江戸木版画

江戸木版画 エドモクハンガ

江戸の大衆文化が花開く
鮮やかで華やかな錦絵の世界

Description / 特徴・産地

江戸木版画とは?

江戸木版画(えどもくはんが)は、江戸時代に手法が体系化し浮世絵などの印刷物が浸透することに貢献しました。
江戸木版画の特徴は、絵師・彫師(ほりし)・摺師(すりし)が版元(はんもと)による管理のもと、共同で1つの作品を作り上げることと、色の表現方法です。通常の絵画は、顔料の色で表現されていますが、江戸木版画は、和紙の繊維が持つ色と顔料の色が合わさることで表現されています。
木版を作るための材料には、主に桜材が使われます。桜材が持つ木目の細かさや耐久性が、何百枚も摺り上げる江戸木版画に適しているためで、摺りには、生漉奉書(きずきほうしょ)と呼ばれる紙を使います。生漉奉書は、楮(こうぞ)を原料とし手作られる、越前和紙の高級品で、ふっくらと柔らかな風合いでありながら、多色摺りにも耐える耐久性を持つので江戸木版画に適しています。

History / 歴史

江戸木版画の技術や技法が確立したのは、江戸時代の後期と言われています。木版印刷そのものは飛鳥時代からありましたが、木版印刷が木版画になったのは平安時代後期です。木版画が誕生してすぐの頃は、墨1色の墨摺絵(すみずりえ)で主に仏の姿が木版画で描かれていました。主に宗教で使われていた木版は、江戸時代になり庶民の娯楽である滑稽本や瓦版などとしても使われるようになります。 1744年(延享1年)頃になると、さらに木版画の技術が向上しました。墨に紅と草の2色を加えた、紅摺絵(べにずりえ)が生まれ、江戸時代の多色刷りに少し近づきます。しかし、木版のズレを防ぐ工夫がなかなか生まれず、多色刷りが生まれるまでは色は2色が限界でした。 1764年(明和1年)、大久保甚四郎や小松屋三右衛門らにより多色摺りが開発され、翌年には多色摺りを使った錦絵が江戸で流行し、錦絵の祖と呼ばれる鈴木春信の活躍もあり、錦絵の需要が広がっていきました。ついには江戸の大衆文化として、多くの絵師たちが活躍するようになります。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.原画作成 原画、または版下絵(はんしたえ)と呼ばれる、江戸木版画の完成品となる絵を描く工程です。この時点では、白黒のみで色はつけません。最近では、イラストや写真を元にしたり、CGを使ったりして原画作成をすることもあります。
  2. 2.彫(ほり)の準備 彫とは、版木(はんぎ)を作っていく工程です。版木は、線の板木・墨板・色板の3種類を作ります。なお、版木は1色につき1枚必要です。例えば、原画で5色使われていたら、5枚の版木を作る必要があります。
    彫の工程では、まず、桜などの板に米から作った糊をまんべんなくのばします。ヨレなどを防ぐためにも、ムラがあってはいけません。
    続いて、原画を裏返して貼りつけます。貼りつけた原画をベースに彫を行うため、ヨレが出来ないよう糊が乾かないうちに、手のひらなどを使って丁寧にしっかり貼りつけます。原画の線が浮き出たら、準備完了です。なお、原画の線を出すために、椿油を表面に擦り込ませることもあります。
  3. 3.主版(おもはん) 実際に版木を作っていく工程です。10種類以上の彫刻刀を使い分け、貼りつけた原画の上から彫っていきます。
    最初に行うのは「主版(おもはん)」です。本工程の目的は、輪郭線を作ることで、原画の線にそって小刀で切り込みを入れ、輪郭線以外の部分に顔料が付かないよう、さらっていきます。彫り終わったら、「見当」と呼ばれる印を手前の中央と右隅に彫り、紙をはがします。「見当」は、以降の作業で位置がずれないようにするため目印です。試し摺りを行い、ズレや彫り残しがあれば修正します。
  4. 4.校合摺り(きょうごうずり) 校合摺りとは、主版に墨を付けて摺っていく作業のことです。校合摺りは、色版作りで必要となるため、色版の数だけ行われます。例えば、色版が5枚なら校合摺りも5枚必要で、絵の輪郭を作る本工程は、以降の工程のベースにもなることから、重視されています。
  5. 5.色指定・色版 色指定は、校合摺りを見ながら絵師が色を指定していく工程です。色が指定されたら、主版でつけた見当を目印に、主版と同じような工程で色版を作っていきます。
  6. 6. 湿し(しめし) 湿しとは、摺りに入る前に和紙を湿らせておく工程です。和紙が乾いていると色がつきにくいため、本工程が必要となります。湿し具合で色のつきが変わるため、熟練が必要とされる重要な作業です。
  7. 7. 摺り(すり) 木版に顔料をのせ、和紙を当てたら馬連(ばれん)で摺り、和紙に色をつけていく工程です。試し摺りをして、絵師の指定した色と合っているか確認します。問題がなければ本摺りへ、色が異なっている場合は、色が合うまで本摺りできません。次の色版へ移るのは、必要とされる枚数の全てが摺り終わってからで、全ての色版を摺り終われば完成です。なお、摺りの工程では、「ぼかし」、「骨(こつ)」、「ベタ」などの技法を使い分け、様々な表現を行います。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社 アダチ版画研究所 アダチハンガケンキュウジョ

アダチ版画研究所は、浮世絵制作の技術を高度に継承した職人をかかえる唯一の版元です。現代のアーティストたちと新しい木版画の可能性を追求し続けます。

匠木版画工房ふれあい館・朝香伝統木版画教室 タクミモクハンガコウボウ

世界に誇る芸術作品となった、江戸時代に作られた浮世絵を復刻し、継承に尽力した高見澤遠治。匠木版画工房は、その再興を果たした高見澤忠雄先生に師事し、その意志を受け継いだ朝香元晴が創設しました。 日本はもとより世界に浮世絵普及活動に邁進するとともに、朝香伝統木版画教室を設立し、後継者育成にも全勢力を注いでいます。