東京三味線

東京三味線 トウキョウシャミセン

ただ一人の奏者のために素材選びからこだわる
奏者と職人がともに紡ぎ出す美音

Description / 特徴・産地

東京三味線とは?

東京三味線は一人の職人が仕上げまでを担うのが特徴。関西地方で作られる三味線は工程ごとに分業化されているのに対し、奏者一人ひとりに合わせて作られる東京三味線は、職人が奏者と向き合って生み出される工芸品といえるでしょう。皮の種類によって毛穴の大きさや厚みが異なり音質にも違いが出るため、素材選びの時点から奏者の力量を考慮。求める音色を奏でられるかを考えながら作られていきます。東京三味線は熟練した技をもつ職人の手によって、メンテナンスを重ねながら末長く使い続けられる和楽器でもあります。伝統的に使用されてきた原材料の枯渇や機械製のものが増えたことで従事者が減りつつありますが、東京都中央区、台東区、豊島区などを中心に生産されています。現在は古い三味線を修理し再生して初心者に安価で提供する新しい取り組みも行われています。

History / 歴史

中国・三弦(さんしぇん)に起源を持つ三味線。14世紀末には琉球国に伝わり三線となり、室町時代末期に大阪の堺へ渡来してきたのが日本での始まりといわれています。琉球国では蛇皮を用いたので蛇皮線とも呼ばれていたものの、本土では蛇が手に入りにくかったことや強度の面から犬や猫の皮が使われるようになりました。その後、撥(ばち)で演奏する三味線へと変化。17世紀に江戸へ移入すると、独自の変化を経て産地を形成しました。そして三味線の名匠とされる神田治光らの影響を受けながら、現在に通ずる三味線音楽の基礎が築かれていきました。その後は大衆にも広がりをみせ、芸術音楽・民族音楽を問わず、江戸時代以降の日本音楽の楽器として代表的な地位を確立します。さらに歌舞伎の長唄や、義太夫、常磐津、清元、新内などの流行とともに三味線作りも発達していきました。現代でもプロの演奏家から学生といった幅広い層に演奏される和楽器です。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.木取り 原木から天神(てんじん)、棹(さお)、胴部分などの木材を切り出します。
  2. 2.天神・棹作り 棹用に切り出した材木を3分割します。ほぞと溝を彫って継手(つぎて)を作り、木材をつなぎ合せます。天神部にはさわり溝などの加工を施します。
  3. 3.胴作り 綾杉(あやすぎ)を掘り終えた4枚の材木を膠(にかわ)で接着します。
  4. 4.皮張り 皮に噛ませる木栓(きせん)を使って皮を留め、四方向に縄をかけて、湿らせた皮を張り上げていきます。
  5. 5.各部品の組み立て、調整、仕上げ 胴と棹をつなぎ、糸・駒・胴掛けをつけて完成です。

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