- 織物
- 沖縄県
与那国織 ヨナグニオリ
小さな南国の島で誕生した素朴な美しさ
琉球王府への献納品として発達した染織技術
Description / 特徴・産地
与那国織とは?
与那国織(よなぐにおり)は、沖縄県八重山郡与那国町で作られている織物です。与那国織の特徴は、独特の風土と手作りによって染め織り上げられた素朴な美しさです。織りの技法により、花織物の「与那国花織」、縞織物の「与那国ドゥタティ」、紋織物の「与那国シダディ」、絣織物の「与那国カガンヌブー」に分類されます。どの織物も島に自然に生える植物から作られる染料で染められた後に手織りされ、通常、デザインから染色、織りに至る作業を1人が担当します。
最も多く織られる与那国花織は、子縞柄と小さな花模様が織り出される直線的な幾何学模様で、時代の流れと共に色彩やデザインが変化しています。また、身ごろ4枚(=ドゥ)で仕立て(=タティ)られるドゥタティは、夫婦を表すミウト絣の模様が織られた細帯・カガンヌブーと共に、お祭りなどで着用されてきました。ゆっくりとした時間の中で織り上げられる与那国織は、島特有の着物や帯だけでなく、手ぬぐいやネクタイ、バッグなどの製品も作られるようになっています。
History / 歴史
与那国織の始まりは、室町時代に当たる15世紀頃と言われています。朝鮮の史書「李朝実録」には、1479年に朝鮮からの漂流民からの見聞録として既に与那国島では機(はた)で布が織られていたことが記載されています。
また、16世紀前半には献納品として琉球王府へ納められており、役人のみが与那国花織の着用を許されていました。琉球王府では外国との貿易を通じて織物技術や材料を積極的に取り入れ、洗練された染織が多彩に発展したと言われています。
戦中戦後は糸の入手が難しく、漁業網を解いて織っていた時期や機織り自体が途絶えていた時期もありましたが、1979年(昭和54年)には与那国織の復活を目指して「与那国町伝統工芸館」が建てられ、今日まで豊かな織物文化を伝え続けています。
Production Process / 制作工程
- 1.デザイン ここでは、「与那国花織」の製作工程を説明します。伝統的な図柄などを参考にして用途に応じた材料を選択し、図案を制作します。
- 2. 絣括り(かすりくくり) ムラなくきれいに染色するために、糸をお湯に浸して糊や汚れなどを取り除きます。その後、絣の場合は、糸繰りして絣糸や地糸を巻き取り、絣用の糸を引き揃えて張り伸ばし、図案通りに印をつけて、印の部分を木綿糸などで手括りします。
- 3. 染色
よく湿らせて叩いた糸を染液に浸し、温度を徐々に上げながら「煮染め」をします。必要があれば「媒染」と「染色」を繰り返します。媒染とは、植物色素の定着や発色を手助けするために、糸を媒染剤液に浸すことです。
絣の場合、濃度を均一にするために絣糸と地糸を一緒に染めますが、糸質や用途により別々に染めることもあります。
染めた糸は固く絞り叩いて空気酸化を行い、その後は天日で乾燥させます。
染料は、島の植物を採取して作ります。使われる植物は、インド藍、福木(ふくぎ)、ミトゥフ、車輪梅(しゃりんばい)、 月桃(げっとう)、クサギ、椎の木などです。また、植物により青色系、黄色系、赤色系の染料を作ることができますが、植物染料の作り方は原料となる植物により異なります。
・インド藍
採取したインド藍は、桶に水を入れて藍の葉を入れて2~3日放置します。その後、藍草を取り出して石灰を混入してかき混ぜ、沈殿した藍分に酒や水飴などを混ぜて自然発酵させます。
・ミトゥフ
ミトゥフの葉は、洗った後に鍋で約30分煎じます。3番煎じまで行った液を布などでこしたものが染液となります。 - 4. 糸繰り 糸繰り機などを使用して糸を巻き取ります。
- 5. 整経(せいけい) 必要な長さ、本数の縦糸を一定の張力で引き揃えます。
- 6. 仮筬通し(かりおさどおし) 筬(おさ)1目に糸2本を通していきます。
- 7. 経巻(たてまき) 縦糸の張力を一定にして、紙をはさみながら巻き取ります。絣柄にズレがある場合は調整します。
- 8. 綜絖通し(そうこうどおし) 巻き取った縦糸は仮筬を外し、糸を1本1本「綜絖(そうこう)」に通していきます。
- 9. 花綜絖がけ(はなそうこうがけ) 花綜絖に糸を通す作業で、花織の模様ができる重要な工程です。
- 10. 織り 機織りの作業で、花綜絖を上げ下げしながら織り進めます。通常は、製織専門の織工が1~2カ月かけて1反を織り上げます。
Representative Manufacturers / 代表的な製造元
花ゆり工房 ハナユリコウボウ
花ゆり工房ではたったの20分でしおり、コースター:、花織バック、花織ネクタイなど伝統工芸品である与那国花織を体験できます。
-
定休日不定休(島内行事)
-
代表前外間 百合子
-
営業時間9:00~18:00(昼休み12:00~13:00)
-
住所
-
電話0980-87-3387
-
見学可
徳美工房。 サトミコウボウ
徳美工房。では、福木、ハイビスカス、月桃など自然豊かな与那国島の木々や草花を中心に染色し、島の自然を織り込みながら、与那国織の古典柄を中心に伝統を守りながら、自分らしい表現をプラスした与那国織を目指しています。
-
創業1998年
-
定休日日曜日 ※地域行事の場合もお休みとさせて頂きます。
-
代表長濱 徳美
-
営業時間10:00~18:00
-
住所
-
HP
-
電話0980-87-2091
-
見学可 / コースター体験織り、ティーマット織り体験
Facility Information / 関連施設情報
与那国町伝統工芸館
-
住所
-
電話09808-7-2970
-
定休日旧盆、正月、日曜日
-
営業時間8:30~17:30、土曜8:30~17:00
-
アクセス与那国空港よりタクシー15分
Other Woven textiles / 織物一覧
- 西陣織
- 結城紬
- 小千谷縮
- 久留米絣
- 博多織
- 牛首紬
- 秩父銘仙
- 塩沢紬
- 宮古上布
- 久米島紬
- 近江上布
- 琉球絣
- 桐生織
- 村山大島紬
- 弓浜絣
- 置賜紬
- 小千谷紬
- 知花花織
- 本塩沢
- 八重山上布
- 八重山ミンサー
- 首里織
- 信州紬
- 多摩織
- 本場大島紬
- 読谷山花織
- 伊勢崎絣
- 羽越しな布
- 二風谷アットゥㇱ
- 本場黄八丈
- 阿波正藍しじら織
- 喜如嘉の芭蕉布
- 十日町絣
- 十日町明石ちぢみ
- 与那国織
- 読谷山ミンサー
- 奥会津昭和からむし織
- 南風原花織