香川漆器

香川漆器 カガワシッキ

鮮やかな色彩バリエーションが魅力の漆器
東南アジアから伝わった個性豊かな技法

Description / 特徴・産地

香川漆器とは?

香川漆器(かがわしっき)は、香川県高松市を中心に生産されている漆器です。菓子器や盆、座卓、飾り棚など多岐に渡る商品があり、様々な生活シーンで幅広く愛されています。
香川漆器の特徴は、多彩で優雅な色漆が美しく、製作される商品の種類が豊富であることです。使い込むうちにしっとりした手触りと美しい艶が出て、割れにくい漆器となります。
代表的な技法は、江戸時代後期に玉楮象谷(たまかじぞうこく)が中国やタイから伝来した漆器を研究し確立しました。古来の漆器技法から生まれた、「蒟醤(きんま)」、「存清(ぞんせい)」などは現在も受け継がれている技法です。
「蒟醤」という名称は、タイの植物の実の名前が由来と言われ、紋様を線彫りした窪みに、色漆を色ごとに充填する作業です。繰り返し作業を行い、全ての充填が終わると表面を平らに研ぎ出します。
「存清」は東南アジアから中国を経て日本に伝わった技法で、黒、赤、黄の地の漆面に色漆(いろうるし)で絵を描き輪郭や絵の主要部を線彫り、毛彫りをして仕上げます。

History / 歴史

香川漆器は江戸時代の藩政の保護を受け、品質と生産量ともに着実に発展してきました。1638年(寛永15年)に水戸から高松へ松平頼重が入られ漆器製作や彫刻を奨励します。名工や巨匠と呼ばれる職人を排出しており、中でも玉楮象谷(たまかじぞうこく)が有名です。
1806年(文化3年)に高松市で生まれた玉楮象谷は、20歳になると京都へ遊学しました。京都で塗師・彫刻師・絵師らと交友し、中国から伝来した漆塗技法を研究開拓します。1869年(明治2年)に64才で逝去するまで、藩主3代に仕えて漆器製作に尽力しました。
他にも、「後藤塗(ごとうぬり)」と呼ばれる塗手法を創り出した後藤太平も著名な名称の一人です。重要無形文化財醤技術保持者に指定された、磯井如真(いそいじょしん)、音丸耕堂(おとまるこうどう)などの巨匠も香川漆器の発展に功労してきました。
1949年(昭和24年)に重要漆工業団地の指定を受け、香川漆器の年間生産額は約250億円にまで発展しました。展示会などに入賞する漆芸作家は70人以上で、漆器関係の仕事に従事する人は約2,000名と言われています。
また、キンマ、存清のほか彫漆、後藤塗り、象谷塗りなど五品目が香川の伝統的工芸に指定されている。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.木固め 香川漆器の代表的な技法である象谷(ぞうこく)塗りを基本にして、工程をご紹介します。象谷塗は、創案者である玉楮象谷(たまかじぞうこく)の名前から名づけられた技法です。
    トチをくりぬいた白木地に、生漆を塗り込みます。白木地とはまだ塗られていない状態の木型のことです。ここで木地に塗り残しがあると、仕上がった製品の堅牢さに影響がでてしまいます。全面に丁寧に塗っていく作業が、後工程の全ての基となるため重要な工程です。生漆を塗った後は、一日「ムロ」という場所に入れて乾燥させます。しっかり乾燥させてから後工程の作業にかかるためです。
  2. 2.木地研ぎ ロクロを使って、木地を研いで表面をなめらかにしていきます。木地の荒れやササクレなどがないように、丁寧に修正する工程です。木地研ぎ作業によって、塗り工程での接着が良くなるという効果があります。
    生漆に欅(けやき)のおがくずなどをいれて混ぜて作るのが、刻宇(こくう)です。木地の虫食いの穴や木地のへこんだ部分へ刻宇を塗り、乾いたら次に塗る漆の接着を良くするため表面をペーパーで滑らかにします。
  3. 3.塗り重ね 再度、生漆だけを使って数回塗り重ねをしていきます。塗り重ねの工程は、塗りの後に水研ぎをする、という作業の繰り返しです。塗りと塗りの間に、必ず水研ぎの作業が入ります。塗りの接着強度をより強くするために欠かせない作業です。漆は乾くのには一日ほどかかるため、例えば5回の塗り重ねは、最低でも5日以上かかることになります。塗った後は、表面がしっかりと乾燥してから次の工程へ進むことが、塗り重ね作業の重要なポイントです。
  4. 4.塗り込み 生漆を接着剤のように使って、池や川辺に自生する「真菰(まこも)」を塗りこみます。真菰は川辺に自生するコモガヤの一種です。黒い実の部分を、黒い粉末にして使用します。象谷塗りでは、真菰の黒い粉末が、木地の紋様の中に入り黒色の艶となるのです。真菰は塗りこんだ後、余分な粉を払い落とします。
    漆は耐水性を増すための塗料であり、ニカワなどと混ぜると接着剤代わりにもなる万能塗料です。艶を出すために、漆をタンポという道具で塗って、余分な漆を布で拭き取ります。
  5. 5.ツヤだし 「立漆塗(たてうるしぬり)」の場合は、炭を使って表面を滑らかにして、重ねる漆の接着をよくするのが特徴です。塗立朱合漆を使って練った色漆を刷毛で塗って、乾燥させて一度で艶を出します。「後藤塗(ごとうぬり)」は、独特の斑紋が特徴で、中塗の上から朱合漆に朱を加えた漆を塗った後、乾かないうちに指先を使って斑紋を描きます。直接指先を叩いたり、撫でるようにして付けていくのが斑紋です。「斑紋」の技法は、指たたき、指なでと呼ばれ、指の叩き方を変えることで模様が変化します。
    漆の塗りを繰り返すため、使い込むほどに艶がでて味わいが深くなるのが香川漆器です。他にも「蒟醤(きんま)」、「存清(ぞんせい)」、「彫漆(ちょうしつ)」などの技法があります。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

香川県商工奨励館

香川県商工奨励館

See more Lacquerware / 漆器一覧

See items made in Kagawa / 香川県の工芸品