- 染色品
- 東京都
東京無地染 トウキョウムジゾメ
今に伝わる江戸っ子の粋
時代を超えて息づく格式高い単色染めの技術
Description / 特徴・産地
東京無地染とは?
東京無地染(とうきょうむじぞめ)とは、江戸時代中後期の染物職人たちにより使われた江戸紫・藍・紅花・江戸茶等の無地染を起源として発展した染物です。
現在の主な産地は、東京都の新宿区、中野区、杉並区や神奈川県となっています。
無地染は染色法の中で最も基本的な技法ですが、東京無地染には絹織物が使われるため、控えめでありながらも品のある印象を与えてくれます。ただ、13mにも及ぶ反物をむらなく仕上げるのは至難の業。しかし、東京無地染はたしかな技術で美しく染め上げています。これが、単色染めでありながらも格式高いとされる理由です。
現在の東京無地染は、染料の進化や生地の高級化に対応しながらも、江戸時代より伝わる色見本を手がかりに微妙な色の違いを今も表現しています。
また、色無地は一度染めた色を色抜きしてほかの色に染め直すこともできるため、年齢や流行に左右されずいつまでも美しく着ることができます。
History / 歴史
藍と紅花が仏教の伝来と共に渡来して以降、奈良・平安時代には大和民族独特の染め技術が確立。無地染には地染をはじめ、ぼかし、絞り等が盛んに行われるようになりました。
鎌倉時代には絹織物が発展し、草木染めに必要な灰汁、鉄媒染、酢も進化したことから、浸し染は大きく進歩しました。江戸時代には紫紺で染めた「江戸紫」が「江戸っ子の粋」としてもてはやされるようになります。
当時の様相を反映する言葉に「江戸紫に京鹿の子」というものがありますが、これは「江戸時代の染色のうち、 紫は江戸、鹿の子絞りは京を第一とする」という意味で、東西両都の染色の特徴を言い当てたものです。
このように江戸紫、江戸茶をはじめとする無地染は、江戸庶民の間にひとつの文化として芽生え、広く愛用されました。
現在も普段着として取り入れたり、紋を入れて準礼装として着用したりと、時代を超えて息づいています。
Production Process / 制作工程
- 1.検品 白生地は精練時(不純物などを除去し、絹特有の風合い光沢を出すために行う工程)に生じる擦れや折れ、織るときの傷など生地の不具合を点検し、以後の染色加工に対処します。
- 2.地入れ 染色を容易にするための処理で、高温の湯槽で不純物を取り除き、生地の表面を滑らかにします。染め斑が出ないようにするための重要な工程で、このあと水洗いをします。
- 3.染色 染料を水または熱湯で撹拌し、均一に染まるよう緩染剤を使い、温度、時間などに配慮しながら指定の色に染め付けます。
- 4.色合わせ 色を構成している明度、 彩度、色相の染液を創作し、見本と同じ色に染め上げます。
- 5.水洗い 絹特有の光沢や絹鳴り、手触りをよくするため、染め上がった生地に残る染色時の不純物をたっぷりの清水で洗い流します。その後、堅牢度向上のための後処理を行います。
- 6.乾燥 脱水した生地を、竿かけ、または張干しにて自然乾燥させます。
- 7.張り仕上 染色された生地に、つや・質量感をつけるため、刷毛で天然糊を引きます。
- 8.整理・検品 製品に応じて柔軟、糊付けなどを行い、湯のし機にかけ、巾をととのえて最終検品をします。