上野焼 写真提供:福岡市

上野焼 アガノヤキ

千差万別ながら格調高い風合い
「茶の湯」文化に由来する薄作りで軽量な陶磁器

Description / 特徴・産地

上野焼とは?

上野焼(あがのやき)は、福岡県田川郡福智町周辺で作られている陶器です。
上野焼の特徴は、茶の道具である「茶陶」として発展したため、軽量で薄作りの格調高い風合いを持つ点です。底にある高台(こうだい)が高く、裾広がりになった撥高台(ばちこうだい)の形をしています。また、緑青釉(ろくしょうゆう)、鉄釉、藁白釉、透明釉など使用する釉薬の種類が多く、一つ一つの器が色彩や肌合い、光沢、模様など多種多様である点も上野焼の特徴の一つと言えます。
上野焼の代表的な釉薬は、酸化銅を使った緑青釉で鮮やかな青色が魅力です。鉄釉を使った陶磁器は赤茶色の光沢のない仕上がりになり、虫喰釉では素地に虫喰のような粒が一様に並んだ個性的な風合いに仕上がります。
それぞれの器が千差万別ながら、入れるものの素晴らしさを引き立てる共通の趣と気高さを誇っています。

History / 歴史

1602年(慶長7年)、千利休に茶道を学び茶人として名高い小倉藩主・細川忠興が、李朝から陶工の尊楷(そんかい、のちに上野喜蔵高国と改名)を招いて、豊前国上野に登り窯を築かせたのが始まりと言われています。
細川家の30年という短い統治の間に、上野焼の基礎は確立されました。1632年(寛永9年)、尊楷は細川家の国替えに従い肥後熊本へ移るものの、子の十時孫左衛門らが上野に留まり次の藩主・小笠原家のもと上野焼を継承しています。
江戸時代中期には尊楷が築いた登り窯は、徳川家茶道指南役である小堀遠州(こぼりえんしゅう)に「遠州七窯」のと一つとして称賛されるほどとなり、世に広く知られるようになりました。その後も、尊楷の登り窯は小笠原家が統治する幕末まで歴代藩主の御用窯として重用され続けました。
明治時代に入ると、廃藩置県により藩が消滅し一時、上野焼は衰退したかと思われましたが、1902年(明治35年)、熊谷九八郎らにより田川郡の補助を受け復興されています。

General Production Process / 制作工程

上野焼 - 制作工程 写真提供:福岡市

  1. 1.原土掘り 上野の山中を探し回り、良質の粘土を採取します。その後、採った粘土を乾燥させます。
  2. 2.粉砕(土を粉にする) 採取した粘土を、機械で細かく粉砕します。次に、砕いた粘土をふるいにかけ、良質の粘土を選別します。ふるいに残った粒子の大きな土は捨てられます。
  3. 3.土こし(土を水に入れてこす) ふるいにかけられた良質の粘土を水槽の中に入れ、水と混ぜ合わせます。その水を濾して、粒子の細かい粘土を選別する「水簸(すいひ)」という技法で良質の粘土を取り出します。布ごしで泥状の粘土を天日干しにして水分を抜きます。
  4. 4.土練り(機械でこねる) 固まった粘土を、機械でこねて筒型に形作っていきます。
  5. 5.手練り(もう一度手でこねる) 機械でこねて寝かせた粘土を、今度は手で時間をかけて練ります。この時、粘土に含まれている空気を抜くように時間をかけて練らなければなりません。
  6. 6.成形(ろくろで形をつくる) 充分に練られた粘土を、ろくろを使って成形していきます。
  7. 7.半乾燥(半乾きにする)、仕上げ、乾燥 成形した粘土を棚状に組み立てられた場所に並べ、干して半乾き状態まで乾燥させます。半乾きになったら裏を削ったり、持ち手を付けたりして仕上げていきます。上野焼の粘土は基本的にデリケートで、作りも薄いため屋内で2〜3週間かけて乾かします。
  8. 8.素焼(すやき) 完全に乾燥した器を、窯の中で焼きます。この「素焼(すやき)」の工程を行うことで、釉薬が付きやすくなり、焼かれてできる窯変(ようへん)による色も出やすくなります。窯の中に器を隙間無く並べ、約800度~850度の高温のもと約5時間~6時間焼きます。焼かれたものの中で、職人が合格としたものだけが「釉かけ(くすりかけ)」「本焼」の工程へと進みます。
  9. 9.釉かけ(くすりかけ) 素焼され合格したものに、「釉薬(ゆうやく)」、つまりうわぐすりをかけます。釉薬をかけ焼かれることで、ガラス質の肌触りを作り、美しい色と光沢を生み出します。代表的な釉薬は緑青釉(ろくしょうゆう)で、銅を含んだ釉です。鮮やかな青緑色の窯変が魅力の釉薬です。ほかにも、鉄釉、藁白釉、灰釉、三彩釉、透明釉、伊羅保釉など、多種多様な釉薬が用いられます。
  10. 10.本焼(ほんやき) 「本焼(ほんやき)」に使用する窯には、薪窯・ガス窯・電気窯・灯油窯があります。ガス窯の場合、窯の中に焼かれる器を並べる「窯詰(かまづめ)」の後、約10時間かけて焼きます。この工程を「焼成(しょうせい)」と言います。
    焼きあがった上野焼の色や肌は、多くの釉薬が使われているため、さまざまな色合い、肌触りが作られます。柚子の皮のような手触りの「柚肌」、虫食い状に素地が表れ粒状の肌が美しい「虫喰釉」、二色の土を使って木目文様を出す「木目」、ひとつの器に三種の釉薬が楽しめる「三彩」など、多種多様な色や肌の陶磁器が作成されます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

中村真瑞窯元 ナカムラシンズイカマモト

庚申窯(こうしんがま) コウシンガマ

渡窯 ワタリガマ

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

アクロス福岡・匠ギャラリー

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