江戸からかみ

江戸からかみ エドカラカミ

京の技に江戸好みが融合唐紙師・更紗師・砂子師が創る江戸の粋

Description / 特徴・産地

江戸からかみとは?

江戸からかみ(えどからかみ)は東京都文京区や台東区、また、千葉県松戸市や埼玉県比企郡ときがわ町などで作られている工芸品です。1999年(平成11年)5月に国から伝統的工芸品の指定を受けた江戸からかみは、主に襖(ふすま)や屏風(びょうぶ)などに使用されています。江戸からかみの特徴は、基本となる「木版摺り(もくはんずり)」のほかに、「渋型捺染摺り(しぶがたなっせんずり)」や「金銀砂子蒔き(きんぎんすなごまき)」などの多彩な技法があることです。唐紙師(からかみし)や更紗師(さらさし)、また、砂子師(すなごし)はそれぞれの専門的な技法を用いて、さまざまな文様の江戸からかみを生みだしています。和紙に用いられる文様は更紗や格子などの江戸好みをはじめ、四季の草花や日常的になじみのあるもの、伝統的な文様、モダンなものがそろい、色も文様も多彩です。さらに、襖や屏風だけでなく、壁や天井の一部に取り入れてアクセントにするなど日常生活の彩りとして用途が広がっています。

History / 歴史

江戸からかみは京都の職人が江戸で高まったからかみの需要に応えるために移り住んだことに由来し、からかみの加飾技法には二つのルーツがあると言われています。一つは、奈良時代や平安時代の仏教の経典に装飾された金銀箔砂子を主とした加飾技法です。もう一つの技法は平安時代に和歌をしたためた詠草料紙(えいそうりょうし)に使われた木版からかみを主とした料紙装飾と言われています。江戸でからかみの需要が高まるのは江戸時代に入ってからです。江戸の町が栄えるにつれて、町人の家の襖にもからかみが使われるようになりました。京都から江戸に移った職人によって伝えられた「京からかみ」の技法は江戸の人の好みや粋な表現が徐々に加えられ、次第に独自の技法へと変化していきます。「江戸からかみ」の名で呼ばれるようになるのは幕末の頃です。その後、関東大震災や東京大空襲などによって版木の多くが焼失してしまい、さらに、量産が難しく、コスト高でもある江戸からかみは需要が激減した時期もありました。しかし、伝統を受け継ぐ職人の心意気は衰えることはなく、卓越した技で今なお人々の暮らしに江戸の粋を伝えています。

General Production Process / 制作工程

  1. 唐紙師による技法
  2. 1.木版雲母摺り(もくはんきらずり) 「木版雲母摺り」のほか、引き締めと雲母引き(きらびき)手揉みの3種類があります。「木版雲母摺り」は文様が彫刻された版木に絵の具を塗り、和紙に文様を写し取る工程です。絵の具は「雲母(きら)」と呼ばれる白雲母の粉末や「胡粉(ごふん)」と言われる貝殻の粉末などの顔料と布海苔(ふのり)やこんにゃく海苔を混ぜて作ります。
  3. 2.引き染め 引き染めの工程には「刷毛引き」と「色具引き」があります。「刷毛引き」には「丁子引き(ちょうじびき)」とも言われ、櫛状に間引いた刷毛(はけ)に染料を付けて丁子模様(縞模様)を引いて行く技法です。また、「刷毛引き」には「格子引き」や「筵(むしろ)引き」などの種類もあります。「色具引き」のうち、「総染め」は雲母や顔料を全面に引く技法、「ぼかし染め」は水を含ませた刷毛でグラデーションをつけながら引いていく技法です。
  4. 3.揉み(もみ) 揉みの技法としては「雲母引き手揉み」と呼ばれる技法が代表的です。全面に「色具引き」をしてから、「雲母引き」をした和紙を手で揉んで皺(しわ)や亀裂をつけていきます。
  5. 4.箔押し(はくおし) 版木に正麩糊(しょうふのり)を塗り、和紙に移し取る作業です。その後、金銀箔を置いて、よく乾いたら余分な箔を取り除きます。次に、「礬水(どうさ)」と呼ばれる溶かした膠(にかわ)にみょうばんを加えたものを引くと、唐紙師の行う作業の仕上げとなります。
  6. 更紗師による技法
  7. 1.渋型捺染摺り(なっせんずり) 「渋型捺染摺り(なっせんずり)」の種類は「単色摺り」と「多色摺り」の2つです。文様を彫り抜いた「渋型紙」と呼ばれる型紙を和紙の上にのせ、顔料や染料を馬毛のブラシや丸刷毛で摺り込むと文様がくっきりと出ます。
  8. 2.更紗型多色摺り(さらさがたたしょくずり) 「多色摺り」は同じ地紙に渋型紙や摺色を変えながら文様を摺る技法です。多くは、5枚~7枚の渋型紙を用いて摺り込みを繰り返します。
  9. 3.置上げ 家紋などに用いられる技法です。木べらで顔料をたっぷりと盛り、文様を立体的に浮かび上がらせます。
  10. 4.箔押し 唐紙師の箔押しと同じ工程ですが、更紗師の場合は文様が彫り込まれた型紙を使用します。更紗師が箔押しに使う型紙は、版木よりもかさばらない薄い型紙です。
  11. 砂子師による技法
  12. 1.砂子(すなご)蒔き 「砂子蒔き」や「箔散らし」のほか、「金銀泥引き」や「描き絵(かきえ)」、「磨き出し」の5種類があります。「砂子蒔き」は、竹筒に入れた金銀の砂子を和紙の上に叩いたり、振ったりして紙面に蒔いていく技法です。砂子用の竹筒には細かい網目の銅線が張ってあります。
  13. 2.箔散らし 大きさの異なる金銀箔を、糸を張った竹筒などに入れて散らす技法です。「箔散らし」には箔を方形に切った「切箔」や長細く切った「芒(のぎ)」と呼ばれる箔、また、手でちぎっただけの「破箔(やぶりはく)」などを使います。
  14. 3.金銀泥(でい) 引き砂子をさらに細かくしたもので金泥や銀泥を作り、膠水(にかわすい)を加えて刷毛で引きます。「金銀泥引き」は、金銀泥を刷毛の片側だけに付けて引くことが特徴です。
  15. 4.描き絵(まきえ) 伝統的な山水画や日本画などを和紙に直接、筆で描いていきます。
  16. 5.磨き出し 砂子を振った和紙や泥引きした和紙の下に版木を置いて和紙の上から猪の牙で擦り、版木の文様が浮き出るようにします。

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