京指物

京指物 キョウサシモノ

古都の歴史や文化に培われた意匠
木材の美しさを引き立たせる豊富な技術

Description / 特徴・産地

京指物とは?

京指物(きょうさしもの)は、京都府で作られている木工芸のひとつで、桐製品を代表とする様々な調度指物(ちょうどさしもの)や、茶道指物(さどうさしもの)、挽物(ひきもの)などがあります。
指物(さしもの)とは、木と木を組み合わせて作られた家具や調度品などの総称で、多数の技法を駆使することにより500種類以上の製品を作ることができると言われています。
京指物の特徴は、京都らしい上品なデザインです。平安期が起源とされる京指物は、当時の宮廷文化のなかで高い品格が求められたことから、優雅な趣を今に伝えています。加えて、簡素な美しさを追求した茶道文化や江戸時代の町人文化にも育まれたことで、多彩な表情を持っています。
また、古くから今日まで継承された豊富な技術も特徴のひとつです。優れた職人が渡来や古来の技術を保ちつつも、各時代に沿った技法を開発してきたことにより、その伝統的な技術が作品のなかに息づいています。

History / 歴史

京指物(きょうさしもの)の始まりは平安期とされています。豊富な木材資源を持つ日本では、それ以前にも日本特有の木工芸が発達していました。中国や朝鮮から石・金属の文化が渡来したことにより、その器物などを模倣しつつ木を素材とした独自の工芸品が生まれます。
大工職の手によって平安時代に作られていたのは、宮廷の儀礼用の物差しなどです。室町時代に入ると、武家社会を背景に箪笥(たんす)や棚、机などの調度品が増えたことから専門の指物師が生まれます。
安土桃山時代には、茶の湯の普及にともなって書院造りや座敷、茶華道具などの一部にも使われるようになり、京指物の需要が高まりました。
江戸時代からは、武家用・商人用・江戸歌舞伎役者用(梨園指物)など幅広いものが作られるようになり、独自の技術がさらに発展していきます。
現在に至っては、シャンパンクーラーや和風照明など時代に合ったものも多く作られ、モダンながらも木の温もりが伝わる製品が愛され続けています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1. 荒木取 京指物(きょうさしもの)には、長い時間をかけて自然乾燥させた桐材(きりざい)のほか、桜・杉・松・欅(けやき)・桧(ひのき)などを使用します。
    ここでご紹介するのは、京指物のなかでも代表的な桐(きり)の箪笥(たんす)を作る工程です。桐材は熱に強く、水気を防ぎ、天然の防虫効果もあることから収納調度に適しています。また、材質が均一で汚れがつきにくいことも特長です。良質な材料を使い、職人の手で丹念に作られる桐の箪笥は高級品として知られています。
    まず、長い年月をかけて素地を作ることから始まります。木材の成長を止めるために、樹皮をむいた原木(丸太材)を横に積んで1年以上風雨にさらします。その原木を使用目的に合わせて大きく挽き分け、さらに1年以上自然乾燥させます。その後、必要な大きさの板や角材に挽いて乾燥させたものを、製品の寸法に合わせて「すみ付け(位置付け)」した後、木取りをします。
  2. 2. 矯正(きょうせい) ねじれや反りのある板を矯正する工程です。反りの内側に水をかけて、反対側は火であぶります。重石を乗せて、一昼夜おいて矯正します。水や火の加減には熟達した職人による高度な技術が必要です。
  3. 3. 荒削り 矯正した材を、寸法に合わせて削り上げる工程です。

  4. 4. 寸法決め 寸法や形の「すみ付け(位置付け)」を行う工程です。曲尺(かねじゃく)や木型などを用います。「すみ付け(位置付け)」には鉛筆などの筆記具は使用せず、白柿(しらかき)と呼ばれる刃物を使って細く精密な線を引きます。

  5. 5. 組手(くみて)加工 板と板を組み合わせるために、組接(くみつぎ)という技法を用います。二枚組接・三枚組接・五枚組接など様々な技法があり、見た目も美しく箱物の強度が高まります。

  6. 6. 木釘(きくぎ)づくり 木釘(きくぎ)には、「うつぎ」という木の原木を使います。「うつぎ」を20cmほどの長さに切断し、鉈(なた)を使って約4~6mmの厚さに割ります。板状になったものをさらに木目にそって約4~6mmに割って、割り箸のような棒状にします。それを小刀で丸く削り、所定の長さに切断して木釘を作ります。1本の棒からは約4~8本の木釘ができ、それを糠(ぬか)と一緒に炙って水分を飛ばします。
  7. 7. 組立 「組手(くみて)加工」された部分に接着剤を塗って接合して、錐(きり)で穴をあけます。木釘(きくぎ)の先端にも接着剤を少量つけてから金槌(かなづち)で打ち込んで組み立てます。この時に使う接着剤は、米粒をヘラでよく練ったものです。
    組み立てられた抽斗(ひきだし)は、箪笥の本体に隙間なくはめ込めるように鉋(かんな)で削って細かく調整します。
  8. 8. 仕上削り 接合部分や外周部分を平鉋(ひらがんな)で削って仕上げる工程です。平面は平らで滑らかになるように削り、丸面や唐戸面(からとめん)などでは丸みを持たせて削ります。

  9. 9. 仕上加工 サンドペーパーや「とくさ」、「むくの葉」など天然の研磨剤を使用して、表面を研磨します。その後、木本来の特長を引き出すために、仕上げ加工を行います。桐(きり)の素地仕上げの場合は、「いぼた虫」という虫が出した液「花いぼたろう」を木綿袋に入れて磨く「いぼたろう拭き仕上げ」という技法が用いられます。
  10. 10.加飾 仕上加工の後に、、漆で描いた模様の上に金粉・銀粉などを蒔いて文様を仕上げる蒔絵(まきえ)や、模様などを彫り込む象嵌(ぞうがん)などを施して加飾する場合もあります。最後に、別注で製作した取っ手などの金具を取り付けて完成です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

宮崎家具 ミヤザキカグ

宮崎家具

京指物は平安時代に、貴族文化の中で生まれ、室町時代に茶道文化の確立ともに発展しました。桐やヒノキを用いることが多く、また蝋色(ろいろ)の漆(うるし)、螺鈿(らでん)、金工を施した装飾的であるがシンプルで洗練されたものが多いのが特徴です。

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Where to Buy & More Information / 関連施設情報

京都伝統産業ミュージアム(京都市勧業館-「みやこめっせ」地下1階)

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