壺屋焼

壺屋焼 ツボヤヤキ

沖縄の土が生む、素朴で力強く温かな風合い。釉薬を施した色鮮やかな「上焼」と、土味を生かした「荒焼」、線彫りや赤絵など多彩な技法と表情が魅力です。1976年(昭和51年)、国の伝統的工芸品に指定されました。

Description / 特徴・産地

壺屋焼とは?

壺屋焼(つぼややき)は、沖縄県那覇市壺屋を中心に、読谷村や恩納村などで作られている陶器です。沖縄では焼物を「やちむん」と呼び、壺屋焼はその代表的な工芸品の一つです。1976年(昭和51年)6月2日に、国の伝統的工芸品に指定されました。

壺屋焼は、大きく「上焼(じょうやち)」と「荒焼(あらやち)」の二つに分けられます。上焼は、化粧土や釉薬を施し、線彫り、掻き落とし、象嵌、絵付けなどさまざまな技法によって装飾する焼物です。食器や酒器、花器などが多く作られ、沖縄の風土を感じさせる力強い文様や豊かな色彩を特徴としています。

一方、荒焼は基本的に釉薬を施さず、土そのものの色合いや質感を生かして焼き上げる焼物です。酒甕や水甕、厨子甕など比較的大型の器が多く、素朴で力強い表情を持っています。

上焼では、赤土の素地に白い化粧土を掛ける「化粧掛け」や、線彫り、掻き落とし、飛ばし鉋、盛り付けなど、多彩な加飾技法が用いられます。また、透明釉や飴釉、緑釉、黒釉などの釉薬によって、温かみのある色合いが生み出されます。

カラカラや抱瓶(だちびん)、シーサー、厨子甕など、沖縄独特の形を持つ製品が多いことも壺屋焼の特徴です。現在も伝統的な技法を受け継ぎながら、日常の器や現代的な作品まで幅広い焼物が作られています。

History / 歴史

壺屋焼 - 歴史 写真提供: 沖縄観光コンベンションビューロー

沖縄の焼物文化は、中国や東南アジアとの交易が盛んだった14世紀から16世紀頃に、海外から陶磁器や製陶技術が伝わったことを背景に発展したと考えられています。沖縄では古くから焼物が作られ、17世紀には朝鮮半島などから伝わった技術も取り入れながら、独自の陶器文化が形成されていきました。

1609年(慶長14年)の薩摩藩による琉球侵攻後も、琉球王府は焼物の生産を重要な産業として育成しました。17世紀には、朝鮮系の陶工による技術なども取り入れられ、釉薬を施して焼く上焼の技術が発展していきました。

1682年(天和2年)、琉球王府は各地に分散していた美里の知花窯、首里の宝口窯、那覇の湧田窯を現在の那覇市壺屋周辺に統合しました。陶工たちを壺屋に集めて生産を集中させたことが、現在につながる壺屋焼の始まりとされています。

その後、壺屋は琉球を代表する焼物の産地として発展し、上焼と荒焼の双方が作られました。食器や酒器、甕などの生活用品だけでなく、カラカラ、抱瓶、厨子甕、シーサーなど、沖縄の暮らしや文化と深く結びついたさまざまな焼物が生み出されました。

明治時代以降は、琉球王府による保護を失い、他地域から流入する陶磁器との競争などによって産地は厳しい状況を迎えました。一方、昭和初期には柳宗悦や濱田庄司、河井寬次郎ら民藝運動に関わる人々が沖縄の焼物に注目し、その素朴で力強い造形や技法が広く紹介されました。

戦後も壺屋では焼物づくりが続けられましたが、市街地化が進むにつれて登窯による煙が問題となり、1960年代以降、一部の陶工が読谷村などへ窯を移しました。これによって、壺屋で受け継がれてきた技術は那覇だけでなく読谷などにも広がっていきました。

1976年(昭和51年)6月2日には、壺屋焼が国の伝統的工芸品に指定されました。1985年(昭和60年)には、壺屋焼の陶工・金城次郎が「琉球陶器」の技術で重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。現在も那覇市壺屋や読谷村などで、上焼・荒焼の伝統を受け継いだ焼物が作られています。

