新潟漆器

新潟漆器 ニイガタシッキ

多彩な塗りの表現
文化交流から生まれた塗りのバリエーション

Description / 特徴・産地

新潟漆器とは?

新潟漆器(にいがたしっき)は、新潟県新潟市周辺で作られている漆器です。
新潟漆器の特徴は、「花塗」「石目塗」「錦塗」「磯草塗」「竹塗」などさまざまな塗りの技法があり、多種多様な作風を楽しめることです。
「花塗」は、文様をつけないシンプルな美しさと光沢が魅力の技法です。「石目塗」は、石が持つざらざらした肌合いを表現しており、塗膜が硬く表面にキズがつきにくくなっています。「錦塗」は、麻ひもを束ねたタンポで色漆を重ね塗りし、そのあとに表面を研ぐことで現れる各漆層の不規則なまだら文様が特徴です。「磯草塗」も「錦塗」と同様に色漆を重ね塗りますが、板状のタンポを回転させるように漆を塗ることで、海草が波間でゆらゆら揺れているような文様を表現しています。「竹塗」は、竹の節や筋、煤けた感じなどを漆で表現した技法で、新潟漆器を代表する塗りです。
そのほかにも、金磨塗(きんまぬり)、青銅塗(せいどうぬり)、青貝塗(あおかいぬり)、呂色塗(ろいろぬり)、紫檀塗(したんぬり)などの伝統的な技法、さらには新作塗りの「夕日塗」といった、さまざまな漆器を楽しむことができます。

History / 歴史

新潟漆器 - 歴史

古くから物資の交易地だった新潟市は、海や陸から各地の文化が入ってくる土地であり、漆塗りの技術もそんな文化の一つです。
新潟漆器の歴史は、江戸時代初期の1615年~1624年(元和年間)に秋田の「春慶塗(しゅんけいぬり)」が伝えられたことが始まりとされています。当時は盆や膳などの日用品作りが中心でした。
1638年(寛永15年)に「椀店(わんだな)」という塗り物の専売地域が定められ、漆器づくりは保護されます。1764年~1771年(明和年間)に蒔絵(まきえ)の技法が伝わり、19世紀初「磯草塗」や「金磨塗」など新潟独自の塗りの技法が生まれました。
新潟は北前船の寄港地であったことから、江戸・大坂をはじめとして日本各地に販路が広がり、江戸時代末期には新潟は日本有数の漆器の生産地となっていきます。そして、明治時代中期に「竹塗」の技法が伝えられ、新潟漆器を代表する技法の一つとなりました。
新潟漆器の特徴である多彩な塗りは、いろいろな地方の技術を吸収し、さらに発展させた新潟の人々の努力の賜物です。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.木固め 素地に生漆(きうるし)を塗り、十分に浸透させます。生漆が素地に浸透することによって、防水効果が生まれます。
    素地に接合部分がある場合は、必要に応じて、生漆と米糊を練った「糊漆(のりうるし)」で接合部分に布を貼りつけて補強します。
    素地にすきまや傷がある場合は、「刻苧(こくそ)」を埋め込み素地の表面を整えます。「刻苧」は、生漆、糊状にした米飯、小麦粉、木くずを練り合わせたものです。
  2. 2.錆付け ①珪藻土を焼いて精製した「地の粉(じのこ)」や、砥石を切り出したときに出る「砥の粉(とのこ)」を水で練り、生漆を混ぜ、「錆(さび)」という粘土状の下地を作ります。
    ②ヘラなどを使って、「錆」を素地全体に均一にこすりつけます。
    ③「錆」が乾いて固まってから、水でぬらした砥石や耐水ペーパーで表面を水研ぎし、なめらかにします。水研ぎとは濡らした状態でみがくことです。
    ④素地を丈夫にし形状を安定させるため、②③を何度か繰り返します。
  3. 3.竹節付け ①素地の表面に専用のヘラで「錆」を盛り、竹の節らしく隆起を作ります。
    ②竹の節の溝になる部分をノミで削り、竹の節らしく見えるよう形を整えます。
    ③竹の枝節(えだぶし)や根節(ねぶし)など、細かい部分も「錆」を盛って作ります。
  4. 4.錆研ぎ 「錆」が乾いて固まってから、水でぬらした砥石や耐水ペーパーで表面を水研ぎし、なめらかにします。
  5. 5.中塗り 青竹色・煤竹色・胡麻竹色の中塗り用の色漆を、必要に応じて使って中塗りをします。ハケで色漆を全面に塗り、「乾燥風呂」と呼ばれる漆乾燥用の室(むろ)に入れて乾かします。漆の凝固には適切な湿度と温度が必要なため、「乾燥風呂」の湿度は70%前後、温度は20℃前後に保たれています。
  6. 6.中塗研ぎ 中塗りが乾いて固まってから、水でぬらした砥石や耐水ペーパーで表面を水研ぎし、なめらかにします。
  7. 7.上塗り 上塗り用の色漆も青竹色・煤竹色・胡麻竹色の3色あります。青竹色と胡麻竹色は中塗り用の色漆を同じものですが、煤竹色の色漆は中塗り用の色漆と少し配合が違います。
    上塗り用の色漆をハケで全面に塗り、再び「乾燥風呂」に入れて乾かします。胡麻竹色については、上塗りの色漆が乾く前に炭粉をふるって蒔きつけたあと、「乾燥風呂」に入れます。
  8. 8.研ぎ 上塗りが乾いて固まってから、水でぬらした砥石や耐水ペーパーで表面を水研ぎし、なめらかにします。
  9. 9.模様付 竹らしく見えるように、地肌模様をつけます。
    竹の筋の模様は水研ぎのあとに筋引き棒を使ってつける場合と、筋引き棒を使わずに上塗りのときにハケで表現する場合があります。
    また、必要に応じて、他の部分の質感を出します。竹を割ったときの断面や竹の切り口の細かい粒模様は、粘り気のある漆をハケやヘラで載せて表現します。イガや節付近の斑点は蒔絵筆で描きます。
  10. 10.真菰蒔(まこもまき) ①竹の節の部分を中心にして周りをぼかすように透明漆を塗ります。
    ②まだ生乾きのうちに、「真菰(まこも)(イネ科の植物を乾燥させた粉)」を筆で蒔きつけ、煤けた感じを出します。煤竹色にする場合は全体に「真菰」を蒔きつけます。
    ③「真菰」をつけたら、再び「乾燥風呂」に入れて乾かします。
  11. 11.真菰落し 研磨用の炭を粉末にしたものと水をハケにつけ、「真菰」を蒔いた表面を水研ぎします。研ぐことによって余分な「真菰」を落とし、竹の節の自然な風合いを出します。
  12. 12.摺漆(すりうるし) 生漆を全面に摺りこみ、「乾燥風呂」で乾かします。摺漆を数回繰り返すと、つややかに仕上がります。
  13. 13.完成

Leading Ateliers / 代表的な製造元

広沢漆芸 ヒロサワシツゲイ

全て手作業で特注漆家具から漆塗箸まで、時代の裏づけがある漆にこだわり、時間と手間をかけ一点一点作り上げています。

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