東京アンチモニー工芸品

東京アンチモニー工芸品 トウキョウアンチモニーコウゲイヒン

明治維新の副産物
職人の技と勘が作り出す精巧な世界

Description / 特徴・産地

東京アンチモニー工芸品とは?

東京アンチモニー工芸品は、東京都北東部から千葉県我孫子市一帯で作られる金工品(きんこうひん)です。
東京アンチモニー工芸品の特徴は、繊細な模様を正確に表現できることです。素材となる「アンチモニー合金」はどっしりとした重量感があり、表面がなめらかで鋳造後の冷却時に収縮しないため、細かい模様も鮮明に製作できます。職人の手により金・銀・銅などのメッキが施されると豪華な見栄えがするため、トロフィー、オルゴール、インテリア小物、装飾工芸品などの多様な製品が作られています。
近年では東京都立産業技術研究センターと東京アンチモニー工芸協同組合で協同開発した「エテナ」も素材として採用されています。「エテナ」の開発により今まで錫製品でできなかった鏡面仕上げが可能となり、銀製品にも劣らない美しい光沢を持つ東京アンチモニー工芸品が製作できるようになりました。

History / 歴史

アンチモニー製品の起源は、1877年(明治10年)と言われています。明治時代へ転換する明治維新により職を失った徳川幕府の鋳物師や彫刻師が、創意工夫を重ねてアンチモニー製品の技術を確立しました。
明治時代に基盤が構築されたアンチモニー産業は、その後に起こる関東大震災や大金融恐慌、世界大不況、第2次世界大戦などの影響を大きく受けることはありませんでした。1945年(昭和20年)の終戦1ヶ月後には、組合再発足の集まりが持たれたほどです。
1949年(昭和24年)にアンチモニー工業協同組合が正式に発足された後は、外貨獲得という国策に貢献し、経済成長を牽引する産業へ発展していきました。明治・大正・昭和を通して日本の輸出産業を発展させたアンチモニー製品は、日本の伝統工芸品として欧米人に高く評価されるだけでなく、彼らの生活にも深く浸透しています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.原型製作 ここでは「アンチモニー合金」を使用した製作工程を説明します。まず、アンチモニー製品の原型は、全ての工程に熟知した優れた工芸家により作られます。種類は「木型(きがた)」と「石膏型(せっこうがた)」の2種類で、デザインにより使い分けます。
  2. 2. 鋳型(いがた)製作 原型を使って砂で造形した「砂型(すながた)」をとり、真鍮地金合金(しんちゅうじがねこうきん)を流し入れて「金型(かながた)」を作ります。その後、それぞれのパーツを組み合わせて「鋳型(いがた)」にしていきます。

    鋳型とは、鋳物(いもの)を鋳造するための型のことです。鋳型は強度を上げるためにハンマーで叩いて固めながら、それぞれのパーツをしっかりと組み合わせていきます。仕上げに旋盤(せばん)やヤスリがけをし、木炭で磨き上げれば鋳型の完成です。

    次に、鋳型に彫刻を施します。図柄を写し取り、タガネや魚子(ななこ)などを使用して彫り進めます。戦前には花鳥・山水・富士山などの日本の風俗模様が彫られましたが、徐々にモダンな欧米的デザインがに変わっていきました。彫刻は全工程の中で最も職人技が求められる作業で、彫刻の技法は明治時代から変わりません。真鍮地金合金で作られた金型のため、美麗で精巧な模様を彫り上げることができます。
  3. 3. 鋳造(ちゅうぞう)加工 鋳造方法には、「焼き吹き」「戻し吹き」「冷吹き」「地金吹き」の4種類があります。
    「焼き吹き」は、300~350度の炉で地金が溶けて流れるまで鋳型を熱した後、湯を入れて少しずつ鋳型を冷やしていく方法です。鋳型内の湯の温度、鋳型の傾き加減、湯の流れと空気抜けは、全て職人の「勘」に任されます。

    「戻し吹き」は、鋳型の湯口より湯を注入し、10~15秒後に型から湯を出す方法で、どんな形状にも対応できます。主に、置物や宝石箱なとの製品に用いられます。
    「冷吹き」は、焼き吹きの水冷を省いたシンプルな方法で、「地金吹き」は、溶解した地金の上に鋳型を浮かせて熱する方法です。この2つの方法は、小さな製品の鋳造に用いられます。
  4. 4.まとめ加工 鋳型から取り外した後、専用の道具を使用して、合わせ目などが判別できなくなるまで丁寧に仕上げ加工をしていきます。
  5. 5.メッキ加工・着色加工 金・銀・銅でメッキ加工しますが、必ず下地となる銅メッキを施します。また、着色してから透明なエナメルで錆止め加工をする方法もあります。
  6. 6.塗装加工 メッキ加工した場合は、透明の塗装で表面の変色を防ぎます。

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