本場大島紬

本場大島紬 ホンバオオシマツムギ

南方伝来の上品で繊細な文様
奄美の自然と職人技から生まれる紬織物

Description / 特徴・産地

本場大島紬とは?

本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)は、鹿児島県奄美(あまみ)地方で作られている織物です。絹100%の先染め手織りの平織りで、手作業で締機(しめばた)や手機(てばた)で加工されます。
本場大島紬の特徴は、シャリンバイと泥染による深く渋い風格と、繊細な絣模様です。着崩れせず着こむほどに肌に馴染むので、着心地の良さからも愛されてきました。しなやかで軽くシワにもなりにくく、奄美の自然から生まれた着る人に優しい織物です。
製造工程は大きく分けて30以上あり、完成まで半年、またはそれ以上かかることもあります。図案作成から織りあげまでの工程一つ一つが大変複雑なため、熟練した高い技術が必要です。
現在は伝統的なものだけでなく、色大島や白大島などのニューカラー、ニューデザインのものが開発されています。色柄や風合いのバリエーションを豊かにすることで、成人式や結婚式など様々な場面で着用されるようになりました。洋装分野やインテリアの製品化がされるなど、産地は新しい本場大島紬づくりに取り組んでいます。

History / 歴史

本場大島紬は7世紀頃に奄美(あまみ)で始まり、18世紀初期には産地が形成されました。鹿児島へも技法が伝わったと言われています。歴史は文献が少なく起源が定かではありません。1720年(享保5年)に薩摩藩が奄美島民に対して、紬着用禁止令を発令した史実が確認されています。
鹿児島と沖縄の間に位置する奄美大島は、古くから南方との海上交通の要所であり、道の島とも呼ばれ、南北より様々な文化が流入しました。
1850年(嘉永3年)~1855年(安政2年)に奄美に滞在した薩摩藩士の名越左源太が書いた「南島雑話」には、奄美の衣服や養蚕について絵図と共に記されています。亜熱帯性気候である奄美大島は、養蚕にも適した地であったため、織物が盛んになりました。
1907年(明治40年)頃からは、締め機(しめばた)によって作成するようになり、世界でも類まれな経緯(たてよこ)の繊細な絣模様が完成しました。
第二次世界大戦では奄美、鹿児島共に多くを失いましたが、1950年(昭和25年)には資金が導入され生産が始まります。
近年は円高不況やライフスタイルの変化によって、現在の生産数は最盛期の1割以下ともいわれていますが、価値ある島の名産として愛されています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.図案・織物設計 本場大島紬は数々の工程を経て、半年から一年以上の日数をかけて作られる織物です。
    本場大島紬の製作は図案制作からスタートします。種別や糸の密度に合わせて織物を設計したうえで、方眼紙に図案を描く作業です。
  2. 2.糊張り(のりばり) 締機(しめばた)を使って、絣(かすり)を括っていく準備の工程です。締機で強く締めくくるために、必要な経糸(たていと)、緯糸(よこいと)を必要な本数を準備して糊張りをします。
    奄美大島の海草糊の原料は、イギス・フノリです。海草糊を使用することで、虫がつきにくく加工が処理しやすくなる、艶がでて伸縮が良くなるなどの利点が多くあります。16本ずつにまとめて海草糊で糊付けをして天日で十分に乾燥させます。
  3. 3.絣締め加工(かすりしめかこう) 締織(しめばた)を使用して図案に合わせながら、絹糸を強く締めていきます。力仕事でもあるため、締織を使うのは古来より「男性の仕事」と言われてきました。絣を織締するという技法は、絣模様の正確な織りと生産効率を向上した画期的な技法です。鹿児島市の大島紬機屋、永江伊栄温と永江当八によって開発されました。他の産地では糸括りや板締の技法を使用するのに対して、本場大島紬では締機(しめばた)を用いて精巧に絣(かすり)を織り上げます。
  4. 4.テーチ木染め テーチは和名を車輪梅(しゃりんばい)と言います。テーチの幹と根を小さく割って大釜で約14時間ほど煎じた汁が、テーチ木の染料です。20回ほど染色を繰り返し、テーチ木の色素タンニンにより、赤褐色に糸が染まっていきます。
  5. 5.泥染め テーチ木染めを20回、泥田で1回染める、という工程を、3~4回繰り返します。テーチ木がもつタンニン酸と泥の鉄分が化合し、独特の渋い黒色調に染めあげる工程です。泥染めの利点は、シワになりにくくなる、燃えにくくなる、防汚できる、静電気の発生を抑える他多くあります。
  6. 6.準備加工 機織り(はたおり)のための準備は28工程に上ります。主に、整経、糸繰り、糊付け、糊張り、部分脱色、摺込み染色、絣むしろほどき、柄合わせなどです。

  7. 7.手織り 高機(たかばた)により、一糸ずつ手作業で織られていきます。経(たて)絣をゆるめて、1本1本丹念に針で絣を合わせていく作業です。手織りの作業によって、模様がはっきりと浮き出してきます。一反を織るには1ヶ月以上かかり、難しい柄にかかる時間は数ヶ月以上です。
  8. 8.絣調整 高機で手織りをしていく中で、7㎝程織って、経糸をゆるめて、針で絣を合わせます。
  9. 9.製品検査 織りあげられた反物などは全て、本場大島紬共同組合の検査場に持ち込まれます。検査場の経験豊富なベテラン検査員が、長さや織り巾(おりはば)、色むらや絣の不揃いなど20項目を厳しくチェックするのです。合格した織物には一反ごとに品質表示証と旗印の商標を貼って、「本場大島紬」であることを証明します。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

株式会社大島紬村 オオシマツムギムラ

大島紬村は、本場奄美大島紬の織元が運営する大島紬の観光庭園。大島紬製造工場では、大島紬の製造現場を見学していただけます。

仙太織物株式会社 センタオリモノ

鹿児島市を拠点とする本場大島紬の製造織り元で、ウコン染大島紬が代表作です。お客様が生活の中で主役として輝く大島紬を提供します。

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