近江上布 ©(公社)びわこビジターズビューロー

近江上布 オウミジョウフ

琵琶湖が守り続ける七百年の伝統
麻の爽やかな風合いと、上品な独特の絣模様

Description / 特徴・産地

近江上布とは?

近江上布(おうみじょうふ)は、滋賀県湖東地域の愛知郡周辺で作られている織物です。苧麻(ちょま)や手績み(てうみ)の大麻の糸で織られています。
近江上布の特徴は細い麻の繊維で織られる爽やかな風合いと上品な絣模様です。絣だけでなく、漂泊していない麻を使った生平(きびら)も作られ、経糸に苧麻、緯糸に手績みの大麻糸が使われます。
手績みは麻の繊維を裂いてつなぎ1本の糸をつくる、根気のいる作業です。近江上布の絣模様には、「経糸絣(たていとがすり)」、「緯糸絣(よこいとがすり)」、「経緯併用絣」があります。緯糸絣では型紙で糸を染める「型紙捺染(かたがみなっせん)」、緯併用絣では、文字の通り櫛の背に似ている弧形部分に染料を染み込ませ、糸に押し付けて染色する「櫛押捺染(くしおしなっせん)」という技法が用いられます。
経糸と緯糸の絣をていねいに合わせながら織られる近江上布は、麻織物の最高級品として知られ、一財を築いた商家の雛人形には、衣装として身に着けている姿を見ることができます。

History / 歴史

琵琶湖の東側、湖東地域では琵琶湖から発生する霧や愛知川、能登川が流れる湿度の高い盆地という麻栽培に適した環境により、古くから大麻の栽培が盛んでした。
京都から移り住んだ職人が伝えた技法により、鎌倉時代から麻織物が作られてきました。やがて、織られた麻織物は近江商人により全国に広く知られるようになります。江戸時代には、琵琶湖東岸を支配していた彦根藩の庇護のもと、麻織物はさらに発展し、安定した地場産業として栄えていきました。
一方で、近江商人が持ち帰った東北地方の苧麻などが近江上布の発展に大きな影響を与えます。この頃から、染めの技術も進歩します。1700年代後半(天明年間)には「板締(いたじめ)」や「櫛押捺染(くしおしなつせん)」などの技法が開発されました。
やがて明治末期になると、紡績苧麻糸(ラミー糸)が導入され、昭和初期には「型紙捺染」などの技法も生み出されました。一方、大正時代まで使われていた「板締」は姿を消してしまいます。現在近江上布は、700年続く伝統的な織物として受け継がれています。

General Production Process / 制作工程

  1. 1.設計 はじめに、布のデザインを決めます。型紙を使って揃えた糸を染める「型紙捺染」では、色別に型紙を作るため、使用する色の数だけ型紙を用意します。また、型紙と型紙の間に継ぎ目がでないよう、柄の配置を考えてデザインする必要があります。「櫛押捺染」では、経糸、緯糸ともに絣糸にするための設計を行い、模様に合わせて経糸、緯糸それぞれの染める位置、幅を決め、厚紙に印をつけた羽定規を作っておきます。精密さが必要とされる作業です。
  2. 2.染色 「型紙捺染」では、染色の前に羽根巻きという作業を行います。羽根巻きでは緯糸を金枠に巻き付け、そこに型紙を置き、染料を駒ベラで糸の上に置いていきます。型紙の継ぎ目がでないように染め上げた後、蒸し器で糸を約10分蒸して色を定着させ、水洗いをしてそのまま乾燥させます。通常用いられるのは、絣の柄として緯糸だけを染める横絣です。染色方法には他に、「括り染め(くくりぞめ)」や「櫛押捺染」などがあります。
    「櫛押捺染」は、経糸、緯糸ともに絣糸で織る併用絣に用いられる技法です。模様に合わせて作った定規に基づき、糸束ごとに竿枠に掛けられた糸に墨印を付け、櫛の形をした道具を使って染めていきます。櫛は真鍮(しんちゅう)製やヒノキ材までさまざまなものがあり、カーブした櫛の背を使って、並んだ糸にムラなく染料を染み込ませることができます。柄により染める位置や幅は異なりますが、細い櫛や太い櫛を使い分け、スタンプを押す要領で糸に染料を染み込ませてさまざまな絣糸を作ります。これにより、近江上布独特の色鮮やかな絣模様が生み出されます。この方法は糸を括らないため糸の負担が少なく、くっきりとした染め上がりが特徴です。麻糸は色がにじみやすいため、染料に混ぜる糊(のり)の種類なども工夫します。
  3. 3.絣わけ 染色後、羽巻きで巻いてあった緯糸は1本ずつ分け、柄を合わせて巻き直し、綛(かせ)にします。綛にした糸を糸枠に巻き直してから、さらに小管(こくだ)に巻きます。これで緯糸の織の準備が整います。経糸は地糸、絣糸ごとに分けて整経台に乗せ、まずおおまかに柄を合わせておきます。さらに割り込み台で細かく柄を合わせ、筬(おさ)に通す準備をします。
  4. 4.整経 布を織るのに必要な数、長さに経糸を調整していきます。まず、筬通し(おさどおし)を使用して経糸を筬に通し、織幅になるように広げます。次に、経糸を綜絖(そうこう)の目に通します。これにより、織る際に緯糸を通す杼(ひ)道が作られます。
  5. 5.手織 準備が整ったら織っていきます。近江上布の織には高機を使用します。麻糸は絹糸に比べると非常に切れやすいため、織る際には細心の注意を払って織り進めます。絣模様がずれないようていねいに織るため、時間もかかり根気のいる作業です。縮みにする場合は、織り上がった布を手で揉む「シボ付け」というちぢみ加工を行って仕上げ、ふっくらとしてさらりとした肌触りの近江上布が完成します。

Leading Ateliers / 代表的な製造元

川口織物 有限会社 カワグチオリモノ ユウゲンガイシャ

Where to Buy & More Information / 関連施設情報

近江上布伝統産業会館

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