- 陶磁器
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大堀相馬焼 オオボリソウマヤキ
素朴な味わいと優しさ
青ひびの地模様が強い個性を演出
Description / 特徴・産地
大堀相馬焼とは?
大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)は、福島県双葉郡浪江町周辺で作られる陶磁器です。大堀相馬焼に使われる青磁釉は、この地域から採れる砥山石(ちゃまいし)を主な原料としています。
大堀相馬焼の特徴は、「青ひび」と呼ばれる地模様です。青磁釉の青みを帯びたガラス質の表面に、「青ひび」と呼ばれるひび割れが地模様として器全体を覆います。素材と釉薬(ゆうやく)との収縮率の違いにより、焼くときに「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる亀裂が入り、繊細なひび割れ模様が生まれます。そのとき、「貫入音(かんにゅうおん)」という美しい音を伴ってできます。また、旧相馬藩が崇めた「御神馬」を狩野派の筆法により「走り駒」の絵として手描きされます。
大堀相馬焼は器の構造が「二重焼」になっているため入れたお湯が冷めにくく、熱いお湯を入れても持つことができるという構造になっています。これは他に類を見ない技法で、一般の人のために使いやすさを追求したところから生まれました。
History / 歴史
江戸時代初期、中村藩士の半谷休閑(はんがい きゅうかん)が、現在の双葉郡浪江町大堀一帯で陶土を発掘し、下男の左馬に日用雑器を作らせたのが始まりと言われています。
現在の相馬市中村にあった中村城下で作られた「相馬駒焼」は、藩主相馬氏への献上品とされたのに対して、大堀相馬焼は庶民の日用雑器として親しまれました。
当時、中村藩は陶磁器を特産品として生産することを奨励し窯元の保護育成に努め、江戸時代後期には100戸を超える多くの窯元が誕生するほど盛んになりました。北海道から関東一円、または上州一帯へと販路も広がり、産業として大きく発展しています。
明治時代に入ると、廃藩置県により中村藩も廃藩となったため、大堀相馬焼に対する藩の保護がなくなり、大正時代には窯元の数も30戸と減少してしまいました。
昭和時代の戦争により衰退の影を見せますが、現在は、25戸の窯元が伝統を守りながら、制作に励んでいます。
Production Process / 制作工程
- 1.成形 まず、「成形」を行います。大堀相馬焼は、主にろくろを使用して成形します。二重焼構造にするため、内側と外側になるものを、寸歩、形状を考慮しながら作成します。
- 2.削り仕上(けずりしあげ)
まだ生乾き状態の成形品を、作る製品によって高台削り、外削りなどを行います。また、「飛びかんな」という技法などで装飾を施します。「飛びかんな」とは、へら状の削り用の道具を使って、ろくろで回転する作品の表面に、傷のような模様を付けて行きます。
内側の器を外側の中にすっぽりと収め、器の縁、つまり口の当たる部分だけを張り合わせ成形を完成させます。 - 3.生地加色(きじかしょく)
半乾きの成形品に、製品に応じて「花抜」、「泥塗り」、「菊押し」などの「生地加色(きじかしょく)」という工程を行います。「菊押し」とは菊の模様を施すことです。また、完全に乾燥させてから行う彫りなども行います。
赤い色は、「さるぽ」と呼ばれる鉄分を含んだ化粧泥で色付けします。ハート型の透かし装飾は「千鳥」をデザイン化したもので、全体で「波に千鳥」を表現したと言われています。 - 4.乾燥 次に「乾燥」の工程を行います。急激な乾燥は、亀裂や歪みを起こしてしまうために、まず、陰干しにした後、天日干しにします。
- 5.素焼 完全に乾燥させた作品を、900度から950度の窯の中で「焼成(しょうせい)」します。「焼成」とは、窯や炉の中で高温加熱させることです。
- 6.下絵付 素焼された作品は吸水性が良くなっています。作品に呉須(ごす)という鉄分、コバルト化合物を含んだ絵具で下絵を描きます。代表的な絵は「走り駒」ですが、ほかにも山水や松竹梅なども題材になります。筆法は狩野派になっています。
- 7.釉かけ(くすりかけ) 作品に釉(うわぐすり)をかけます。「浸しかけ」、「回しかけ」、「流しかけ」などの技法で釉をかけていきます。
- 8.本焼き 釉をかけた作品を窯に入れ、1250度から1300度程度の高温で「本焼き」をします。
- 9.上絵付け 本焼きを終えた作品は、そのまま製品として販売されるものがありますが、さらに、上絵付けをされるものもあります。
- 10.墨入れ 最後に、製品全体に入った「ひび割れ」模様をはっきりとさせるため、墨汁を擦り込んで布でふきとります。その「ひび割れ」模様は「青ひび」と呼ばれ、大堀相馬焼の特徴であり魅力になります。
Representative Manufacturers / 代表的な製造元
松永窯
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住所
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HP
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電話0287-74-3503
あさか野窯 アサカノガマ
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創業1834年 (天保5年)
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代表志賀 喜宏
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住所
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HP
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電話024-973-6320
Facility Information / 関連施設情報
会津町方伝承館
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住所
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電話0242-22-8686
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定休日月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休み)、年末年始(12/31~1/4)
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営業時間9:00~18:00
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アクセス【バス】まちなか周遊バス ハイカラさん「会津町方伝承館」下車すぐ(徒歩) 【電車】JR会津若松駅より約7分
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HP
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