大内塗

大内塗 オオウチヌリ

渋みのある色漆で描かれた秋草紋様
椀や盆のほか、夫婦円満を象徴する人形も人気

Description / 特徴・産地

大内塗とは?

大内塗(おおうちぬり)は、山口県山口市周辺で作られている漆器です。室町時代に山口県で勢力を誇った大内氏のもとで誕生したことから、のちに「大内塗」の名がつけられました。
大内塗の特徴は、渋みのある深い朱色の地塗りの上に、色漆でハギやススキなどの秋の草を描き、金箔で大内氏の家紋である「大内菱(おおうちびし)」をあしらった優雅な絵模様です。また、大内塗は何度も漆塗りを繰り返すために、丈夫で退色しにくくなっています。
大内塗は椀や盆なども作られていますが、とりわけ「大内人形(大内雛)」が有名であり、土産品として人気があります。大内氏第9代当主・大内弘世(おおうちひろよ)が、京都から迎えた花嫁をなぐさめるために、京から多くの人形師を呼び寄せ屋敷を人形で飾ったという話にちなんで、大内人形が作られました。大内人形は、丸顔で切れ長の目におちょぼ口の男女一対の人形からなり、夫婦円満の象徴として親しまれています。

History / 歴史

大内塗 - 歴史

大内塗は、14世紀後半の大内弘世の頃、京都にあこがれた大内氏が、都から漆塗り職人を山口に呼び寄せ、漆器を作らせるようになったのが始まりとされています。山口に居をかまえた大内氏は、京の都をまねて町づくりを行い文化を奨励したため、山口に大内文化と呼ばれる京の文化と大陸文化が融合した独特の文化が発達しました。大内文化のもと漆器づくりは栄え、漆器は大内氏にとって中国や朝鮮への重要な輸出品の一つとなります。
その後、大内氏が滅び大陸との交易は中断され、また江戸時代になって毛利氏が城を萩に移したことにより、高価な漆器づくりは姿を消しました。しかし、明治時代になって毛利家の所蔵品から大内時代の豪華な漆器椀セット「大内椀」が発見され、この大内椀を参考にして大内塗が再興されます。「大内塗」の名称も明治時代から使われるようになったものです。大正時代には大内人形の原形が山口県工業試験場によって作られ、現在の大内塗へと続いています。

Production Process / 制作工程

大内塗 - 制作工程 写真提供:山口県観光連盟

  1. 1.木地 伐採した木材を数年かけてゆっくり自然乾燥させ、作品に適した材質で、よく乾燥した木材を選びます。木材は、椀・丸盆・人形といった製品にはチナイ、ケヤキ、トチなどが、重箱・硯箱といった部品を組み合わせて作る指物(さしもの)にはヒノキ、キリ、ホオなどが使われます。
  2. 2.下地 できあがった木地に傷や不完全な接着部分がないかチェックします。漆をムラなく塗るためには表面は滑らかでなくてはなりません。傷などがあればこくそ漆(生漆、鋸くず、米のりを混ぜ合わせたもの)を埋め込んでなめらかにします。椀の底や縁などの割れたり欠けたりしやすい部分に、和紙や布などを接着用の漆で貼って補強し、木地の凸凹をならし、生漆・砥の粉(とのこ)・地の粉(じのこ)を混ぜた下地漆をヘラやハケで塗り乾燥させます。乾燥した下地漆を耐水サンドペーパーや砥石で水研ぎ(みずとぎ)します。水研ぎとは濡らした状態でみがくことです。
  3. 3.下塗り 研ぎあがった下地に下塗り漆を塗り、乾燥させます。乾燥した下塗りを、木炭(漆研ぎ用の特殊な炭)や耐水サンドペーパーで水研ぎします。
  4. 4.中塗り 研ぎあがった下塗りに中塗り漆を塗り、乾燥させ、中塗りを木炭や耐水サンドペーパーで水研ぎします。
  5. 5.上塗り 研ぎあがった中塗りに上塗り漆を塗ります。チリやホコリを取り除くために、特別な和紙で上塗り用の漆を数回こした上に、ホコリのたたない「上塗り室」で注意深く丁寧に塗ります。
    「室(むろ)」に入れ、湿度と温度を調節しながら、じっくり12時間~24時間かけて乾かします。漆は酸素と水分を吸収し化学変化を起こして、液体から固体に変化します。
  6. 6.加飾 必要な加飾をほどこします。代表的な加飾には色漆で模様を描く「漆絵(うるしえ)」や、漆で金箔・銀箔などを貼りつけて模様を描く「箔絵(はくえ)」、漆で描いた模様の上に金粉・銀粉などを蒔いて文様を仕上げる蒔絵(まきえ)などがあります。
    ほとんどが手作業のため、一つの作品を作るのに約1ヶ月~2ヶ月かかります。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

中村民芸社 ナカムラミンゲイシャ

弊社の特色は、何といっても大内塗漆器・大内人形をすべて下地から蒔絵付まで一貫生産し、木地の選択、上質の漆、デザインにこだわりを持った塗り物づくりが出来るということです。

桑原大内塗大内人形製作所 クワハラオオウチヌリオオウチニンギョウセイサクショ

大内塗は昔ながらの技法を用い、本うるし、純金箔・粉を使用し手間ひまをかけ製造しています。 大内人形も同じ技法で、見る方が和み癒される様なお人形作りを心がけております。

Facility Information / 関連施設情報

山口ふるさと伝承総合センター

  • 住所
  • 電話
    083-928-3333
  • 定休日
    8/14~16、12/29~1/5
  • 営業時間
    9:00~17:00
  • アクセス
    防長バス 竪小路停留所下車徒歩5分 JR山口線 山口駅から徒歩25分 中国自動車道 山口ICから車で15分、小郡ICから車で20分
  • HP

Other Lacquerware / 漆器一覧

Other Crafts Made in Yamaguchi / 山口県の工芸品