有松絞・鳴海絞

有松絞・鳴海絞 アリマツシボリ・ナルミシボリ

木綿の白と藍色の濃淡によるコントラスト
世界に広がる絞り染めの代名詞

Description / 特徴・産地

有松絞・鳴海絞とは?

有松絞・鳴海絞(ありまつしぼり・なるみしぼり)は、愛知県名古屋市緑区周辺で作られている絞り染めです。日本国内の絞り製品の多くはここで生産されており、国の伝統工芸品に指定されています。「有松絞(ありまつしぼり)」「鳴海絞(なるみしぼり)」とも呼ばれます。
有松絞・鳴海絞の特徴は、絞りのときにできる濃淡や文様の独特な風合いです。「縫絞(ぬいしぼり)」「くも絞」「雪花絞(せっかしぼり)」「三浦絞(みうらしぼり)」「鹿の子絞(かのこしぼり)」など多種多様な技法が考案され、現在では100種類にも及ぶ絞りの技法があります。
1992年に「第一回国際絞り会議」が開催されたことを皮切りに、世界中に絞りのネットワークを展開し、有松地区や鳴海地区は絞りのメッカともいわれるようになりました。今では「SHIBORI」として世界中に愛されています。

History / 歴史

有松絞・鳴海絞 - 歴史

有松絞・鳴海絞のルーツは江戸時代初期に遡ります。絞りの技法自体は奈良時代に始まったものですが、1610年(慶長15年)から1614年(慶長19年)にかけて行われた名古屋城築城の手伝いに豊後(現在の大分県)から来た人たちが着ていた絞り染めの着物を、有松地区に移住してきていた竹田庄九朗が見て、三河木綿に絞り染めを施した手ぬぐいをつくったことから有松絞・鳴海絞の歴史が始まりました。
1655年(承応4年)には、豊後からきた女性により豊後絞りが伝えられ、有松絞の絞り染めは変化を遂げました。このときに伝えられた技法が「三浦絞り」です。当時から生産の中心は有松地区でしたが、東海道五十三次の一つである鳴海宿で旅人が故郷へのお土産にと買い求めたことから「有松絞」「鳴海絞」として繁栄しました。その後、有松地区と鳴海地区が名古屋市に編入したことから、「有松絞・鳴海絞」として発展を続けています。

General Production Process / 制作工程

有松絞・鳴海絞 - 制作工程

  1. 1.型紙彫り 製品を企画して図案が決まったら、よく切れる小刀やハト目抜きで、模様を切り抜いたり穴をあけたりして、図案に合わせて型紙を作成します。
  2. 2.下絵刷り 括り(くくり)作業を行うための下絵を生地に刷ります。
    まず、糊を塗布したり、湯気を当てて生地のしわを伸ばす「湯のし」をしたりして下絵をつけやすくします。その後、型紙と布を重ねて置き、刷り師が布地の上から刷り込んで下絵を布地に写します。
    この下絵刷りには、つゆ草の花弁から取った青花液またはその代用品を使用し、括り作業が完了すると水か熱湯で洗って消してしまいます。
  3. 3.括り(くくり) 絞り職人が、下絵に合わせて綿糸や絹糸を生地に括りつけます。技法ごとに専門の職人がおり、100種以上の技法・文様が生み出されてきました。長い年月をかけて技法・技術の進歩を重ねてきており、技法によって使用する道具も異なります。代表的な道具には、烏口台(うこうだい・からすぐちだい)・鹿の子台(かのこだい)・巻き上げ台などがあります。
    括りはとても手間のかかる作業で、かつては周辺地域で農家の副業として広く行われていましたが、最近では人件費の少ない海外に委託されている場合も少なくありません。
  4. 4.染色 専業の染め屋によって各種の染色が行われます。括り作業で糸によって締められた部分には染料が染み込まないため、これを利用して模様をつくります。絞りは一般的に侵染(ひたしぞめ・しんせん・つけぞめ)で染色しますが、特殊な染め方をする場合もあります。
    染色の際はまず、下絵や、括りの作業中についてしまった汚れを落とすために漂白を行います。そして、括りがされた状態で布地を染めていきます。何色かに染め分ける場合は、染めない部分の防染作業を行った上で染色を行います。
    括りと染色の種類によっていくつかの方法がありますが、防染と浸染を繰り返し、一反を染めるのに20回以上も浸染します。染液は布地に適した染料や助剤を使用し、用途や量によって染料や染め方を変えて染色されます。
  5. 5.糸抜き 染色が完了したら乾燥させ、十分に乾燥したら括った糸を取り除きます。絞りは糸を締めることによって防染しているため、とくに固く糸留めをしています。その固くしまった括り糸を、布を傷つけないように抜いていく作業には細心の注意が必要です。
    絞りの種類によって糸抜きの方法も異なり、大分して4種類くらいの方法があります。とても細かい作業で、1反の糸抜きを完了させるのに3〜4日ほどかかる場合もあります。
    糸抜きをした生地は縮んでいるため、蒸気を当てて湯のしし、布のしわを取って布目を整えます。最後に必要に応じて付帯加工を行い、反物にしたり、仮縫いして図柄のわかる「絵羽仕上げ(えばしあげ)」をしたりして仕上げて製品となります。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

有松・鳴海絞会館

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