一位一刀彫 写真提供:岐阜県

一位一刀彫 イチイイットウボリ

一刀一刀に魂が込められた木工彫刻
銘木の風合いを最大限活かした迫力ある名品

Description / 特徴・産地

一位一刀彫とは?

一位一刀彫(いちいいっとうぼり)は、岐阜県飛騨地方で作られている木工品です。岐阜県の県木であるイチイの木をノミだけで彫り上げる作品で、彩色は施さずに木目の美しさを活かします。
「イチイ」の名前は、約800年前の天皇即位の際にこの木を用いて作られた笏(しゃく)を献上したところ、その美しさと質の高さが「正一位」という最高位を与えられた出来事が始まりです。
一位一刀彫の特徴は、飛騨の銘木の中でも樹齢400年から500年を経た貴重な木材を利用することです。イチイの木は、内側の赤っぽい「赤太」と、外側の白っぽい「白太」の2色の部分に分かれているため、絶妙な色合いが作品に個性を出しています。
一位一刀彫は年月とともに木そのものの色合いが変化し、光沢が出てくることも魅力です。伝統的な根付や置物、茶道具などのほか、近年では時代に合わせて携帯電話向けのアクセサリーなども制作されています。

History / 歴史

一位一刀彫 - 歴史

一位一刀彫は、江戸時代末期(19世紀はじめ)に松田亮長によって確立されました。松田亮長は、もとは製箸を家業としていたところから彫刻を学び、彫刻師となった人物です。その後、厚く着色された奈良人形を見て、木目の美しさや刀痕が活かされていないことを残念に思ったことが一位一刀彫誕生のきっかけになりました。
「天然の木の美しさを活かしたい」と考えた松田亮長は、木目、独特の2色、艶、削りやすさなどの条件が優れていたイチイの木に注目し、研究を重ねたと記録されています。もともと根付彫刻師だった松田亮長は、印籠などを帯に吊す際の留め具である根付を一位一刀彫で多数制作しました。
飛騨の銘木であるイチイを用いた一位一刀彫は、優れた木彫り技術を持っていた飛騨の匠たちの間に広がり、発展してきました。1975年(昭和50年)に伝統的工芸品に指定され、現在でも飛騨の名産として受け継がれています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.木取り 自然乾燥させたイチイから、木目の出方、赤太と白太の色合いを見極めて、デザインや製品の形態に合う素材を選びます。着色をしない一位一刀彫は、木の風合いの見せ方が非常に重要です。素材が決まったら必要な大きさに切り出します。
    木取りは、作品の寸法を採り、電動ノコギリなどを用いて原木を大まかな形に切っていく作業です。型紙を用いることもあります。
  2. 2.荒取り 一位一刀彫は置物や面、小物などさまざまな作品が作られており、大きさも様々です。荒取りでは作品のイメージに沿って、大体の輪郭を作ります。
  3. 3.荒彫り 一位一刀彫の工程は、そのほとんどが彫る作業で、工程によって丸ノミやツキノミなど何種類もの刃物を使い分けます。荒彫りでは大胆に木を彫り進めて、作品のイメージを大まかな形にします。その後は2日~3日乾燥させてから、次の工程に移る場合もあります。
  4. 4.中彫り イメージをより形に近づけるように、大小のノミを使いながら彫り進めていきます。全体のバランスに気をつけながら、部分を彫ることが大切です。
  5. 5.仕上げ彫り 細かで繊細な部分まで、丁寧に彫り上げていきます。一位一刀彫は彫った跡をそのまま残すため、一刀一刀が作品に大きく影響し、職人の技術が問われるのです。作品によっては、一週間以上の時間がかかることもあります。
  6. 6.ロー仕上げ 最後に溶かした白ローを塗り、乾いた布で磨きます。ローは手垢や木の割れを防ぐためであると同時に、イチイの木の油気を引き出す効果があります。年月が経つと艶が出て、光沢感が増していく点も一位一刀彫の魅力です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

津田彫刻

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

飛騨地域地場産業振興センター常設展示場