天童将棋駒

天童将棋駒 テンドウショウギコマ

美しい木目を持つ駒木地に、天然漆で力強く躍動感のある文字を表す天童将棋駒。伝統的な「書駒」に加え、彫駒・彫埋駒・盛上駒など多彩な技法が受け継がれています。1996年(平成8年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

天童将棋駒とは?

天童将棋駒(てんどうしょうぎこま)は、山形県天童市、山形市、村山市を中心に作られている将棋駒です。1996年(平成8年)4月8日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

天童将棋駒の特徴は、木地の美しい木目と、天然漆によって表される力強い駒文字にあります。

伝統的な「書き駒」は、駒木地の表面に筆と天然漆を用いて、将棋駒独特の書体を直接書いて仕上げます。天童では草書体の書き駒が伝統的に作られてきましたが、現在では楷書体を含むさまざまな書体が用いられています。

このほか、文字を印刀で彫って漆を入れる「彫駒」、彫った文字を漆で木地の高さまで埋める「彫埋駒」、彫埋駒の文字の上にさらに漆を重ねて立体的に盛り上げる「盛上駒」が作られています。

駒木地には、ホオ、ハクウンボク、イタヤカエデ、マユミ、ツゲなどの木材を用います。なかでもツゲは、きめが細かく適度な硬さを持つため、精緻な彫刻や文字表現に適した材料として用いられてきました。

駒木地には、柾目、斑、杢などさまざまな木目が現れます。赤柾、糸柾、虎斑、銀目、根杢、孔雀杢など、天然木ならではの異なる表情も将棋駒の見どころの一つです。

制作は、木地づくり、駒彫り、駒書き、漆仕上げなどを専門の職人が分担して行うことが多く、それぞれの技術を組み合わせて一組の将棋駒が完成します。

History / 歴史

天童将棋駒 - 歴史

日本で将棋が行われるようになった時期は明確ではありませんが、出土した将棋駒などから、平安時代の11世紀頃には将棋が行われていたことが確認されています。

天童の将棋駒産業の起源は、江戸時代後期にさかのぼります。

天童織田藩の前身となる織田氏の領地では、高畠に藩庁が置かれていた時代から将棋駒が作られており、1831年(天保2年)に織田氏が高畠から天童へ移る以前から、駒作りの技術が藩内に存在していたことが分かっています。

天童へ移った後、藩は凶作や財政難に苦しみました。そこで幕末期、藩の用人を務めた吉田大八が、生活に困窮する藩士の内職として将棋駒の製作を奨励したことが、天童将棋駒の産業発展の大きな契機となったと伝えられています。

明治維新後、旧藩士たちは藩を離れ、それまで内職として身につけていた木地作りや駒書きの技術を生かして制作を続けました。木地師と書き師による分業が進み、卸売業者も現れて、東京など県外へ販路が広がりました。

明治末期から大正時代にかけては、駒木地を加工する機械が考案され、生産量が増加しました。さらに昭和初期には、文字をスタンプで押す「押し駒」が普及し、天童は将棋駒の大規模な生産地へと発展しました。

戦後は押し駒や書き駒の生産が減少する一方、彫駒の生産が増えました。さらに彫埋駒や盛上駒など、木地の美しさと漆の表現を生かした精緻な駒の制作も発展しました。

1996年(平成8年)4月8日には、「天童将棋駒」が国の伝統的工芸品に指定されました。

現在も天童を中心に、書き駒、彫駒、彫埋駒、盛上駒が作られ、木地作り、彫り、漆書きなどの技術が受け継がれています。

Production Process / 制作工程

天童将棋駒 - 制作工程

  1. 1.駒木地づくり(乾燥~大割り) 駒木地づくりでは丸太材を駒の形に加工します。駒の原木は何年もかけて十分に乾燥させ、寸法に狂いが生じないようにすることが必要です。木地師(きじし)は原木の丸太材を駒の高さに合わせて輪切りにする「玉切り(たまきり)」を行った後に、木目に沿って割る「大割り」と呼ばれる作業を行います。駒の原木には「つげ」や「楓」などがありますが、指し駒に適した原木とされるのは「つげ」です。つげは木目の美しさと適度な堅さ、また、長年に渡って使い続けられる強度も兼ね備えています。特に、御蔵島産(東京都)や薩摩産(鹿児島県)の本黄楊(ほんつげ)は最高級の駒に用いられるものです。
  2. 2.駒木地づくり(荒切り~小割り) 駒の外周部を「駒切りナタ」で削ってから、一枚の駒に切り離す工程です。「荒切り(あらぎり)」は将棋駒の幅にするために駒木地の両側面を削り、底になる部分を平らにして、上方を山形に削ると駒独特の形になります。その後に行う「小割り(こわり)」は駒の厚みに合わせて将棋駒を一枚ずつ切り離す作業です。駒木地づくりは木目が同じようなものを40枚選んで五角形の駒に切りそろえますが、木地の木目が極めて重要になるため木地師の手作業に代わるものはないと言われています。
  3. 3.字母紙貼り(じぼしはり)、彫り、目止め 字母紙貼りは字が書かれた紙を駒木地に貼り付ける作業です。字母紙を貼り付けたら駒を「駒彫り台」に固定して印刀(いんとう)で文字を彫っていきます。熟練した彫師が行う「透かし彫り」と呼ばれる技法は字母紙を貼らず、駒を直接掘っていく技法です。目止めとして彫った溝に膠(にかわ)や柿渋(かきすぶ)などを塗りますが、近年はボンドで代用することが多くなりました。
  4. 4.漆入れ、研出し(けんだし)、瀬戸引き 彫った溝に漆を塗っただけの駒は「彫駒(ほりごま)」と言われ、手彫りと機械彫りがあります。「彫埋駒(ほりうめごま)」と呼ばれる駒は彫った溝を錆漆(さびうるし)で完全に埋めた駒です。漆は乾くと沈着をする性質があるため、錆漆による彫り埋めの作業と乾燥を表面が平らになるまで繰り返します。彫り埋めの作業に要する時間はおよそ一ヶ月です。研出しは駒の表面を砥石でていねいに研ぎ、さらに磨きます。彫埋駒の最後に行う瀬戸引きは瀬戸物で表面を磨き上げる作業です。
  5. 5.盛上げ駒(もりあげごま) 盛上げ駒とは駒の文字を浮き立たせた駒です。彫埋駒の文字の上に蒔絵筆(まきえふで)を用いて幾重にも文字を重ねて浮き立つようにします。しかし、漆を一度に厚く塗ることはできないため、塗る作業と乾かす作業を何度も繰り返すことが必要です。盛上げ駒はプロ棋士の対局にも用いられる最高級品で、漆を均一に乗せつつ立体的にするには盛り上げ師の卓越した技を必要とします。
  6. 6.書駒(かきごま) 書駒は駒木地に黒漆で文字を直接書いた駒です。小さな駒に粘り気の強い天然漆で文字を書くのは容易なことではなく、熟練の技を要します。しかし、技を極めた書き師は一枚の駒を数秒の早さで書き上げ、書かれた文字は多くの人を魅了する美しさです。書体には楷書と草書があり、天童では草書体の書駒が伝統として作られています。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

中島清吉商店 ナカジマセイキチショウテン

Facility Information / 関連施設情報

天童市将棋資料館

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