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七尾仏壇 ナナオブツダン
豪華絢爛な金箔と蒔絵の華やかさ
堅牢な造りと荘厳な装飾の伝統芸術
Description / 特徴・産地
七尾仏壇とは?
七尾仏壇(ななおぶつだん)は、石川県七尾市で製造されている仏壇です。北陸は、古くから浄土真宗が広く根付いた土地柄で、石川県には他にも、金沢仏壇や美川仏壇など、よく知られる仏壇の産地があります。
七尾仏壇の特徴は、堅牢さと豪華さです。七尾のある能登地方は山間部が多いため、出来上がった仏壇は、山道を担いで運ばれていました。このため、過酷な運搬方法にも耐えうる堅牢な造りが求められたのです
。釘を使わないで組み立てる「ほぞ組み」という技法や、鏡板(かがみいた:本尊、脇仏の後板)と言われる部分を二重にした「二重鏡板」という独自の技法で、より頑丈な構造となっています。
石川県は、古くから漆塗りや金箔などの優れた工芸品を生み出している地域でした。七尾仏壇にも、それらの技術が盛り込まれています。破風(はふ)は荘厳さを感じさせる「二重破風」で、金箔をふんだんに使い、青貝を多用した蒔絵が施されています。金沢仏壇が雅やかな雰囲気であるのに比べると、より豪華絢爛で荘厳な印象を与えます。
History / 歴史
七尾仏壇の歴史は、室町時代の初めにその端緒を見ることができます。当時、能登の守護職であった畠山氏は、細工所を作り、塗りや蒔絵、彫刻などの産業を保護しました。七尾仏壇の技術的な素地は、この頃に始まったと言われます。
その後、1582年(天正10年)に前田利家が七尾城に入城した際には、さらに多くの職人が呼び寄せられました。1616年(元和2年)の加賀藩の記録には、塗師町通りという記載がみられ、七尾では仏壇店を「ぬしや」と呼ぶことを踏まえると、この時期にはすでに仏壇の職人町ができていたとみられます。
能登地方には、七尾仏壇の材料となるアテやヒバが豊富にあり、湿度も漆塗りに適していました。祭が盛んで、神輿を作る技術が仏壇作りの技術と共通だったことも、七尾に仏壇産業が根付いた背景と考えられます。当時の七尾は能登の中心であり、浄土真宗が広く信仰されていた土壌とも相俟って、仏壇の需要もありました。このため、七尾は現在も仏壇の産地として確立されたのです。1978年(昭和53年)には、長い歴史と技術の高さが認められ、国の伝統工芸品の指定を受けています。
Production Process / 制作工程
- 1.木彫り 仏壇の装飾に使われる、彫刻部分を作る工程です。最初に、材料となる木を選びます。主に使われるのは、紅松、イチョウ、タブ、紫檀、黒檀などです。素材となる木の乾燥が足りないと、歪みや割れなどが生じる可能性があるので、よく乾燥した、節やひび割れなどの無いものを選びます。次に、彫刻を施す部品の大きさに合わせて大体の形に木材を切り出します(木取り)。木取りが終わったら、材料の木に下絵を描きます。下絵に合わせて、ノミと玄能(げんのう:かなづち)で荒く模様を掘り出し、最後に表面を仕上げます。
- 2.木地 仏壇の外側や、柱類、天井、障子、壇縁などの部分を作る工程です。材料となるのは、狂いが少なく耐久性に優れたアテやヒバです。よく乾燥させたこれらの木材から吟味して、歪みや反り、節のないものを選びます。木地部分は、「ほぞ組み」といって、木を削って「ほぞ」と呼ばれる嵌合部分を作り、それを嵌め合せて組み立てる技法が用いられます。釘を使わない「ほぞ組み」は、頑丈な構造で耐久性がある他、分解可能なのでメンテナンスがしやすいという利点もあります。
- 3.蒔絵 (まきえ) 蒔絵は、漆塗りを施した部分に、漆で絵を描き、金粉や青貝で装飾する工程です。錫粉と漆を混ぜたもので絵柄を描き、乾燥させたら、形に合わせて切った青貝を、膠(にかわ)で貼り付けます。「錆(さび)」とよばれる砥の粉(とのこ)と漆を混ぜたもので、絵を盛り上げ、金粉を蒔きます。
- 4.金具 前戸や障子、柱などに取り付ける、金属の飾りや蝶番(ちょうつがい)を作る工程です。材料として用いられるのは、真鍮(しんちゅう)です。真鍮板を形に合わせて切り取り、タガネで模様を彫ります。不要部分を切り落としたら、表面を整えて、金メッキをかけます。
- 5.金箔貼り 仏壇の内側部分や、中立(なかだち)、彫刻などに、金箔を貼り付ける工程です。まず、金箔を貼る部分に生漆を塗り、布や綿でふき取ります。金箔専用の箸で金箔をのせ、真綿で軽く押しつけた後に、金箔と金箔のつなぎ目をそっとふき取ってならします。
- 6.組立 各工程で作られ、塗装が終わった木地や中立(なかだち)、彫刻、金具などを組み立てて一本の仏壇に仕上げる最後の工程です。埃やゴミなどを拭き取って完成します。
Representative Manufacturers / 代表的な製造元
有限会社高沢仏壇店 タカザワブツダンテン
仏壇、仏具のみならず、より高度の伝統工法が必要とされる神輿、寺院用具等のご用命も承ります。
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定休日年末年始
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代表高沢 秀晃
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営業時間9:00~18:00
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住所
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HP
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電話0767-53-2737
Facility Information / 関連施設情報
石川県立伝統産業工芸館
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住所
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電話076-262-2020
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定休日4月~11月は、毎月第3木曜日 12月~3月は、木曜日及び年末年始(祝日の木曜日は除く)
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営業時間9:00~17:00
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アクセスバス: JR金沢駅より北鉄バス小立野方面行きに乗車、約15分。出羽町で下車。徒歩1分。 タクシー: JR金沢駅から約15分。 自動車: 北陸自動車道金沢東または金沢西インターから30分。 ※駐車場有(無料)
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