八女提灯

八女提灯 ヤメチョウチン

ほのかに透き通る幻想的な灯りに浮かび上がる
花鳥草木の美しい装飾

Description / 特徴・産地

八女提灯とは?

八女提灯(やめちょうちん)は、福岡県八女市周辺で作られている提灯です。
八女提灯の特徴は、「一条螺旋式(いちじょうらせんしき)」の竹骨(たけぼね)と、花鳥や草木の美しい彩色画が施された「火袋(ひぶくろ)」です。一本の細い竹ヒゴを、提灯の型に沿って螺旋状(らせんじょう)に巻く「一条螺旋式」は、現代の盆提灯の起源とも言われています。
八女提灯の種類は、先祖供養のためにお盆の時期に仏壇等の前に飾る「盆提灯(ぼんちょうちん)」が主流です。円筒形で長細い「住吉(すみよし)」や吊り下げ式で丸型の「御殿丸(ごてんまる)」をはじめ、祭礼用や宣伝用の提灯など約3,000種類に上ります。
灯りをともす部分である「火袋(ひぶくろ)」には、薄手の「八女手漉き(やめてすき)和紙」や絹が用いられ、内部が透けるため「涼み(すずみ)提灯」とも称され全国的に名声を博しています。
八女提灯の製作には地元でも生産している竹や和紙に加え、漆や木材が使われています。

History / 歴史

約200年の伝統を誇る八女提灯(やめちょうちん)は1813年(文化10年)頃に、福岡県八女郡福島町で荒巻文右衛門(あらまきぶんえもん)によって作られた場提灯(ばちょうちん)が起源と言われています。元々は福島町で製作されていたことから、福島提灯と呼ばれていました。
当初、荒巻文右衛門が製作した場提灯は墓地などでつり下げられる提灯で、山茶花(さざんか)や牡丹(ぼたん)の紋様が単色で描かれている素朴なものでした。
1854年(安政元年)から1859年(安政6年)頃には、同じ福島町在住の吉永太平(よしながたへい)によって「一条螺旋式(いちじょうらせんしき)」の技法や「火袋(ひぶくろ)」に薄紙を用いる製作技法が考案され、提灯の一大革命が起きました。
明治時代に入ると、急速に増え続ける需要に対応するため、吉永太平(よしながたへい)の弟である伊平(いへい)により、早描き(はやがき)の描画法が採用されました。その結果、製作時間の短縮により販売価格も抑えることができ、アメリカやイギリスなどの海外諸国へ輸出されるまでに発展を遂げました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.ヒゴの準備 ここでは火袋(ひぶくろ)の製作を解説します。火袋の骨は、一本の細い竹ヒゴを螺旋状に巻きつけることにより製作します。材料となる長い竹ヒゴは、直径が約0.4mm、長さが約4.5mの竹ヒゴを12本~25本程度つなぎ合わせて作ります。
  2. 2.木型の組み立て 製作する提灯(ちょうちん)の大きさや形に合わせて、竹ヒゴを巻き付けるための木型を組み立てていきます。木型は「羽」と称される三日月のような形の板と、羽を固定する「円盤」により構成されており、通常必要な羽の枚数は8枚から16枚です。
  3. 3.ヒゴ巻き 木型の上部と下部には、木型を固定するための「張り輪」をはめます。竹ヒゴの一端を木型上部の張り輪に固定した後、竹ヒゴが螺旋状になるように、羽の溝に沿って下部の張り輪まで巻き付けていきます。竹ヒゴの巻き付けが完了したら、提灯の伸縮による紙の破損を抑制するために「掛け糸」を施します。糸は、竹ヒゴの上を上部の張り輪から下部の張り輪にかけて真っすぐに渡していき、糸の両端は上下の張り輪に留めます。
  4. 4.地絹(じぎぬ)の張り付け 上部と下部のそれぞれの張り輪から、骨の4本か5本までの部分に絹を貼り付け、提灯の口の部分を補強しておきます。
    そして、掛け糸によって仕切られた各区間の竹ヒゴに、刷毛(はけ)でショウフ糊(のり)を塗り、地絹を一区間おきに一枚ずつ少したるませながら充てがっていきます。
  5. 5.地絹(じぎぬ)の継ぎ目切り 掛け糸の各区間の地絹(じぎぬ)は、余分な部分をカミソリで切断し隣と重なる継ぎ目の幅を1mm程度に揃えます。
  6. 6.ドウサ引き 火袋の表面には、絵付け用の顔料がにじまないように「ドウサ」と呼ばれるニカワとミョウバンの水溶液を均一に塗ります。
  7. 7.型抜き 火袋(ひぶくろ)を乾燥し終えたら、中で木型を分解し全て抜き取ります。
  8. 8.絵付け 絵付け専門の職人「絵師」によって、火袋に直接絵が描かれます。この時、絵師は下書きを一切することなく、筆で絵を加えていきます。
  9. 1.木地づくり ここでは加輪(がわ)と手板(ていた)の製作を解説します。専門の職人「木地師」の手で板を曲げることにより、提灯の上部と下部に付けられる「加輪(がわ)」を製作します。更に「ミシン鋸(のこぎり)」を使って、厚手の板から「手板(ていた)」を切り出し、ヤスリをかけて滑らかに仕上げます。
  10. 2.漆塗り(うるしぬり) 漆塗り職人「塗り師」により、落ち着いた風合いの漆が2度塗られます。
  11. 3.蒔絵(まきえ) 漆塗りが乾いたら、蒔絵師(まきえし)の手によって、蒔絵の下絵が描かれます。下絵が乾いたら、金や銀の色粉を蒔き付けたり、光沢感がある貝殻を貼り付ける螺鈿(らでん)装飾をほどこします。
    絵付けされた火袋(ひぶくろ)と装飾済みの加輪(がわ)と手板(ていた)が提灯屋に集められ、専門の職人により組み立てられた後、仕上げに房や金具が取り付けられます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社ヤマグチ ヤマグチ

提灯のヤマグチは、提灯に関することなら何でもご相談いただける歴史と確かな技術を受け継ぐ老舗本舗です。盆提灯をはじめ、和の雰囲気が心和むインテリア提灯など、精を込めた商品を取り揃えております。

田中熊吉商店 タナカクマキチショウテン

創業弘化元年、長年の知識・技術で「提灯」に関する事なら何でもお任せ下さい。オリジナル提灯、モダンなインテリア提灯もお作りしています。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

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