大阪泉州桐箪笥 写真提供:大阪府

大阪泉州桐箪笥 オオサカセンシュウキリタンス

良質で厚い素材を活かした上品な佇まい
繊細かつ高度な技術を駆使した職人の技

Description / 特徴・産地

大阪泉州桐箪笥とは?

大阪泉州桐箪笥(おおさかせんしゅうきりたんす)は、大阪府岸和田市や堺市周辺で作られている木工品です。大阪泉州桐箪笥で原材料として使用されている桐は、防湿性が高く、さらに耐火性に優れた木材として知られています。そのため、そんな桐を使用した大阪泉州桐箪笥は長く使える家具として、古くから嫁入り道具として愛されてきました。
大阪泉州桐箪笥の特徴は、厚みのある良質な桐を使った上品なつくりです。「矧ぎ加工(はぎかこう)」と言われる高度な技術を駆使して作られた大阪泉州桐箪笥は、日本でも数ある桐箪笥とは一線を期してきました。職人による繊細で優美なつくりを評して日本で最高峰の桐箪笥と言われることもあるほどです。ただ、高度な技術を駆使して作られた桐箪笥だからこそ、全国的にみると桐箪笥の生産量は少なめです。その少ない生産量が、大阪泉州桐箪笥の希少価値をさらに高めています。

History / 歴史

大阪泉州桐箪笥の正確な起源は明らかにされていませんが、300年以上前に書かれた「難波鶴」という文献に、箪笥仕立ての職人の名前が登場することから、既に江戸時代中期には箪笥づくりのベースができていたと推測されます。
江戸時代において、大阪は日本のほぼ真ん中に立地していたということと、江戸幕府の政策で整備されたことで市街地が広がり、商業の中心地として「天下の台所」という異名を持っていました。この大阪での商業の著しい発展が、江戸後期における大阪泉州桐箪笥の製造に大きく関係したと考えられています。
商業の地として発展した大阪において多くのものをしまうための箪笥が必要だったということと、近畿地方での農業の発展により財を蓄える農民が増え、財力を示すものとして桐箪笥の需要が増えたからです。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.造材(ぞうざい) 大阪泉州桐箪笥づくりでは、良質の会津の桐などが使われます。最近では、国内ですでに伐採が進んでしまっており年輪の高い樹木が不足していることから、会津と緯度の近いアメリカのバージニア州やペンシルバニア州の桐が使われることも多くなりました。いずれも質の良さから高価ではありますが、良質な大阪泉州桐箪笥づくりには欠かせません。
    造材の工程では、まず板目や柾目(まさめ)を見て、どのように木目を活かすかを考え製材していきます。そして、製材したものは1~3年とゆっくり時間をかけて自然乾燥させていきます。時間をかけて風雨にさらすことにより、アクが抜け、より変色の少ない良質な素材に仕上がるためです。
  2. 2.木取り 木取りは、大阪泉州桐箪笥づくりにおいて要とも言える工程です。常に完成した姿を想像しながら、木目が美しくなるよう組み合わせていきます。
  3. 3.歪み直し ゆっくりと時間をかけて自然乾燥させた桐材には、どうしても歪みが起こってしまいます。歪み直しとは、火で桐材を炙って圧力をかけ、歪みを直していく作業のことです。
  4. 4.矧ぎ加工(はぎかこう) 大阪泉州桐箪笥でみられる特徴的な矧ぎ加工は、木材の横幅を確保するために行われます。糊を使って、横に接合していくのですが、接合の際にしっかりと木目などが揃うように見極めないといけないため、高い技術力が試される加工方法です。
  5. 5.木地造り(きじづくり) 木地造りの工程では、箪笥の天井にくる天板、胴にあたる胴板、引出、開戸、引戸など各部分の寸法に合わせて切断を行い、表面をカンナで削っていきます。
  6. 6.組み手加工 大阪泉州桐箪笥では、組み手加工が行われます。組み手加工とは、ホゾ接ぎと組み接ぎという組み合わせの先端に凹凸をつくることによって、くぎやねじを使わずに組み立てができる手法のことです。寸法通りにホゾをつくることができれば、組み合わせても動じることはありません。そして、この組み手加工は接続部がかみ合い、強度が増すことによって、長い時を経てもしっかりとした耐久性を保持することができます。
  7. 7.本体組み立て 組み手加工では、蟻組み(ありくみ)と言って傾斜のあるホゾが作られます。本体組立は、この蟻組みを金づちなどを使って叩き込んでいき組み合わせていく作業です。さらに、組み立てた跡、カンナで削り、つなぎ合わせた部分がなめらかになるように仕上げます。
  8. 8.引き出し・引き戸加工 引出しは底板を木くぎで打ちつけ、引き戸は締めた状態に持っていき加工を行います。引き出しや引き戸では、数分の隙間も許されません。そのため、0.01mm単位で削りこんでいく、カンナを使った高い技術が必要です。
  9. 9.仕上げ加工 仕上げとして、ウズクリという道具を使って木目を浮かび上がらせ、砥の粉(とのこ)とヤシャブシを混ぜた液をつかって着色を行っていきます。この着色の作業を繰り返すことによって、美しい木目が浮かび上がるのです。
    さらに、ろうを使って箪笥につやを出し、選定された金具を取り付けていきます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社 田中家具製作所 タナカカグセイサクショ

本物の桐箪笥が少なくなる中、日本の桐材と伝統の技法を頑なに守り、最高峰と呼ばれる桐箪笥作りに、こだわってきました。桐に対する弊社の熱い思いをご覧ください。

株式会社 留河 トメカワ

丸太で仕入れて日本で製材し(板状にする)それを約1年間天日で干し、あく抜き乾燥した材料を使い、自社工場で伝統工芸士が一貫生産しております。 素手で触っても手垢がつかないが桐の呼吸を妨げない特殊な加工をしております。

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