京繍

京繍 キョウヌイ

京の雅な文化が生んだ繊細な刺繍
艶やかな刺繍が表現する日本文化の美

Description / 特徴・産地

京繍とは?

京繍(きょうぬい)は京都府京都市周辺で作られている刺繍です。京都ならではの雅な文化を反映した繊細で優雅な刺繍は、高度な技術が必要とされています。
京繍の特徴は、絹糸や金糸、銀糸を使い30通りもの技法を駆使した完成度の高さです。京繍の用途は様々で、着物に装飾するのはもちろんのこと、小物から緞帳(どんちょう)まで多岐に渡ります。特に京繍は多彩な色彩を用いており、用いる色糸の種類は2,000色にも及び、着物に刺繍する場合は、図柄にもよりますが20~30色は使用します。
京都と同じく刺繍文化が盛んなフランスでは刺繍を刺す際片手で刺すのに比べて、京繍は両手を使って布の上下へと自在に刺し進めることで、より繊細な表現が可能となりました。
日本独特の優美な表現を著した京繍は江戸時代には輸出品として海外で人気を博しました。平安時代から続く京繍は、日本文化の美しさを凝縮した伝統工芸品として現在でも人々を魅了しています。

History / 歴史

日本の刺繍の起源は古く、1400年前の飛鳥時代にはあったと言われています。当時は仏画に刺繍を施す儀礼的なもので、とても貴重な品でした。
平安時代に入ると都の貴族達が刺繍を施した衣装を着るようになり、宮中に「織部司(おりべのつかさ)」と呼ばれる織物から染色まで着物に関わる部署が出来たことで、都のあった京都で刺繍の技術が格段に発達していきました。この頃の京繍の用途はさまざまで、艶やかな十二単を飾ったり、能の豪華な衣装などに使われました。
安土・桃山時代に入ると、宮中の貴族だけでなく武士や武士の奥方の小袖などに京繍が用いられるようになり、京繍を愛用する範囲が更に拡がっていきました。
江戸時代には裕福な庶民の財力を反映するかのように、小袖の全面に刺繍を施す図柄が流行し、刺繍文化の最盛期とも言える時期でした。
近年では、現代の生活様式にあわせた和装小物や帯、インテリア用品の制作などで京繍の伝統が受け継がれています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.草稿(そうこう) 刺繍を施す図案を下書きします。図案は古典的なものから製作者のオリジナルなものまで多岐に渡ります。図案は鉛筆か墨で描かれます。
  2. 2.下絵描き 布を照明で透かして写し取る方法と、最近ではシルクスクリーンの技法を使って写し取る方法などがあります。下絵の線は刺繍を刺していくうちに消える素材を使います。
  3. 3.配色 刺繍を施す図柄によって使う刺繍糸の色を決めていきます。京繍の糸の種類は2,000種類あると言われ、店によって色の好みも違う為、店独自で染色する糸も含めると色の数は膨大な数になります。その中から図柄に最適な色を選び出していきます。配色には一反の着物につき、20~30種類は使い、どの色を使うかは刺繍を刺す職人の感性にまかせられており、ベテランの職人になるとどの色を使うかは「糸の方から教えてくれる」という経験と直感が頼りの技術です。
  4. 4.生地張り 下絵を書いた生地に刺繍を施す為の枠に固定します。大きな範囲の刺繍を施す時は「台張」と呼ばれる枠に固定します。「樋棒(ひぼう)」と呼ばれる棒に生地を渡し、生地に歪みがでないように引っ張りながら固定します。着物の紋のように比較的小さなものを刺繍する場合は、「台枠張」という専用の刺繍枠に生地を固定します。
    次に、「より棒」と呼ばれる専用の棒を使って刺繍糸に撚りをかけていきます。刺繍糸に撚りをかけるのは京繍の特徴で、撚りをかけることにより刺繍糸に強度が出ます。また、撚りをかけたことによる表面の凹凸から色の濃淡が生まれ、色により深みをだすことが出来ます。同時に光沢も生まれる為、京繍の繊細な表現に欠かせない行程です。
  5. 5.繍加工 刺繍に用いる針は手作りで、種類は10種類以上もあります。現在針を製作する会社は広島に1社あるだけで、とても貴重な道具です。京繍の基本的な縫い方は15種類ほどですが、細かい縫い方まで含めると150種類ほどにもなると言います。元々は京繍では縫い方ごとに分業制がとられていましたが、時代の流れとともにそのシステムも無くなっていきました。現在では、お店ごとに独自の刺し方を追求し、オリジナリティを出した華やかな世界を創作しています。
  6. 6.仕上げ 刺繍を施された生地は、強度と見た目の美しさの為に裏側にのりをかけ、仕上げとなります。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

中村刺繍 ナカムラシシュウ

京都の和服、日本刺繍(京繍)の伝統を重んじ、その技術と心を皆様にお届けいたします。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

京都伝統産業ミュージアム(京都市勧業館-「みやこめっせ」地下1階)

京都伝統産業ミュージアム(京都市勧業館-「みやこめっせ」地下1階)

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