- 仏壇・仏具
- 石川県
金沢仏壇 カナザワブツダン
煌びやかな金箔の蒔絵、艶やかな漆黒
加賀百万石の文化と伝統の技が光る仏壇
Description / 特徴・産地
金沢仏壇とは?
金沢仏壇(かなざわぶつだん)は、石川県金沢市で作られている仏壇です。加賀百万石の金沢で育まれた加賀文化の華やかさと、加賀藩細工所の技術の高さを今に受け継いでいます。1976年(昭和51年)に、国の伝統工芸品に指定されました。
金沢仏壇の特徴は、美術工芸品として高い評価を得ている加賀蒔絵(かがまきえ)の技術が、ふんだんに盛り込まれていることです。前柱や中柱、戸板裏などのあらゆる部分に、「磨き蒔絵」、「高蒔絵」などの技法を駆使した蒔絵が施されています。欄間の下の長押が、曲線を描く「うねり長押」であることや、上戸や障子の取り付けが回転軸であること、彫刻に黒檀の丸彫りや、サンゴ、象牙などの象嵌が用いられていることなどもあります。
金沢は、国内の金箔生産の大半を占める地域であるため、質の良い金箔も手に入りやすいという利点があります。このため、ふんだんに良質の金箔を使っていることも、金沢仏壇の魅力です。
History / 歴史
金沢仏壇の起源は、17世紀後半まで遡るといわれています。時の加賀藩三代藩主、前田利常が、京都や大阪から多くの職人を集めて、美術工芸品を制作する細工所を作りました。
当時の細工所は、蒔絵、漆、紙金工、絵、象眼、刀鍛治など、およそ23ものカテゴリーに分かれていたといいます。ここで作られた美術工芸品は、将軍家や公家、寺社への進物や寄進(きしん)、下賜(かし)などに利用されていました。その細工所で、優秀な職人が数多く輩出され、その流れを汲むものが、仏壇を作るようになったと考えられています。
元々、加賀藩は、古くから仏教が広く浸透していた地域でした。1471年(文明3年)に、南加賀の吉崎(現福井県あわら市)に、浄土真宗の僧で、本願寺中興の祖と言われる蓮如(れんにょ)が、吉崎御坊を建立ました。これをきっかけに、北陸一円に浄土真宗が広く普及していきます。その後江戸時代になって、幕府の宗門改革で各家庭への仏壇の設置が進んだこともあり、加賀では他の地域よりも仏壇が浸透しやすい素地がありました。
Production Process / 制作工程
- 1.木地(きじ)製造工程 仏壇の外側や須弥、大柱、引出、天井などを作る作業です。材料には、耐久性を考えて、ヒバやイチョウなどが用いられます。まず、素材となる木をよく乾燥させてから、各部の寸法に合わせて切り出します。次に厚さや形をのこぎりなどで削り出し、最後に、ホゾや穴溝などの細かい部分を作っていきます。
- 2.宮殿(くうでん)製造工程 宮殿を作る工程です。宮殿というのは、仏壇内に置かれる、屋根の部分を指します。材料としては、ベニマツやスギ、イチョウなどが用いられます。小さい部品の一つ一つから手作りし、丁寧に組み上げていきます。部品の数は、一本の仏壇で千個を優に超え、気の遠くなるような、根気のいる緻密な作業です。
- 3. 箔彫(はくぼり)製造工程 箔彫は、仏壇の装飾に用いる彫刻の内、漆や金箔で仕上げる部分を指します。素材として使用されるのは、ベニマツなどです。よく乾燥させた木を、模様に合わせて切り出した後に、下絵を描きます。その後、模様を荒く彫り出していき、用途に応じて、たくさんのノミや彫刻刀を使い分けながら、細かい部分を仕上げます。作り終えたら、塗りに出されます。
- 4. 木地彫(きじぼり)製造工程 仏壇に施される彫刻の内、障子の上腰、中腰、下腰、前指などの部分は、木地をいかし、漆塗りや箔押しを行いません。これらの彫刻を木地彫といいます。材料となるのは、ツゲやクワなどの硬い木です。十分乾燥させたこれらの木に下絵を描き、花鳥や天人などの模様を彫り出します。トクサなどで磨き上げたら、組み立て工程に回します。
- 5. 金具製造工程 装飾に使用する金具を作ります。材料となるのは銅や真鍮ですが、高価なものになると、銀が使用される場合もあります。材料となる地金に、針で飾りの形を写し取った後、タガネを使って切り出し、細かい模様を彫っていきます。模様を作り終えたら硝酸に浸して水で流した後、十分に乾燥させます。最後にメッキをかけて仕上げます。
- 6.塗加工工程 木地や宮殿、箔彫に漆を塗る工程です。木地の疵や節目を削ってから、刻苧漆(こくそうるし)と呼ばれるものを塗り、紙やすりなど磨いて表面を整えます。砥の粉と下地漆を混ぜた、錆下地を繰り返し塗ってから、砥石で表面を研ぎます。中塗りをして乾燥させ、研いでから上塗りを行います。
- 7.蒔絵(まきえ)工程 前柱や中柱、戸板裏などに、蒔絵の手法で模様をつける工程です。まず、模様を描く部分に、美濃紙(みのがみ)と漆で模様を転写します。その後、立体感を出すために、漆上げという、漆を重ねて高さを出す作業を行い、色漆で模様を描き、金粉や銀粉を蒔きます。研ぎ出し蒔絵の場合は、さらに漆をぬり、模様を研ぎだしていきます。
- 8.呂色(ろいろ)工程 呂色は、漆を塗った部分や蒔絵を施した部分を磨き、つやを出す作業のことです。呂色漆を塗った後に乾燥させ、呂色炭で研ぎます。砥の粉と菜種油を練った物でこすって研ぎ疵を消した後に、角の粉などを使ってさらに磨いてつや出しをします。
- 9. 箔押(はくおし)工程 金箔を貼りつける作業を箔押といいます。漆の上塗りが終わったものに生漆を塗った後、金箔を一枚ずつ丁寧に貼り付けていきます。真綿で押しながら金箔を密着させ、軽くなぞって継ぎ目を消します。
- 10.組立工程 木地や宮殿、箔彫、木地彫、金物などのすべての部品を組み上げます。仏壇作りの最終工程です。
Representative Manufacturers / 代表的な製造元
池田大仏堂 イケダダイブツドウ
室町文化を今に伝えて、金沢の地において百四十余年。 金沢仏壇は、伝統工芸の集大成と言われています。 通産大臣指定の伝統的工芸品から、現代のライフスタイルにマッチした新型の仏壇、又、各宗派の仏壇や、仏具・薫香など、 多彩に取揃えております。
-
住所
-
HP
-
電話076-222-5550
-
見学不可
株式会社米永 カブシキガイシャヨネナガ
-
創業1883年 (明治16年)
-
代表米永 章
-
住所
-
HP
-
電話076-280-1930
-
見学不可
Facility Information / 関連施設情報
石川県立伝統産業工芸館
-
住所
-
電話076-262-2020
-
定休日4月~11月は、毎月第3木曜日 12月~3月は、木曜日及び年末年始(祝日の木曜日は除く)
-
営業時間9:00~17:00
-
アクセスバス: JR金沢駅より北鉄バス小立野方面行きに乗車、約15分。出羽町で下車。徒歩1分。 タクシー: JR金沢駅から約15分。 自動車: 北陸自動車道金沢東または金沢西インターから30分。 ※駐車場有(無料)
-
HP