Production Process / 制作工程

壺屋焼 - 制作工程 写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー

  1. 1. 陶土の準備
    壺屋焼では、作る製品や「上焼」「荒焼」の違いに応じて使用する土や調整方法が異なります。上焼では、原料土を水に溶いて不純物や粗い粒子を取り除く水簸(すいひ)などを行い、成形に適した陶土に整えます。

    一方、荒焼では土そのものの質感を生かすため、上焼とは異なる方法で原料を調整します。準備した陶土は十分に練り、硬さを均一にするとともに内部の空気を抜いて、成形しやすい状態に整えます。
  2. 2. 成形
    ろくろ、手びねり、型などを使い、器の形を作ります。壺、甕、皿、鉢、酒器、抱瓶(だちびん)、カラカラなど、製品の形や大きさに合わせて成形方法を使い分けます。

    ろくろで成形する場合は、土の厚みや形のバランスを確認しながら少しずつ形を整えます。大型の甕などでは、複数回に分けて土を積み上げながら成形することもあります。
  3. 3. 化粧掛け
    上焼では、成形した素地に白い化粧土を施す「化粧掛け」を行うことがあります。赤みのある素地の表面を白く覆うことで、その後に施す文様や釉薬の色を引き立てます。

    化粧土は、製品全体に掛けるほか、部分的に施す場合もあります。荒焼では基本的に化粧掛けを行わず、土そのものの色や質感を生かします。
  4. 4. 加飾
    化粧掛けをした素地や、成形後の素地にさまざまな装飾を施します。壺屋焼では、線彫り、掻き落とし、象嵌、飛ばし鉋、盛り付けなど、多彩な技法が用いられます。

    線彫りでは表面に線を彫って文様を表し、掻き落としでは化粧土の一部を削り取って素地の色との対比を生み出します。製品によっては、植物や魚、鳥など沖縄らしい題材を描くこともあります。
  5. 5. 釉掛け
    加飾を終えた上焼の素地に釉薬を施します。透明釉、飴釉、緑釉、黒釉など、製品や表現に応じてさまざまな釉薬が使われます。

    釉薬は、器を釉薬に浸す方法や、柄杓などで流し掛ける方法などによって施します。釉薬の厚みや掛かり方によって焼き上がりの色や表情が変わるため、素地の状態を見ながら調整します。
  6. 6. 絵付け
    上焼では、釉薬や化粧土を生かしながら文様を描く絵付けを行う場合があります。鉄や銅などを含む顔料を使い、植物、魚、鳥、幾何文様などを筆で描いていきます。

    線の太さや色の濃淡、筆の動きを調整しながら、壺屋焼らしい力強く伸びやかな文様に仕上げます。
  7. 7. 焼成
    十分に乾燥させた作品を窯に詰め、本焼きを行います。伝統的な上焼では、素焼きを行わずに化粧掛け、加飾、施釉などを施してから本焼きする「一度焼き」を基本とします。

    上焼はおよそ1,200℃前後、荒焼はそれより低い温度を目安に焼成されますが、実際の温度や時間は窯や製品によって異なります。

    登窯では炎や灰、窯内の位置によって一つひとつ異なる表情が生まれます。現在は温度管理のしやすいガス窯なども用いられています。
  8. 8. 上絵付け・仕上げ
    製品によっては、本焼き後の器に赤絵などの上絵付けを施します。上絵付けを行った作品は、再び低い温度で焼成して絵具を定着させます。

    最後に、焼き上がりや釉薬の状態、ひびや欠けの有無などを確認します。必要に応じて底面を整え、検品を行って完成です。

Representative Manufacturers / 代表的な製造元

育陶園 イクトウエン

陶眞窯 トウシンガマ

新垣陶苑

Facility Information / 関連施設情報

てんぶす那覇

てんぶす那覇 写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー

Other Ceramic / 陶磁器一覧

Other Crafts Made in Okinawa / 沖縄県の工芸品