波佐見焼

波佐見焼 ハサミヤキ

透けるような白磁と、藍の染付
江戸庶民の「くらわんか碗」と輸出用「コンプラ瓶」

Description / 特徴・産地

波佐見焼とは?

波佐見焼(はさみやき)は、長崎県東彼杵郡波佐見町で作られている陶磁器です。戦国時代の後期に誕生した伝統工芸品ですが、現在も日用食器として親しまれています。
波佐見焼の特徴は、白磁と透明感のある呉須の藍色が美しいことです。波佐見焼の中でも、くらわんか碗やコンプラ瓶、ワレニッカ食器などがよく知られています。
くらわんか碗は、「餅くらわんか、酒くらわんか」という掛け声とともに売られたことから、その名前がつきました。コンプラ瓶は、主に輸出向けに作られたものです。語源は仲買人を意味するポルトガル語で、金富良商社が酒や醤油を輸出するためにコンプラ瓶を使っていました。コンプラ瓶に酒や醤油が詰められて輸出されていたのは幕末頃で、出島からヨーロッパなどに輸出されていました。
ワレニッカ食器は1987年(昭和62年)に割れにくい給食用の食器として開発されたもので、強化磁器のルーツとも言われています。最初は町内の小学校のみでしたが、給食の普及に伴って県外の学校や病院へも出荷され、全国で使われるようになりました。

History / 歴史

波佐見焼 - 歴史

1598年(慶長3年)大村藩主の大村喜前が朝鮮の陶工を連れ帰ったことが波佐見焼の始まりで、翌年の1559年(慶長4年)から実際に焼き物作りが始まりました。当時の窯のタイプは登窯で、畑ノ原・古皿屋・山似田の3カ所に窯が設けられていました。
現在の波佐見焼は、白磁と藍のコントラストが美しい染付・青磁作品が主流ではありますが、窯を築いて間もないころは施釉陶器を作っていました。染付・青磁が主流になったのは1602年(慶長7年)以降のことで、磁器の原料が見つかったために次第に施釉陶器から磁器へシフトしていきました。その後、磁器の生産量が増え江戸時代後期には生産量日本一になるほどの成長ぶりを見せました。
生産量が日本一になった背景には「くらわんか碗」の存在があります。江戸時代の庶民にとって陶磁器は高級品でしたが、くらわんか碗は手ごろな値段で販売されていたため、多くの庶民の食卓を彩りました。

General Production Process / 制作工程

  1. 1. 陶石・粉砕 波佐見焼を作るための原料として、天草陶石が使われます。天草陶石は、天草半島から採掘される粘土の陶石です。天草陶土や天草石とも呼ばれ、有田焼など他の陶磁器でも良く使われています。採掘された天草陶石を粉砕し、手作業で1等級から5等級までに分類します。その後、より分けられた陶石を粉末にして水簸(すいひ)を行います。水簸とは、粉末にされた陶石を攪拌槽に入れて珪石粒を取り除く作業で、鉄分を除去し、圧力をかけて脱水します。程よく水分の抜けた土を土練り機で練りながら空気を抜けば、坏土の完成です。
  2. 2. 成形 機会ろくろや手ろくろ、ローラーマシン、鋳込みなどで成形を行います。陶磁器の成形には、手びねりという技法もありますが、波佐見焼ではあまり使われません。大量生産を行う波佐見焼ではほとんど型を使って作ります。成形が終わった後は、風通しと日当たりの良い場所でしっかり乾燥させます。
  3. 3.素焼き 乾燥が終わったら800~950度で焼成します。素焼きを行うことで、素地の強度が高まり、また吸水性が良くなるために下絵付けや施釉がしやすくなります。焼きあがったら、表面についた付着物を羽ほうきなどで取り除きます。
  4. 4.下絵付け 釉薬をかける前に行う絵付けを「下絵付け」と呼びます。波佐見焼の特徴的な藍色は、染め付け呉須(ごす)によるものです。下絵付けは筆で行う他、印刷を用いることもあります。
  5. 5. 釉かけ 下絵付けが終わった陶磁器に、釉薬(ゆうやく)を付ける工程です。釉薬を使う目的は、陶磁器の美しい光沢を出すことだけではありません。汚れや水漏れ防止といった機能性付加、ガラス質の膜がはることによって強度が高められることも施釉の目的です。
  6. 6.本焼成 本焼きとも呼ばれる工程で、約1,300度で焼き上げます。焼き上げてすぐに釜から出すと釉飛びなどが出てしまうため、室温近くまでゆっくりと温度を下げた後に出します。
  7. 7.上絵付け 赤絵など、温度の制約を受ける顔料は上絵付けの段階で使います。上絵具で彩色された後は、750~850度で焼成して完成です。なお、上絵付けで金箔を使う金彩を用いる場合は、少し工程が異なります。金彩以外の上絵付けが終わった段階で、一度焼成が必要です。焼成後に金彩を施し、施釉して約400度の低温で焼成します。
  8. 8.検品 完成した波佐見焼は、1つ1つ丁寧に検品されてから出荷されます。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

一真窯 イッシンガマ

一真窯

「器づくりから心器づくり」をコンセプトに、心のうつわを伝えたいと焼き物づくりに一筋。より多くの人々に愛される作品づくりに挑戦しています。

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Where to Buy & More Information / 関連施設情報

波佐見町 陶芸の館

波佐見町 陶芸の館 写真提供:波佐見焼振興会

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