上野焼写真提供:福岡市

上野焼 アガノヤキ

茶陶として発展した薄作りで軽やかな器形と、格調高い佇まいが特徴。緑青釉や鉄釉、藁白釉など多彩な釉薬を用い、窯変によって一つひとつ異なる色合いや肌合いを生み出します。1983年(昭和58年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

上野焼とは?

上野焼(あがのやき)は、福岡県田川郡福智町上野を中心に作られている陶器です。茶の湯のための「茶陶」として発展してきたことから、薄作りで軽やかな器が多く、端正で品のある佇まいを特徴としています。1983年(昭和58年)4月27日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

上野焼の大きな魅力は、多彩な釉薬によって生まれる豊かな色合いと表情です。緑青釉、鉄釉、藁白釉、灰釉、透明釉など、さまざまな釉薬が用いられ、その流れ方や発色、光沢、焼成による窯変によって、一つひとつ異なる景色が生まれます。絵付けによる装飾は比較的少なく、釉薬そのものが生み出す色彩や質感を生かした作品が多いことも特徴です。

なかでも、銅を含む釉薬によって青緑色などの発色を生み出す緑青釉は、上野焼を代表する釉薬の一つです。また、鉄釉や虫喰釉、三彩釉なども用いられ、それぞれ異なる色合いや肌合いを生み出します。

茶碗や水指などの茶道具をはじめ、酒器、花器、皿、鉢など幅広い製品が作られており、現在も各窯元が伝統的な技法を受け継ぎながら、それぞれの感性を生かした作陶を続けています。

History / 歴史

上野焼の始まりは、江戸時代初期の1602年(慶長7年)とされています。豊前小倉藩主・細川忠興が、朝鮮半島出身の陶工・尊楷(そんかい)を招き、現在の福岡県福智町上野に窯を築かせたことがその起源です。尊楷は後に上野喜蔵高国と名乗り、茶の湯に用いる器を中心に作陶を行いました。

茶人としても知られた細川忠興のもとで、上野焼は藩の茶陶として発展しました。1632年(寛永9年)、細川家が肥後熊本へ国替えになると、尊楷もこれに従って移りましたが、その一族や門弟の一部は上野に残り、後に小倉藩主となった小笠原家の保護のもとで作陶を続けました。

江戸時代を通じて、上野焼は小倉藩の御用窯として受け継がれ、茶道具を中心に発展しました。また、小堀遠州ゆかりの窯として「遠州七窯」の一つに数えられ、茶陶として広く知られるようになりました。

明治時代に入り、廃藩置県によって藩の保護を失うと、上野焼は一時衰退しました。1884年(明治17年)には上野焼の本流とされる窯が途絶えましたが、明治後期になると地元の有志によって復興の取り組みが始まりました。1899年(明治32年)頃から熊谷九八郎や高鶴萬吉らが再興に取り組み、田川郡からの支援も受けながら窯業が再び受け継がれていきました。

その後も産地では技術の継承と新たな作陶が続けられ、1983年(昭和58年)4月27日には国の伝統的工芸品に指定されました。現在も福智町上野には複数の窯元が点在し、茶陶の伝統を基礎としながら、多彩な釉薬と技法を生かした作品が作られています。

Production Process / 制作工程

上野焼 - 制作工程 写真提供:福岡市

  1. 1.原土掘り 上野の山中を探し回り、良質の粘土を採取します。その後、採った粘土を乾燥させます。
  2. 2.粉砕(土を粉にする) 採取した粘土を、機械で細かく粉砕します。次に、砕いた粘土をふるいにかけ、陶土を選別します。ふるいにかけて粒子の大きなものや不純物を取り除きます。
  3. 3.土こし(土を水に入れてこす) ふるいにかけられた陶土を水槽の中に入れ、水と混ぜ合わせます。
    水に溶いた原土を沈殿させ、粒子の違いを利用して不純物や粗い粒子を取り除く「水簸(すいひ)」を行います。
    布で濾し泥状の粘土を天日干しにして水分を抜きます。
  4. 4.土練り(機械でこねる) 土練機で粘土を均一に練り、内部の空気を抜いて成形しやすい状態に整えます。
  5. 5.手練り(もう一度手でこねる) 機械でこねて寝かせた粘土を、今度は手で粘土の硬さを均一にし、残った空気を抜くよう丁寧に練ります。
  6. 6.成形(ろくろで形をつくる) 十分に練られた粘土を、ろくろを使って成形していきます。
  7. 7.半乾燥・仕上げ 成形した粘土を棚状に組み立てられた場所に並べ、干して半乾き状態まで乾燥させます。半乾きになったら裏を削ったり、持ち手を付けたりして仕上げていきます。
    薄作りの器は変形やひび割れを防ぐため、状態を確認しながらゆっくり乾燥させます。
  8. 8.素焼き(すやき) 完全に乾燥した器を、窯の中で焼きます。この「素焼き(すやき)」の工程を行うことで、釉薬が付きやすくなります。
    窯の中に器を隙間なく並べ、約800度~850度の高温のもと約5時間~6時間焼きます。
    焼成後に状態を確認し、釉掛けへ進みます。
  9. 9.釉掛け(くすりかけ) 素焼され合格したものに、「釉薬(ゆうやく)」、つまりうわぐすりをかけます。釉薬をかけ焼かれることで、ガラス質の肌触りを作り、美しい色と光沢を生み出します。代表的な釉薬は緑青釉(ろくしょうゆう)で、銅を含んだ釉です。鮮やかな青緑色の窯変が魅力の釉薬です。ほかにも、鉄釉、藁白釉、灰釉、三彩釉、透明釉、伊羅保釉など、多種多様な釉薬が用いられます。
  10. 10.本焼き(ほんやき) 「本焼き(ほんやき)」に使用する窯には、薪窯・ガス窯・電気窯・灯油窯があります。ガス窯の場合、窯の中に焼かれる器を並べる「窯詰(かまづめ)」の後、約10時間かけて焼きます。この工程を「焼成(しょうせい)」と言います。
    焼きあがった上野焼の色や肌は、多くの釉薬が使われているため、さまざまな色合い、肌触りが作られます。柚子の皮のような手触りの「柚肌」、虫食い状に素地が表れ粒状の肌が美しい「虫喰釉」、二色の土を使って木目文様を出す「木目」、ひとつの器に三種の釉薬が楽しめる「三彩」など、多種多様な色や肌の陶器が作成されます。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

中村真瑞窯元 ナカムラシンズイカマモト

庚申窯(こうしんがま) コウシンガマ

渡窯 ワタリガマ

Facility Information / 関連施設情報

アクロス福岡・匠ギャラリー

アクロス福岡・匠ギャラリー

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