京うちわ

京うちわ キョウウチワ

竹骨の本数で決まる製品ランク
日本画のように完成度の高い繊細な絵柄

Description / 特徴・産地

京うちわとは?

京うちわ(きょううちわ)は、京都府で作られているうちわです。日本のうちわは形や特徴から、中国団扇(ちゅうごくうちわ)系、朝鮮団扇(ちょうせんうちわ)系、南方団扇(なんぽううちわ)系に大別されますが、京うちわは地紙の内側に多くの竹骨(たけほね)を持った朝鮮団扇の流れを汲んだものになります。
京うちわの特徴は、竹の細骨を放射状に1本ずつ並べて団扇面(うちわめん)を作り、孟宗竹(もうそうちく)・漆塗り・杉染めなどで別に作った柄(え)を後から付けた「挿し柄(さしえ)」構造であることです。地紙(じがみ)の中の竹骨は50本~100本あり、竹骨の数が多いものほど高級とされています。なかでも竹骨が100本ある「100立て(ひゃくだて)」と呼ばれる京うちわは、装飾用として好まれています。
また、京うちわは「都うちわ」や「御所うちわ」とも呼ばれており、漆や金などの豪華な装飾や優美な絵などが施されています。京うちわの団扇面(うちわめん)はまるで日本画のように完成度が高いため、古くから美術工芸品としても高い評価を得てきました。デザインは俳句や和歌、人物、風景、植物、季節の風物詩などをモチーフにしたものが多く見られ、古来からの日本の美しさが描かれています。

History / 歴史

京うちわのルーツは、14世紀頃に日本に伝わった朝鮮団扇(ちょうせんうちわ)というものです。南北朝時代に中国大陸や朝鮮半島沿岸地で活動していた海賊・倭寇(わこう)によってもたらされました。その後、紀州から大和路を経て京都伏見の深草(ふかくさ)に伝わったのが、京うちわの起源と言われています。その後、京うちわは「都うちわ」と呼ばれ、うちわ紙に描かれた美しい絵が宮廷貴族たちに愛されてきました。
京うちわの特徴である「挿し柄(さしえ)」の構造になったのは江戸時代以降で、狩野派(かのうは)や土佐派といった絵師が絵を描いた「御所(ごしょ)うちわ」として定着しました。この頃から京うちわも、他のうちわと同様に、庶民たちの夏の涼のための道具として身近なものとなります。
現代では涼むための道具としてではなく、繊細な作りと美しい絵を活かし、様々なデザインの京うちわが制作されています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.うちわ骨加工 胴切り(どうぎり) 乾燥させた上質の竹から節を取り除き、うちわのサイズ(長さ)に合わせて竹の胴を横に切っていきます。
  2. 2.割竹(わりたけ) 鉈(なた)を使って、胴切(どうぎり)した竹をうちわのサイズ(幅)に合わせて、縦に割っていきます。
  3. 3.巾揃え(はばそろえ) うちわ骨となる竹の幅をそろえる工程です。
  4. 4.厚さ揃え(あつさそろえ) うちわ骨となる竹の厚さをそろえていきます。
  5. 5.きざみ うちわ骨となる竹の上端に細かく刻みを入れていきます。
  6. 6.もみ うちわ骨の上端に入れた刻みをもみ広げていく工程です。上端にきざみをいれた竹の左右の端から、竹の繊維に沿ってもみ割りします。刃物を竹の一方に当てて竹を裏返すことで、左右交互にもみ割りしていきます。
  7. 7.へぎ うちわ骨の竹を必要な厚さになるまで、さらに薄く削いでいきます。ここまででうちわ骨の加工が終了します。
  8. 8.うちわ紙加飾 手描きで絵を描いたり、絵柄の木版、和紙の染色やはり絵などにより、うちわ紙を装飾していきます。
  9. 9.裏張り加工(うらばりかこう) 裏張りとは、裏地紙(うらじがみ:うちわの裏側の地紙)とうちわ骨を貼り合わせていく工程です。
    仮張り(かりばり)は、薄い紙にうちわ骨の細竹(ほそだけ)を糊で付けていく作業です。 細竹の断面は長方形になっているので、短い方の辺に糊を付けて、薄い紙に放射状に貼っていきます。
  10. 10.裏張(うらばり) 裏地紙(うらじがみ)と仮張り(かりばり)で付けたうちわ骨を貼りあわせて、うちわの骨格を作ります。
  11. 11.めくり 仮張り(かりばり)の工程でうちわ骨に貼った薄い紙を湿らせて、うちわ骨から剥がしていきます。
  12. 12.仕上げ加工 合わせ 裏地紙(うらじがみ)を貼った細竹に表の地紙(じがみ)を貼る工程です。
  13. 13.念付け(ねんつけ) 細竹の両面に貼った地紙の糊が乾燥したら、念ベラでうちわ骨の際(きわ)を挟むようにして、地紙(じがみ)に筋をつけていきます。
  14. 14.元板付け(もといたつけ) うちわの柄(え)を差し込む部分に布や厚手の紙を貼って補強します。
  15. 15.なり廻し(なりまわし) うちわの形に成型する工程です。
  16. 16.へり取り うちわをできあがりの形に切った後、周囲に薄い紙を貼り付けていきます。最後に、元板(もといた)の部分に柄(え)を付けると完成です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

阿以波 アイバ

阿以波

国産材料、国内生産にこだわり昔ながらの職人技にて製作しております。 実用として扇ぐだけでなく、四季折々のお花代わりやインテリアとしても使って頂けます。

製造元の詳細をみる

小丸屋住井 コマルヤスミイ

塩見団扇株式会社 シオミウチワ カブシキガイシャ

飾って涼しげ、扇いでよしの京うちわ。伝統の技を用い、現代の感覚で磨き上げ、工芸品として、また夏の風物として普段使いしてもらえるような「手に馴染む」ものづくりをしています。 使ってよし、差し上げても喜んで頂けるものを作りたいと思っております。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

京都伝統産業ミュージアム(京都市勧業館-「みやこめっせ」地下1階)

京都伝統産業ミュージアム(京都市勧業館-「みやこめっせ」地下1階)

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