小千谷紬 写真提供:新潟県

小千谷紬 オヂヤツムギ

雪深い土地が生んだ伝統と素朴な味わい
真綿の特徴を生かした軽くて温かな着心地

Description / 特徴・産地

小千谷紬とは?

小千谷紬(おぢやつむぎ)は、新潟県小千谷市周辺で作られている織物です。雪深い地域として知られる小千谷地方では、古くから越後上布(えちごじょうふ)と呼ばれる麻布が織られてきました。やがて新しい機織りの技法が伝わると、小千谷を中心として麻の縮布として広まったのが小千谷縮(おぢやちぢみ)として発展しました。独特のシボがあり、紋様が緯糸(よこいと)のみで作り出されます。
この小千谷縮の伝統的な技法と、1000年以上も続く越後上布の技術を取り入れて織られる紬が小千谷紬です。着物に仕立てた時の霞がかかったような柔らかな印象は、緯糸(よこいと)の紋様に玉繭(たままゆ)の糸の経糸(たていと)が重なることで作り出されます。
「緯総絣」(よこそうがすり)で織られる絣(かすり)や縞(しま)などの模様の他、無地や白紬が作られています。小千谷紬の特徴は、真綿の手紡ぎ糸のふっくらと軽くて温かみがある風合いや、絹の光沢となめらかな手触り、素朴な味わいです。着べりがしないため、気軽な外出着などとして用いられています。

History / 歴史

小千谷地方では古くから麻を使った越後上布と言われる織物作りが盛んでした。寛文年間(1661年~1672年)に、この地に滞在した播麿明石藩の武士であった堀次郎将俊が、夏の衣料として最適な布に改良し、シボのある小千谷縮が誕生します。また、縞などの模様を織る技術も編み出し、それまで織られていた白布以外の布が作られるようになりました。こうしてできた小千谷縮の技法は小千谷を中心として広まり、この地方で織物産業が発展していきました。
この小千谷縮の技法を取り入れて、江戸時代中期に絹糸で織られるようになったのが小千谷紬です。当初は屑繭から糸を紡いで自家用として作られていました。
江戸時代末期から明治初頭にかけて飢餓が起こって麻糸の原料となる苧麻(からむし)が不足するようになると、縮から養蚕へと移る生産者が多くなります。絹織物に従事する者も増え、小千谷地方の工芸品として広く知られるようになりました。古くから養蚕が広まっていたことや越後上布を作ってきた技術、湿った冬の空気が機織りに向いていたことなどから、この地域の産業として発展しました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.設計(絣図案制作・定規作り) 糸に絣などの模様を付けるには、始めに絵模様に合わせた定規を作ることが必要です。絣つくりに用いる定規は1680年代から使われるようになりました。元になる図案に基づいて作られます。
  2. 2.糸作り 小千谷紬で使われるのは、玉糸や真綿の手紡糸です。真綿とは繭を引き延ばして綿状にしたもので、繭を数時間煮込んでからアク抜きし、一つずつ引き延ばして重ねて作られます。作られた真綿を指先で均一な太さになるよう丁寧に引き出して細い一本の糸として巻き取り、手紡ぎ糸が作られます。
    玉糸は一つの繭に二つ以上の蛹(さなぎ)が入っている「玉繭」から採られ、節があることから「節糸」とも呼ばれる糸です。独特の味のある玉糸により紬の風合いのある布に織り上がります。
    作られた糸は地の経糸(たていと)や絣模様の緯糸(よこいと)ごとに糸を撚り合わせ、熱湯で精錬し汚れなどを取り除きます。その後、瓠(ふくべ)に巻き取り、設計書に基づいて必要な数を並べ、長さなどを調整します。
  3. 3.墨付け、くびり 緯糸を張り台に張り、織り上がった時に絣模様が出るように絣定規を使って一つずつ墨で印を付けていきます。墨付け後、「くびり絣」では模様の部分が染まらないように古い苧(からむし)で固く結びます。これは「手くくり」とも呼ばれています。複雑で多くの色を使う模様が増えるのに従い、現在では「すりこみ絣」の技法が用いられるようになってきました。
  4. 4.摺込み(すりこみ) 小千谷紬の特徴である緯糸の模様を出すために使われる技法は、「すりこみ絣」と「くびり絣」です。「すりこみ絣」では、すりこみベラで印に合わせて、糸の深部まで染まるようにたんねんに染料を摺込みます。「くびり絣」では、くくってかせ状にした糸を、地糸とともに染料の中で指先を使って揉みながら染めていきます。糸を結んだきわには染料が浸透しにくいので、丹念に行います。
    染色に使われるのは自然染料と化学染料です。このうち自然染料の藍染めや草木染めなどでは、色を濃く出すために繰り返し時間をかけて染める必要があります。染めた糸は100℃の蒸気で蒸して染料を浸透させ、その後糊つけを行って織作業をしやすくしておきます。
  5. 5.織の準備、織 染色の終わった糸を図案に合わせ、経糸と緯糸の位置を調整しながら固く巻き上げます。緯糸はくびりをとって絣ほぐしをし、手繰枠(てくりわく)に巻き取ります。さらに、小起こし台(こおこしだい)にかけて最後に糸を紡ぐ時に使う管(くだ)に巻いておきます。経糸は綜絖目(そこうめ)に1本ずつ通し、さらに筬(おさ)一羽(は)の中に2本ずつ通します。糸を通し終わったら、図案を下に置き、絣糸は模様を合わせながら、地糸とともに機軸に巻き込んでいきます。
    織の準備が整ったら、緯糸を1本通すたびに絣つくりの際につけた印に合わせながら織り進めます。さまざまな模様を織りだすためのこの方法は江戸時代から変わりません。
  6. 6.仕上げ ぬるま湯で、反物についている余分な糊を落とします。巾を整えて乾燥した後、砧打ちを行うことで真綿本来の風合いが引き出されます。最後に汚れや織むらなどがない検査を行って完成です。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社大谷屋

株式会社高三織物 タカサンオリモノ

生産量が、年々減少傾向にある伝統的工芸品 小千谷紬の素晴らしさを広めると共に、木羽(こば)定規を用いた独特のすり込み捺染による絣技術を伝承し、後継者育成にも力を注いでおります。

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

小千谷市伝統産業会館サンプラザ

  • 住所
  • 電話
    0258-83-4800
  • 定休日
    12/29~1/3 ※ただし織之座・匠之座は水曜定休日
  • 営業時間
    9:00~18:00(12月~2月は9:00~17:00)
  • アクセス
    JR上越線・信越線「長岡駅」下車よりバス「小千谷本町中央」下車徒歩1分 またはJR上越線「小千谷駅」下車タクシー7分 関越高速道「小千谷インター」から5分
  • HP

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