秀衡塗

秀衡塗 ヒデヒラヌリ

漆本来の艶と気品溢れる金で描かれた文様
平泉の文化を残す伝統工芸品

Description / 特徴・産地

秀衡塗とは?

秀衡塗(ひでひらぬり)は、岩手県平泉町周辺で作られている漆器です。
秀衡塗の特徴は平泉周辺で採れた金箔などをあしらっており、漆器としては数少ない鮮やかな模様です。中でもよく描かれるのが平安時代を思わせる源氏雲(げんじぐも)や菱形を組み合わせた有職文様(ゆうそくもんよう)です。また、合わせて植物などの自然のものも描かれることがあります。蒔絵(まきえ)とはまた一味違った、豪快でありながらも繊細さも残る味のある雰囲気を楽しめます。
秀衡塗は、デザインだけでなく質感自体にも独特な特徴があり、光沢を抑えた漆本来の美しさを活かした仕上げが施されています。そのため不自然な艶ではなく、漆自体の艶が表面に現れ、素朴な美しさを生み出します。
このように鮮やかな色を持っていながらも、素朴な質感を残した漆器は、秀衡塗独特の味わいだと言えます。

History / 歴史

秀衡塗は、かつて、みちのくの王者としてその名を知らしめた平安時代の武将、藤原秀衡(ふじわらのひでひら)に深い馴染みがあります。時期は定かではありませんが、1122年(保安3年)ごろに生まれ、1187年(文治3年)に没した秀衡が、京の都より職人を呼び、平泉周辺で採れる豊富な漆と金を使って、漆器をつくるよう命令したと言われているからです。
現在では発掘作業も進み、時代は定かではありませんが工房の跡も確認されています。いずれにしても、藤原秀衡の名前をとった「秀衡塗」は、藤原氏となんらかのゆかりがあるのではないかという説が有力です。
しかし、現在の秀衡塗へと確立していったのは16世紀頃のことです。残念ながら、秀衡時代の漆器の姿ではありませんが、現在でも職人ひとりひとりの手でつくられる昔ながらの作業工程は、歴史的にも価値のあるものとして認められ、1985年(昭和60年)には、国指定伝統的工芸品のひとつとして指定されました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.漆掻き(うるしがき) 秀衡塗づくりは、漆器を仕上げるのに重要な漆を集めることから始まります。漆が取れる時期は6~10月にかけて。特に、夏場は質の良い漆がとれると言われています。漆とは、木が傷を癒すために分泌する樹液のことです。そのため、カンナを使って木の幹に傷をつけ、ヘラで掻きとっていきます。一本の漆の木からとれる漆の量は、量にすると150~200gです。漆掻きでは、このわずかな量を何日かに分けて、根気よく採取していかなくてはなりません。
  2. 2.玉切り、型打ち 秀衡塗では、ブナやケヤキ、トチの木が使われます。しかし、切り出したばかりの木は、水分を多く含んだ状態で、すぐに使用することはできません。木が割れるのを防ぐためにもしっかりと乾燥させることが大切です。しかし、大きな大木のままでは乾燥が行き届かないため、扱いやすいようにお椀型に粗く削りだします。木の状態にもよりますが、1年から、長いものでは10年間乾燥させてやっと製作に取り掛かれるものもあるほどです。削りだす際は、丸みや厚みをみて、使いやすさを考えながら行っていきます。
  3. 3.木地挽き(きじひき) 「玉切り」や「型打ち」の段階では、木地が粗く削りだされた段階で、木地に凹凸などが残っています。「木地挽き」とは、ろくろを使って、木地の形を整え、なめらかにしていく作業のことです。サンドペーパーで、木地の細かな部分まで研いでいき、形を仕上げていきます。このとき、ろくろを回しながら研いでいくことによって、木地が均等に磨かれ、より表面がなめらかになるのです。
  4. 4.木地固め 木地挽きにより、木地の形が整ったら、木地全体に生漆(きうるし)を塗っていきます。木地をつくった段階ですぐに生漆を塗るのは、水分を含むことで木地が変形することを防ぐためです。生漆を塗ることによって、木地がしっかりとコーディングされ、水気を防ぐことができます。そして、水気による伸縮やひびなどのトラブルを防ぐことができるのです。このひと手間が、上質な秀衡塗をつくるうえで重要なポイントになります。
  5. 5.布着せ、下地塗り 壊れやすい部分は、麻布や木綿を着せて補強していきます。いわゆる「布着せ」と言われる工程です。さらに、布目には粉錆(さびふん)や生漆を塗って、布着せした部分が現れないようにしっかりと塗り重ねていきます。そして、粉錆がさびないように錆止めを塗って、下地を完成させます。
  6. 6.塗 塗の工程では、下塗り、中塗り、上塗りの3つに分けて、漆器全体の色付けを行っていきます。この塗を重ねるごとに湿度の高い漆風呂で乾燥させて丁寧に仕上げていきます。特に上塗りは、基本の色の最終段階なので、埃などの汚れが許されません。そのため、上塗りは各工程の中でも、かなり神経を要する作業になります。
  7. 7.加飾(かしょく) 漆器のベースになる色を塗り終えたら、仕上げとして、秀均衡塗の特徴とも言われている雲や菱形の絵柄を施していきます。和紙の模様と転写していくのが一般的です。このような秀衡塗の特徴である菱形模様や平安雲を総称して、秀衡模様と言われることもあります。

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