宮古上布 写真提供: 沖縄観光コンベンションビューロー

宮古上布 ミヤコジョウフ

滑らかな風合いとロウを引いたような艶
重要無形文化財に指定されている最高級の麻織物

Description / 特徴・産地

宮古上布とは?

宮古上布(みやこじょうふ)は、沖縄県宮古島で作られている織物です。苧麻(ちょま)という麻の繊維で作った糸で織られる麻織物で、琉球藍で染めて作られます。
宮古上布の特徴は細い糸で織られる精緻な絣模様とロウを引いたような光沢のある滑らかな風合いです。苧麻の繊維を1本1本手で裂いて作った細い糸で作られるため、通気性に富んでいて、三代物と呼ばれるほど丈夫で長持ちします。
イラクサ科の多年草である苧麻は古くから沖縄地方に自生する植物で、40日ほどで生育し、宮古島では年5回ほど収穫可能です。糸を積むところから始まり1つの反物が織り上がるまで、数年かかることも珍しくありません。
「括染め」(くくりぞめ)によって何度も琉球藍を染め重ねた糸を経糸に1,120本余も使い、3カ月以上かけて細かい白い絣模様の中に亀甲や花柄の模様が浮かび上がる布が織り上がります。最後の「砧打ち」(きぬたうち)によって、宮古上布独特の光沢と柔らかさが生まれます。
日本の四大上布の一つに数えられ、藍染の麻織物の最高級品として重要無形文化財に指定されています。

History / 歴史

宮古上布 - 歴史 写真提供: 沖縄観光コンベンションビューロー

宮古島地方では、15世紀頃から苧麻を使った麻織物が織られていたと考えられています。
今から400年ほど前に、琉球から明へ向かう貢物を乗せた船が台風で沈没しそうになった際、宮古島の男が荒れる海に飛び込んで船を修復し乗組員の命を救いました。琉球の国王が功績を称えてこの男を問切坊主に取り立てます。これを喜んだ男の妻が献上した麻の織物が宮古上布の始まりとされています。この後約20年以上にわたり、宮古上布は琉球王府へ献上されました。
1609年(慶長14年)に琉球が薩摩の支配下になり、1637年から人頭税が課せられるようになると、女性には宮古上布を貢布として納付することが義務付けられます。役人の厳重な監督のもとで作られた精緻な宮古上布は、麻織物の最高級品として薩摩上布という名前で広く知られるようになります。やがて人頭税が廃止されると、品質が落ちるのを防ぐために織物組合が組織され品質の保持に努めるようになり、生産量の最盛期は大正時代から昭和の初期にかけてです。
太平洋戦争後、沖縄がアメリカの支配下になると宮古上布は衰退します。現在では伝統技術継承のため後継者の育成に力を入れています。

General Production Process / 制作工程

宮古上布 - 制作工程 写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー

  1. 1.苧麻(ちょま)から繊維をとる 宮古上布には、イラクサ科の苧麻から作った糸が使われます。苧麻(ちょま)は風に弱いため、裏庭など風の当たりにくい場所で、化学肥料は使わずに栽培されます。約40日で150cmを超える高さに育ったら、根元から刈り取り、葉を落として茎の表皮をはぎ取ります。茎の内側の繊維以外をアワビの貝殻を使ってそぎ落とすのが、他の地方とは異なる特徴です。年4~5回収穫することができますが、最も品質が良いのが初夏の5~6月に収穫されるもので「ウリズンブー」と呼ばれます。こうして取った繊維は水洗いをし、陰干しして乾かします。
  2. 2.苧績み(おうみ/ブーンミ) 苧麻からとった繊維を、爪や指で裂いてごく細い糸に績んでいきます。経糸(たていと)、緯糸(よこいと)ともに手で績む、気の遠くなる作業です。経糸は髪の毛の太さほどまで裂き、結ばずにより合わせて1本の糸にしていきます。これを糸車にかけて撚り(より)をかけます。経糸は2本合わせた2本撚り、緯糸は1本撚りにしますが、一人で一反分の糸を績むのは3カ月以上を要します。「苧績み」は布の風合いを左右する重要な工程です。
  3. 3.図案と絣締め 宮古上布の特徴である十字絣の模様を方眼紙に描いてデザインを決めます。絣模様に用いられるのは「括り染め」の技法です。まず、一反分に糸の長さを揃える「整経(せいけい)」の後、絣締めの際に模様がずれないよう、糊づけを行います。糊が乾いてから、図案に合わせて白く残す部分を木綿糸で括りますが、絣が大変細かいため締機を使います。締めた糸はむしろのような状態になるため、絣むしろと呼ばれています。糸を括ったら、染色をむらなく行うために糊を落とします。
  4. 4.染色 宮古上布の染料には、沖縄本島伊豆味で栽培される琉球藍が使われます。始めにポリ容器に入れた泥状の藍に、アルカリ分の苛性ソーダと醗酵を助ける泡盛や黒糖を入れてよくかき混ぜて1~2週間置いておき、この間は毎日撹拌(かくはん)します。やがて醗酵すると藍の花と呼ばれる泡が出るので、絣むしろと無地の地糸を液につけて染めていきます。藍は空気に触れると酸化して発色するため、糸を浸けてから取り出して十分空気に触れさせ、しぼって4~5時間天日干しします。糸の色が濃く染まるまで、20回ほど液に浸しては取り出しす作業を繰り返します。
  5. 5.仮筬(かりおさ)通し 糸が染め上がったら、絣を締めていた糸を取り、よく洗って乾かします。用意した図案に合わせ、1本ずつ糸を仮筬に通していきます。
  6. 6.製織 「仮筬通し」が終わった糸を巻き取り、綜絖(そうこう)の目に通した後、さらに筬に通して織の準備が整います。細かい絣模様がずれないように、針で経糸の模様のずれを直しながら、丁寧に少しずつ織っていきます。熟練した人でも、1日に織ることができるのはわずか20cmほどです。
  7. 7.砧打ち(きぬたうち) 織り上がった布を洗濯して陰干しした後、イモクズでんぷんで布の両面を糊づけし、小さく折りたたんでおきます。アカギの台の上に布を置いて、重さ4kgもあるイスノキで作られた木槌で3時間ほど叩きます。まんべんなく叩くことで、ロウのような光沢のあるなめらかな布に仕上がります。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

琉球染織 琉香 リュウキュウセンショク リュウカ

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

沖縄県立博物館・美術館

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