22. 22.完成 細分化された工程を経て房州うちわが完成します。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

うちわの太田屋

Facility Information / 関連施設情報

房州うちわ会館

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