信州打刃物 写真提供:信州・長野県観光協会

信州打刃物 シンシュウウチハモノ

職人に愛される機能性の美学
薄刃に宿る匠の技

Description / 特徴・産地

信州打刃物とは?

信州打刃物(しんしゅううちはもの)は、長野県長野市周辺で作られている金工品です。この地は旧・信濃国であり、信州とも呼ばれたことから「信州打刃物」と名づけられています。
信州打刃物の特徴は、手作業で一本一本ていねいに打ちのばすことから生まれる強靭さ、切れ味のよさ、そして切れ味が長持ちすることです。信州打刃物の主な製品には、鎌・鍬(くわ)などの農具、鉈(なた)・斧(おの)といった山林用具、包丁などがあります。
中でも、信州打刃物の代表格である信州鎌は、草刈り鎌として高い評価を得ています。その理由は、刈った草が手元に寄ってくる「芝付け」加工や、刃を薄くしても手元が狂わないよう内側に湾曲した「つり」加工といった独特の工夫がほどこされていることが特徴です。さらに、片刃の薄刃であるために軽く、使いやすいことも魅力です。
信州鎌の技術は19世紀前半に生まれたとされており、その技術を受け継いだ鍛冶職人によって、現在も作られています。

History / 歴史

信州打刃物 - 歴史

戦国時代の16世紀半ば、川中島の戦いの際、武具や刀剣類の修理のため長野市一帯に移住した鍛冶職人から里人が鍛冶技術を習ったのが、信州打刃物の始まりとされています。鍛冶の技術は農具や山林用具作りに活かされ、その後改良を重ねながら代々伝えられてきました。
この地域は北国街道(ほっこくかいどう)の街道筋にあたっていたことから、山陰地方の鉄やハガネなどが直江津の港経由で入手しやすい状況にありました。また、信州打刃物の特徴である薄刃を鍛えるために適した、ふつうの木炭よりやわらかい松炭の原料となる松林がふんだんにあります。刃物の販売の点でも、街道筋ということで全国に販路が広がっていきました。
19世紀前半の文化文政期には、草刈り鎌づくりをしていた鍛冶職人が信州鎌の特徴となる「芝付け」「つり」を考案し、別の鍛冶職人が両刃の鎌を片刃の薄刃物に改良します。
この二つの鎌が今の信州鎌の原型となりました。その後も刃物づくりの技術は発達し、現在の信州打刃物に伝承されています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.じぎり 鋼(はがね)づくりと地鉄(じがね)づくりをした後、刃先となる鋼を地鉄に鍛接(たんせつ)します。「鍛接」とは熱や圧力を加えて異なる金属同士を接合することで、鋼と地鉄を加熱しハンマーで打って一体化させることを指します。
    鋼は地鉄よりも厚さが薄くなっています。例えば、厚さ2mmの鋼を厚さ9mmの地鉄に鍛接します。
  2. 2.コミ曲げ 「コミ」とは、鎌の刃を柄に差し込むために突き出た部分のことです。コミになる部分を打って曲げます。
  3. 3.腰出し コミ曲げした部分を打って広げます。
  4. 4.広げ おおよその鎌の形まで丹念に打ち広げます。
  5. 5.押切り 刃先を整え寸法を合わせます。
  6. 6.コミ作り コミを整えます。
  7. 7.荒打ち 鎌を炉で約700度に熱した後、手槌(てづち)とハンマーで「ヒラ」の厚さが均一になるまで打ちます。厚さを均一にするには熟練を要します。
  8. 8.荒みがき 鎌の表面に付いている酸化鉄やカスを取り、きれいにします。
  9. 9.刻印打ち 商標や品質表示の刻印を所定の位置に打ちます。
  10. 10.小ならし 「小ならし」とは、鎌を炉で約500度に熱した後、手槌で打ち、表面をなめらかにしていくことです。この「小ならし」によって信州打刃物の特徴である強靭さが生まれます。
    「小ならし」の際、信州鎌独特の「芝付け(しばづけ)」や「つり」も作ります。「芝付け」とは鎌身とコミに角度をつけて刈った草が手元に寄ってくるようにする加工、「つり」は刃を薄くしても手元が狂わないよう刃面を内側に湾曲させる加工のことです。
  11. 11.中研ぎ 鋼の部分を中目の砥石で磨きます。
  12. 12.焼入れ 鎌の表面に泥を塗り、780度くらいに加熱保持した後、水槽に入れて急速に冷します。この「焼入れ」工程によって、鋼の組織が変化して硬くなります。硬くなることによって「刃物に魂が入る」と言われます。泥を塗るのは、「焼入れ」のときに泥が鎌を均一に冷すためです。
  13. 13.焼もどし 鋼に適度の粘りを持たせる工程です。硬いだけでは刃こぼれを起こすため、鋼に粘りを持たせることによって刃こぼれを防ぎ、切れ味を保ちます。
  14. 14.ヨリ取り 鋼と地鉄では膨張率が違うため、焼入れで反りや曲がりが出てしまいます。反りや曲がりなどの狂いを直す作業です。
  15. 15.刃研研磨・つや出し 羽布(ばふ)で磨いてつやを出します。
  16. 16.サビ止め ニスまたはツバキ油を塗ってサビ止めにします。
  17. 17.柄すげ 鎌の刃を柄に取り付けます。

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