春日部桐箪笥

春日部桐箪笥 カスカベキリタンス

伝統的な指物の技術が生かされた
木の質感を感じる温かみのあるデザイン

Description / 特徴・産地

春日部桐箪笥とは?

春日部桐箪笥(かすかべきりたんす)は、埼玉県さいたま市・春日部市周辺で作られている木工品です。
春日部桐箪笥の特徴は、木の直線を基調にしたシンプルなデザインです。部品の接合においても、金くぎを使わない木の感じをしっかりと残す工夫が施されています。桐の美しい木目を活かした温かみのあるデザインは、今でも人々に愛され続けています。
春日部桐箪笥のもととなっている桐は、防湿性と難燃性に優れ、また他の木材と比べて軽いと言われています。まず、防湿性についてですが、桐は湿気を帯びると膨張し、乾燥すると収縮する性質のある木です。そのため、湿気を箪笥の中まで通さず、湿気に弱い素材の衣服もしっかりと保存できます。また、桐は燃えにくいということでもよく知られた木です。このように、他の木材と比較して防湿性や難燃性の高い、桐で作られた春日部桐箪笥は、衣服を大切に保管するのに適した箪笥だということが分かります。

History / 歴史

春日部桐箪笥の起源として有力な説とされているのは、1624年(寛永1年)から1644年(正保1年)にかけて日光東照宮の造営に携わった工匠が春日部に住み着き、小箱づくりなどを始めたとされています。
春日部桐箪笥が作り始められた当初は、農業の合間に行うというスタイルが多く、箪笥づくりを専業とする箱指屋はあまり見られませんでした。しかし、1830年(天保1年)頃になると状況が変わります。当時日本で栄えた江戸に近い古利根川や江戸川によって、江戸への輸送に恵まれたからです。この頃になると、専門で桐箪笥づくりを行う箱指屋も増えていきました。
そして、明治時代になると交通の便が良くなったことなどで、東京に限らず大阪や広島、福岡などと広い範囲に販路が拡大していきます。この販路の拡大が、春日部桐箪笥が全国に知られる要因となりました。現在、春日部桐箪笥は昔ながらの形を守りながら、現代の要素を取り入れたインテリアとしても発展を続けています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.原木(げんぼく)の切り出し 春日部桐箪笥の原料となる桐は、福島県会津産のものを中心とした東北各県の質の良い桐です。また、桐の他に、副材料に北海道産の朴や桑の木も使用します。材料が揃ったら、原木の切り出し作業です。切り出しは、最大限活かせるように考えながら行われていきます。並木、柾木の切り出しの厚さはそれぞれ、並木が9~21mm、柾木が4つに分割した後5.5mmです。
  2. 2.乾燥 切り出した材料は、#の字になるように組み合わせる井桁積み(いげだづみ)などにして、3~4ヶ月ほど風雨にさらし自然乾燥させます。自然乾燥は、木のアクを抜くのに重要な作業です。こうして、しっかりアクを抜くことによって、春日部桐箪笥独特の木が持つ肌色の美しさが表現されます。
  3. 3.木どり工程 木どりは、実際の寸法より少し大きめに切り出していく作業のことです。このとき、箪笥の表面に使用される柾板(まさいた)は、木目の間隔が同じになるように調整していきます。このように調整することによって、木目が均等で美しい春日部桐箪笥へと仕上がっていくのです。
    また、木どりの段階で、どのように並べればきれいに仕上がるか印もつけていきます。
  4. 4.狂い直し工程 狂い直しでは、板に歪みが生じてしまったものを修整していきます。板一枚一枚を火であぶって、手カンナで歪みをとりのぞいていく作業です。微妙な調整であり、目や腕が試させることから、狂い直しの技術を修得するのに3年はかかると言われています。
  5. 5.削り工程 狂い直しの段階まででは、切り出した板はまだ寸法よりも少し大きくなっています。削り工程は、寸法に合わせるべくカンナを使って削っていく作業です。
  6. 6.組みたて工程 寸法通りに削り出したら、今までバラバラだった部品を組みたてていきます。この組みたてで使われるのが、春日部桐箪笥の特徴ともいえる木でできたくぎです。木くぎには、丈夫で耐久性のあるウツギでできたくぎが使われます。しかしいくら丈夫だと言っても、金属ではないので、トンカチで打ち込んでもしっかりと木にめり込みません。そこで、ドリルなどの工具を使って、事前に穴をあけ、そこに木くぎを打っていきます。
  7. 7.仕上げ 組みたてた箪笥は、水をつかって歪みを修復し調整していきます。ここでしっかりと調整することによって、引き出しの開閉や扉の開け閉めがスムーズにできるようになります。箪笥の使い心地において重要な作業です。そしてさらに、カンナを使って細かな調整を行っていきます。
    箪笥自体の調整が終わったら、次は着色です。着色では、木の木目を表面に出す「ウズクリ」という作業を行った後に、砥の粉(とのこ)にヤシャという染料を混ぜたものを塗っていきます。この「ウズクリ」と着色の作業を行うことで、春日部桐箪笥の素朴な味わいが引き立てられるのです。そして、着色後は防水のためにろうを塗っていきます。ろうを塗ることによって、水を防ぐだけでなく、つやも出てきます。
    そして、最後の仕上げとして金具を取り付け、全体的な調整が終われば春日部桐箪笥の完成です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

山田桐箪笥製作所 ヤマダキリタンスセイサクジョ

伝統的な春日部の桐たんすをはじめ、様々な桐製品の製造、オーダーメイド、削り直し、再生(リフォーム)まで、桐たんすのことなら創業228年の信頼と伝統のある当店へお任せ下さい。

埼玉県指定伝統工芸モデル工場 飯島桐箪笥製作所 イイジマキリタンスセイサクジョ

桐の原木から製品までをモットーにしています。また、経営者自ら桐タンスを作る職人です。

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